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面積が狭いパン屋は美味い【5月】

5月に読んだ本たち。

本が読めなくなっている。つらい。
1年半くらい前、月180冊とかを深く読めていた自分のメカニズムが最早わからない。

少なくとも言えることは、読書は筋トレと一緒で、読めば読むほど読めるようになるものであって、読まなければ読まないほど読めなくなる。量も質も。
ペースを落とせば、筋力は落ちる。

読めないなりに、もがきながら読んだ中から厳選してご紹介。

|「ウェルス・マネージャー 富裕層の金庫番」


弁護士と、税務顧問と、会計士と、投資アドバイザーとをひとまとめにしたような役割を担う「ウェルス・マネージャー」という職業があることをそもそも知らなかった。お金のあるところには新しい仕事が生み出される。
大金持ちは、ちょうどスーツを仕立てるみたいに、極上のオーダーメイドのサービスに金を出すことをいとわない。また、彼らは変化を好まない。生涯にわたり同じ医者に診てもらい、同じ歯医者に治療してもらい、同じ弁護士や受託者に依頼する。

営業・案件獲得方法から遠回しなスレスレ節税法まで紹介されている。富裕層を相手に商売を考えているなら、読んで損はない。

|「AV女優の社会学」


以前の読書メモにこんなのがあった。

AV女優はなにに対して報酬をもらっているのか?
肉体的にも労働的にもハードな労働なのに「労働そのもの」ではなく「身体」にお金を払われている 
性の値段だと思われている? 
風俗じゃないから接客業じゃない
「女優」と呼ばれるように、演技をすることを求められる一方で、演技をしないことも求められる
キャラクターを作ることと自然体でいるための両立
「演技ではない生の声が聞きたい」という願望はアイドル以上に求められる

このメモがずっと頭の片隅に残っていて、この不思議な職業についてもっと知りたいと思っていたところにこの本を見つけた。東大大学院卒で元AV女優の筆者が、社会学としてAV女優を研究していて面白い。

女性にとって、性の商品化がどんな経験になりうるのか。その後の人生にどんな影響を与えるのか。



|「街とその不確かな壁」

村上春樹新作。私のような春樹を軽く一周なぞっただけのような人間に発言権はないと思うので、とりあえず読んでみてねとしか言えない。面白かった


|「小説家の休暇」


三島由紀夫の中ではとってもライトに読める。
私もちょっとした日記は書いてるけど、この人の日記は半端じゃない。日常生活に関する記述はメモ程度にとどめられ、ほとんど1日1項目のテーマの考察に当てられている。これだけの質のアウトプットが毎日できるなんて、相当な質のインプットを半端ない量行ってないと無理。すごすぎ。

改めて三島由紀夫ってマジもんのバケモンだなということをただ再認識させられた。凡人は憧れる資格もないかもだけど、いつかこういう日記を創造できるようになりたい。

夏という観念は、二つの相反した観念に私をみちびく。一つは生であり活力であり、健康そのものであり、一つは頽廃であり、腐敗であり、死である。そしてこの二つのものは奇妙な具合に結びつき、腐敗はきらびやかな心象を伴い、活力は血みどろの傷の印象を惹き起す。戦後の一時期は正にそうであった。だから私には、1945年から47、8年にかけて、いつも夏が続いていたような錯覚がある。

「小説家の休暇」

|「五月 その他の短編」


よくもこんなわけのわからない本を日本語訳しようと思ったな、というのが最初の感想。言葉遊びの巧みさ、複雑な時系列、物語の中を彷徨う感覚。一貫して美しい文章。五月に読みたくなる短編集。



来月はもう少し色々読み込みたいけど、そういえばテストも近いのでまた読めない日々が続くかもしれない。つらい。

根拠はないが、面積の狭いパン屋は美味い確率が高いらしい。

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