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トビタテ"事務"話

高専生がトビタテ大学生コースに合格するまでの話』の記事では、2度にわたるトビタテへの挑戦中に考えていたことを主にまとめたので、今回は具体的な手続き等も含めて詳しく紹介できれば良いなと思います。

まだ読んでない方は、先に下の記事を読んでもらうとよりわかりやすいと思います。



高校8期不採択のときのこと

・応募書類の振り返り

書類全体を通してとなるものがなかった。これに尽きると思います。逆に言えばこの芯の部分が明確だと、ストーリーがわかりやすく自分で書いていても様々なアイディアが繋がっていくのだと思います。現在の自分から将来の目標に対して、留学がなぜ必要となるのかをアピールすることが大切だなと思います。

高校生コースでは探求という言葉が使われていますが、留学計画を探求を軸にどのように展開していくかが、僕には足りなかったと思います。実践活動の具体性や全体的な主張を、興味を引ける面白みを感じられるものにはできなかったと思います。

・受け入れ先

1年間の留学で、二つのフォルケホイスコーレ(以下フォルケ)に半期づつで通う計画を立てていました。

一つ目に行こうと考えていたのがDSDHというフォルケの建築デザインコースです。ここはプロジェクトベースの授業スタイルで、実践活動の場と兼ねて選びました。

応募書類提出の時点でフォルケのホームページから2023秋セミスターに応募しました。1週間程度でメールが返ってきてデポジットの支払いを済ませて予約を確定させました。2000dkぐらいだっと思います。

二つ目のフォルケがBraa Hojskoleです。ここでは、デンマークの文化を学びながら建築に限らず広い分野でデザインに触れようと考えていました。比較的スムーズに手続きが進みました。

しかし大きな落とし穴がありました。Braa Hojskoleは授業料が前払い制だったのです。書類の提出前ですから当然トビタテの合否は分かりません。トビタテに落ちたら留学は諦めるしかなかったのですが、あまり深く考えず母親に授業料を立て替えて払ってもらいました。

結果的にいうと不採択が分かった後にメールを送って返金してもらいましたが、差額で10万円くらいは損してしまいました。受け入れ先は、トビタテの申請時には確定している必要はないので(している方がもちろん良いのですが…)受け入れ先の授業料等の条件はよく検討する方が良いと思います。

この時は、数件の応募を別のフォルケに送っていましたがスムーズに予約に漕ぎ着けられたのは上の2校だけでした。最近はフォルケも人気になってきているのでさらに難しくなっているかもしれません。半年前でも席が埋まってしまっているところが多いのではないかと思います。

大学16期採択のときのこと

・応募書類の振り返り

今回は、日本の住宅寿命の短さというテーマで留学の応募書類を書きました。日本の住宅寿命が短いのは、単なる技術的な問題ではなく新築志向という価値観の問題が大きのではないかという仮説のもとデンマークでの留学を計画しました。

説明するより僕の書いたものを見てもらった方が良いと思うので、留学計画1000字を共有します。


高専で建築を学び始めて3年が経つが、日本の住宅寿命の短さに疑問を感じる。新築が好まれ、築20年が経った家は価値がないと判断されることが多い。建築の学術論文では、日本の木造住宅は平均で64年もつという報告がされているにも関わらず、この日本人の一般的な価値観は、技術の進歩による住宅寿命の長期化の障壁となっていると考える。

このような背景から、私は留学を通して”住宅は30年もてば良い”という固定概念を覆し、持続的に需要が見出せる住宅デザインを学びたい。住宅寿命の長期化を達成させる持続的なデザインとは、住む人や環境、社会、時代が変化しても持続的に需要を満たすことだと考える。

暗くて長い冬が特徴のデンマークでは、家の中で過ごす時間が長いことからシンプルで飽きのこないデザインが育まれ、加えて現在では持続可能性が重要視されている。そのデザインメソッドと世界でも評価の高い日本の木造建築の技術力が掛け合わされることで、時代を超えて愛される住宅建築を設計できると考える。

