誰にもおススメ配偶者居住権の5つのメリット
相続法が改正されましたね。
相続時に配偶者居住権が認められるようになりました。
たくさんのメリットがあります。
けれど、事前の準備がなければ使えない場合もあります。
メリットと事前準備の方法をここで学びましょう。
メリットは、以下の5点です。
他にもメリットをご存知の方は、コメント欄でこっそり教えてください。
自宅以外の財産が少なくても、自宅を売却せずに相続できる。
配偶者が居住しながら、十分な生活費を相続することができる。
子どもたちにとって相続税の節税になる。
家族の争いを避ける効果がある。
遺留分があっても多くの財産を配偶者に残すことができる。
1 配偶者居住権とは
1) 配偶者居住権とは
配偶者居住権とは、亡くなった人の配偶者に、亡くなった方名義の不動産について、その居住する権利が認められるものです。
2) 配偶者
配偶者に認められます。
夫が亡くなったときに、妻に。妻が亡くなったときに、夫に認められます。
内縁関係では認められません。
3) 亡くなった人名義の不動産
夫名義の不動産に認められます。
夫婦共有でも認められます。
夫婦以外の人との共有であれば、認められません。
※夫が亡くなった場合を想定しています。
4) 居住する権利
居住する権利が認められます。
不動産を売却することはできません。
貸して賃料収入を得ることはできます。
居住権とはいいつつも、居住するだけの権利ではなく貸せるんですね。
2 メリット① 自宅を売却しなくて済む
1) 配偶者居住権がない場合
相続時に、自宅を売却しないといけない場合もありました。
たとえば、相続人が、妻と子どもの2人で、遺産が自宅(評価額2000万円)だけだった場合。
相続分は、妻も子どもも2分の1。
それぞれの相続分の評価額は、1000万円。
妻が、2000万円の自宅を取得するためには、子どもに対して、1000万円の代償金を支払わなければいけません。
妻が1000万円を準備できなければ、自宅を売らないといけませんでした。
1000万円払えたとしても、将来の生活費や介護の費用のことを考えると1000万円も現金が減ってしまうのは痛いですね。
2) 配偶者居住権がある場合
配偶者居住権は、所有権ではありません。
売却する権利がありません。
配偶者居住権の評価額は、売却する権利がない分だけ、所有権よりも安くなります。
仮に、配偶者居住権が、1000万円であったとします。
妻が自宅の配偶者居住権を取得し、子どもが自宅の所有権を取得することになります。
子どもが取得する所有権は、配偶者居住権の負担のついた所有権になります。
子どもは、自宅を取得しても、自宅を利用することができません。
子どもが取得した自宅の所有権の評価額は、2000万円から、配偶者居住権の評価額である1000万円を引いた、1000万円になります。
つまり、妻は、自宅に住み続けられるにもかかわらず、1000万円の代償金を支払う必要がありません。
1000万円を準備できなくても、自宅を売ることなく住み続けられます。
3 メリット② 配偶者が十分な生活費を相続できる
1) 配偶者居住権がない場合
夫の生前、夫婦の生活を夫の預貯金でまかなっているような夫婦を想像してください。
そして、相続人が、妻と子どもの2人で、遺産が自宅(評価額2000万円)と2000万円の預貯金だけだとします。
相続分は、妻も子どもも2分の1。
それぞれの相続分の評価額は、2000万円。
妻が、2000万円の自宅を取得すると、預貯金2000万円は子どもが相続します。
妻は、自宅に住み続けることはできるものの、預貯金をまったく相続できませんでしたので、生活が成り立たなくなってしまいます。
生活費のためには、自宅を相続することを諦めないといけないかもですね。
2) 配偶者居住権がある場合
配偶者居住権は、所有権ではありません。
売却する権利がありません。
配偶者居住権の評価額は、売却する権利がない分だけ、所有権よりも安くなります。
仮に、配偶者居住権が、1000万円であったとします。
妻が自宅の配偶者居住権を取得し、子どもが自宅の所有権を取得することになります。
子どもが取得する所有権は、配偶者居住権の負担のついた所有権になります。
子どもは、自宅を取得しても、自宅を利用することができません。
子どもが取得した自宅の所有権の評価額は、2000万円から、配偶者居住権の評価額である1000万円を引いた、1000万円になります。
つまり、妻は、自宅に住み続けられるにもかかわらず、さらに預貯金を1000万円相続することができます。
自宅を無償で使用できて1000万円の預貯金があれば、当面生活に困ることはなさそうですよね。
4 メリット③ 子どもたちにとっての節税対策
1) 配偶者居住権がない場合
自宅についてのみ取り上げてざっくりとした相続税の話をします。
自宅(評価額2000万円)を妻が相続した後、妻が亡くなったとします。
