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児童文学は誰が為に☃️ 【12月】


みなさまどうもごきげんよう。
さて、12月も終わりまして、2022年になりました。
お正月はいかがお過ごしでしたか?

わたしは完全なる寝正月でございました。

毎年行っているスキーも今年は行けていません。(寒すぎて)

そして4学期が始まり、高校生活もいよいよ最後の最後です。今どれだけ積み上げられるかが勝負…だと思っています。卒業したら本当に時間がなくなってしまうので、本もあまり読めなくなるかも。

悔いのないように1日1日、1秒1秒を生きていきたいです。


さて、今月読んだ本はと言うと少ないのですけれども、ご紹介してみましょうか。


くまとやまねこ  湯本香樹実

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早速絵本かい、と思われるかもしれませんが、大人になって読む絵本は子供時代に読むのとは全然違います。大人こそ、絵本を読むべきです。この絵本は、先日行われたゼロ高公開授業、第二回死生学ワークシップでもご紹介し、実際に読み聞かせを行いました。
主人公のくまは、仲良しのことりを亡くしてしまいます。
「ああ、昨日はきみが死んでしまうなんて思いもしなかった。もし昨日の朝に戻れるなら、ぼくは何もいらないよ」
塞ぎ込むくまに、森の動物たちは言います。
「くまくん、ことりはもうかえってこないんだ。つらいだろうけど、わすれなくちゃ。」
くまくんはますます塞ぎ込み、自分の家のとびらに中からかぎをかけてしまいました。
そこに現れたやまねこの温かい声がけとは一体何だったのでしょうか。

大切な人を失った方に対する声がけはとても難しく、善意のつもりでも相手を傷つけてしまっていることがあるかもしれません。わたしは、やまねこのような声がけができる人になりたいと強く思いました。


異常の構造  木村敏

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木村さんはもちろん精神医学の権威であり、素晴らしい数々の著作を残された本当にすごい方ですが、木村さんの一番素敵なところはその人間性、優しさであると、彼の本を読むたびに常々思います。
統合失調症の患者さんに対しても思いやりがあり、ずっと謙虚で、偉ぶるようなところがない。
精神科は特に「与える側」と「受ける側」の線引きがはっきりしているところがあるかと思います。でも本当は、みんな同じ人間。どっちが偉いわけでもない。
自分の本当にやりたい臨床の理想像が一歩完成に近づきました。まだまだ道のりは長いですね。あと50年はかかるかも。


こころの熟成 ー老いの精神分析   ブノワ・ヴェルドン

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死とは老いの帰結ではない。一方で、死とは
「私たちが生き続けるために、もはや老いゆくことが不可能であるときに到来する」
生きることは老いることであって、ひとは熟成されていく。
この世は老いを嫌悪する傾向にありますが、個人的には老いることが楽しみになった本です。


いのちとライフコースの社会学  藤村正之

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生を〈生命〉〈生活〉〈生涯〉の三つに分解して生と死を読み解いていくのが面白かったです。
例えば、災害の難を逃れて〈生命〉を保ち、〈生活〉の再建が達成されていく過程で、時間の経過とともに次第に〈生涯〉に関わる事象が浮上する、と。
説明が明瞭でスイスイ頭に入ってきますので、先生の他の本もぜひ読んでみたいです。
こうして読みたい本リストが溜まっていく…時間が足りないですね…


もうすぐやってくる尊王攘夷思想のために  加藤典洋

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加藤先生の本はまだ読んだことがありませんでしたが、思考の深度がマリアナ海溝でなおかつ日本語が上手い。凡人に理解できてかつ説明の質を下げないギリギリのところをついてきて下さるので、1発でファンになりました。

しかし、この人はすごい!と思って著者を調べるとほとんどが東大のご出身なんですよね。加藤先生も東大ですが、改めて東大って本当にすごいところですね…もし3年前にタイムリープできるなら、猛勉強して東大目指したい…