具体的には3つのステップに分けて研究を進める。
①デザイン学校での学び
②設計事務所でのインターン生として実践活動
③実測レポートの作成

最初の半年間は、世界で愛されているデンマークのデザインの基礎を、現地のデザイン学校での課題制作を通して学ぶ。住宅デザインに関わらず、デンマークのデザイン全般を理解するために必要な知識を吸収できると考える。

後半の半年間は、現地の建築事務所にインターン生として加わり、住宅建築を設計するプロセスを学び取る。特に、住宅を設計するときの長期的なビジョンに注目したい。洗練されたデザインを実際の住宅建築に落とし込んでいく過程に携わることができると考えている。

1年の留学期間を通して、月に1軒以上は現場を訪問し住宅の実測データを集める。長寿命を実現している住宅事例を自分の手で調査し、実測図面を描いていくことが、デザインメソッドを実際に自分の建築に反映させていく時に生きてくると考えている。

この留学は、日本人の住宅寿命に対する一般的な価値観に挑戦し、持続的な住宅建築の実現に繋がるデザインを研究することを目的とする。その成果は、日本の住宅建築の技術現場に新たな知見を与えるものになると確信しており、この留学計画の実現に大きな意義を感じている。


・フォルケの受け入れ先

高校8期の時の反省を活かして、フォルケ側との金銭的なやりとりを含む手続きは書類審査通過後に始めることにしていました。

しかし、書類審査の結果がわかった4月上旬にはすでに希望していたフォルケは席が埋まっていて変更申請が明らかに必要な状態でした。結果的には、第二希望で申請していたフォルケホイスコーレの2025春セミスターで入学することになりました。

Krabbesholm Hojskoleというフォルケなのですが、授業のレベルについていけるかを確認するために作品の提出を求められました。僕は英語でPortfolioをまとめて提出してOKをもらいました。その後は、僕が日本人ということで英語の面接が行われました。30分程度話してやっと入学を許可してもらうことができました。たぶんほとんどのフォルケではこんなことはしなくても良いと思うのですが、入学が認められた時は嬉しかったです。

・インターンの受け入れ先

インターンの受け入れ先を探すのが一番大変でした。大規模な設計事務所のインターンプログラムに申し込んでいましたが、相手にされずとても受け入れてもらえるような感じはありませんでした。

とりあえずgoogleMapで事務所を探してPortfolioを添付したメールを片っぱしから送りました。50件の内、数件の返信がありましたがポジティブな回答は一件も貰えませんでした。Instagramやトビタテの先輩方にも協力してもらいましたが、なかなか難しかったです。

結果的には、奇跡的に日本で直接会うことのできたデンマーク人建築家の事務所に入ることが決まりました。

この詳しい話は他の記事にまとめます。

・諸々の変更

インターンとフォルケの順序が入れ替わり、それに伴って留学の開始も2ヶ月ほど遅れてしまったので変更申請が必要になりました。トビタテの壮行会や研修会でもまだ受け入れ先が決まっておらず、変更申請が必要になる人が周りにもたくさんいました。自分もその一人でしたが、お互いに情報共有できる場があってよかったなと思います。

・面接

面接には10枚程度にまとめたプレゼンシートを印刷して持って行きました。あまり深く準備はせずに、とにかく楽しもうという気持ちで行って正解だったと思います。ただ、自分の考えを伝えきれずに終わるのは勿体無いと思ったので何回も口に出してみて違和感なく説明できるような練習はしていました。

当日はあっという間に時間が過ぎてしまったような印象ですが、トビタテ生や面接官と話している中で準備していた以上に自分を表現できたと思います。

まとめ

留学の計画を学生が自らが考えるというトビタテの仕組みはとてもユニークで素晴らしいものだと思います。たくさんの苦労がありますが、色んな人にサポートしてもらいながら自由度の高い留学を達成できるチャンスがあります。

トビタテに受かることが目標になってはいけませんが、トビタテに応募するだけでも相当の経験になるなあと思います。特に僕の場合は、高校8期で不採択の経験から学んだことも大きかったなと、今回振り返りながら感じました。その経験があって、今の留学があると思います。

長くなってしまったのでこの辺で終わりますが、僕が色々な人の助けがあって今の留学が実現できているので、僕もこの記事が誰かの役に立てれば嬉しいです。他にも聞きたいことがある人は、facebookから気軽に連絡ください!



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