子どもが自宅を相続しますので、遺産総額が相続税の基礎控除額を超えていれば、自宅を含めた遺産総額に対応する相続税を支払わなければいけません。
2) 配偶者居住権がある場合
配偶者居住権は、配偶者が亡くなると消滅します。
配偶者居住権の負担のついた不動産を相続していた子どもは、配偶者が亡くなることで、負担のない所有権を取得します。
元々負担付きの自宅の経済的価値が1000万円(2000万円−1000万円)だったものが、負担がなくなることで、2000万円の価値になります。
実質的に1000万円の価値を手に入れることになりますが、これは相続によって手に入れたものではありません。
配偶者居住権が消滅したことによって得た価値です。
そのため、この1000万円に相続税はかかってきません。
もちろん、贈与税もかからなければ、なんらの税金もかからないはずです。間違ってたらコメントでご指摘ください。
つまり、配偶者が自宅の所有権を取得した場合と比較して、配偶者が亡くなった場合の相続税が、配偶者居住権の価値の分だけ現額できるということです。
5 メリット④ 争いを避ける効果
1) 配偶者居住権がない場合
夫の生前、夫婦の生活を夫の預貯金でまかなっているような夫婦を想像してください。
そして、相続人が、妻と子どもの2人で、遺産が自宅(評価額2000万円)と2000万円の預貯金だけだとします。
あなたが夫であれば、どのような遺言を書きますか?
妻には、自宅と生活費として1000万円は残してあげたいと思うかもしれません。
そうすると、妻に相続させる財産は、自宅2000万円と預貯金1000万円の合計3000万円になります。子どもには預貯金1000万円だけ。
これではもしかしたら子どもは不満を抱えるかもしれませんね。
妻に十分な財産を残すことができたかもしれませんが、法定相続分よりもずっと多くの財産を妻に相続させることで、不公平感が残るとかもしれません。
母子の関係がこれでギクシャクしてしまえば、望ましいとはいえません。
老後の妻を何かと助けてくれるのは子どもかもしれませんしね。
2) 配偶者居住権がある場合
妻が自宅に住み続けるのに、自宅の所有権は必要ありません。配偶者居住権さえあれば、死ぬまで住み続けられます。
そのため、夫が遺言で妻に自宅に住み続ける権利と生活費として1000万円を残したいのであれば、配偶者居住権と1000万円を相続させればいいのです。
そうであれば、妻が相続した分は、配偶者居住権1000万円と預貯金1000万円の合計2000万円ですので、法定相続分に収まります。
子どもは、いつでも配偶者居住権の負担のついた所有権を売却して現金化することもできますので不満はないでしょう。
遺言を作成するときには、このように不満がでないようにすることも大切ですね。
6 メリット⑤ 遺留分対策
1) 配偶者居住権がない場合
子どもはしっかり独立して財産を残してあげる必要はありません。一方、妻はもう働けないし十分な財産を残してあげたい。
しかし、全財産を相続させても大丈夫でしょうか。
子どもには遺留分があります。妻と子どもが相続人のときには、遺留分は法定相続分のはんぶんになります。
子どもの相続分は2分の1ですので、遺留分は、4分の1です。
遺産が自宅2000万円と預貯金2000万円の場合、全財産を妻に相続させると、子どもが遺留分侵害請求をすれば、妻は子どもに1000万円を支払わなければいけません。
ムダに争いを生じさせてしまうことになりますし、1000万円の支払いの負担は重いかもしれません。
2) 配偶者居住権がある場合
妻が自宅に住み続けるのに自宅の所有権は必要ありません。
死ぬまで住み続け、売却することを考えていないのであれば、妻には配偶者居住権1000万円と預貯金2000万円を相続させましょう。
子どもには、配偶者居住権付きの自宅の所有権を相続させたらいいのです。
その評価額は1000万円ですので、子どもの遺留分を侵害せずにすみます。
遺留分に関する争いを避けることができますし、妻にも必要な財産を相続させることができます。
7 配偶者居住権を使うための準備
こんなにメリットばかりの配偶者居住権、どうしたら使えるの?使い方、知りたいですよね。
配偶者居住権は、相続人全員で合意して、遺産分割協議書で定めることができます。もちろん、調停で定めることもできます。合意がない審判でも定めることができることにはなっています。
それよりも強力なのが、遺贈です。遺贈とは、遺言者を使った贈与です。これなら、亡くなる方一人で、確実に、配偶者居住権を設定できますね。特に、⑤で説明した遺留分のように反対する相続人がいるような内容を定めるなら遺贈がベストです。
遺贈は生きている間にしかできないので、事前に準備しておきましょうね。
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