知財の正義  ロバート・P・マージェス

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個人資産としての知的財産を「権利」として捉え、どのように社会の中にシステムとして位置づけるか。これはずっと前から考えていたことではあるんだけど、創作的労働の財産化っていうのはどのジャンルのクリエイターにも必要なことですよね。やりたいことがそのまま仕事になってそれでお金が生まれる。よりクリエイティブなものが世の中に増える。
でも、今日の知的財産法は、開発途上国の巨大都市のように無秩序で不規則に拡大していて、創作的労働者が安値で書い叩かれたりしている現実もある。生活がそれだけで成り立たないから、仕方なくお金のための仕事をして、それで創作時間がなくなる。この負のスパイラルから抜け出して、創作に集中できる環境づくりができたら何よりいいですよね。


絶望死のアメリカ 資本主義が目指すべきもの  

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かつての「高級ブルーカラー全盛期」では、高卒でも結婚し、家を買い、子供が持てる。そんな時代でしたが、今はなかなかそれが難しくなってきています。

痛みというものは、程度によるものの「人間にとって、死そのものよりさらに残酷」と言っても過言ではありません。いつ終わるのかわからない、将来への不安もさながらたった今この瞬間が痛くてつらい。痛みによる絶望死もある話です。そして、アメリカで痛みを訴える人が最も多い世代は、「大学を出ていない中年世代」だそうです。大学を出ておらずブルーカラーの仕事につき、医療にお金をかけたりすることが出来ず、「安くて不健康」な食事を摂り続ける。肥満になり、足腰を痛め、結果働けなくなる。健康は万人に必要な権利ですが、今や健康はお金持ちのものになってきています。


さて、資本主義はこれからどこへ向かうのでしょうか。



ライフサイクルの哲学    西平直

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サイクルとは。
①ひとつのまとまった傾向として〈それ自身完結しようとする〉
②その個人が、強さも弱さも、そこから受け取りまたそれに与えるところの世代連鎖の一環。

ライフサイクルとは。
①死によって完了する個人の一生。一回きり、死において完結する。繰り返されることのない個人の円環サイクル
②前の世代から受け継ぎ次の世代へと渡していく世代の連鎖。この連鎖は決して一人では誕生しない。「いのちの連鎖」

魂のライフサイクルとセットで読むとより理解が深まりますね。西平先生が頭の中で思い描いている「円」が極限まで言語化されていて秀逸だと思います。



身ぶりと言葉  アンドレ・ルロワ=グーラン

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知的好奇心を全力で揺さぶってきた…!文庫のくせに2200円もするしめっちゃ分厚いしタイトルも普通だしホントに面白いのかな〜?って思って何となく読んだら、歴史や人類学をやる人間には必読の本だったらしく驚き。
つまり「人間は、その思考を実現できるように作られている」ということなんだけど、こんなに壮大に鮮やかに論じられるとただただ脱帽。序文から訳者が「このタイトルは流石に控えめすぎる」って言ってるんだけど、読み進めながら「マジそれなー」ってずっと心の中で思ってました。


モモ  ミヒャエルエンデ

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母が大好きなお話です。何度か読んだことはありますが、再読。
年を重ねて読むたびに見え方が変わってくるのが本当に素敵な作品だなと思います。

大人になるとつい色々なことを忘れてしまうけれど、
表紙の扉を開けばすぐに大切なものを思い出させてくれる、わたしを育ててくれた児童文学たちはこれからもずっと宝物です。

では、今月読んだ全てを置いておきます。



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さて。児童文学は誰が読むのにふさわしいものなのでしょうか。


毎日の責務の中に埋もれている、働き者の会社員こそ、少年少女小説を通勤電車の中で読むのにふさわしい人なのかもしれません。

もし、電車の中で児童文学を真剣な眼差しで読んでいる素敵な大人がいたら、うっかり好きになっちゃうかも、わたし。


では今日はこの辺りで。来月も楽しくやっていきますー!

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