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たらればの世界の生き方 (テッドチャン『息吹』:「不安は自由のめまい」)
こんにちは。常見多聞です。
テッドチャンの短編小説で「不安は自由のめまい」というタイトルのものがあります。
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(小説内には書かれていませんが、
このタイトルは哲学者キルケゴールの言葉から来ていると思います)
この小説では、パラレルワールドが存在し
Aを選択した自分とBを選択した自分が別々の世界に存在しています。
例えば、
あの人と結婚をする、という選択をした自分と
あの人と結婚はしない、という選択をした自分が
別々のパラレルワールドに住んでいるわけです。
そしてなんと、
別のパラレルワールドに住んでいる自分と連絡を取れる機械が登場します。
これによって何が起きるかというと
あの時の自分の選択は正しかったのか?
と確かめたくなるわけです。
さっきの例で言うならば、
ある人と結婚しなかった自分が、
結婚した別の世界の自分に聞くわけです
あなた幸せですか?と
それで返ってきた答えが、
夫が大成功してお金持ちになって、
豊かな生活をしている、と聞かされて、
結婚しなかった方の人は落ち込むわけです。
たらればの話というのは、
他の選択肢を選んだ場合にどうなっていたのかが
わからないからどうしようもないよね
と言っているわけですが
この小説では、たらればを確認できてしまうので
人々の色々な欲望が湧き起こってきます。
もしこのような機械が本当にあったとしたら
(これこそたらればの話してですが)
どうしますか?
違う選択肢を選んだ世界にいる自分と対話する
ということは、自分の選択肢の結果を比較できる
という事になります。
比較して、この選択は正しかった、間違っていた
と判断することが起きるわけですが
まさに分占に似ているわけです。
ただ違うのは
分占はあくまで事前の予測の比較に過ぎません
この機械は事実を後から比較します。
この小説を読んでいて思うのですが
例えパラレルワールドの別の自分が、
この自分よりも豊かな生活を送っていても
全く嫉妬しない自分になる必要がある、
ということの大切さです。
つまり仮にこの結婚の選択をする前に分占をして
結婚をすると金持ちになれると出たとしても
その占いの結果が完全に当たるという保証はないわけですから
いくらそのような良さそうな情報を得ても
結婚するしないという決断には関係がなくて
別のところから判断出来るようになればよい
ということです。
何を基準に価値判断や比較をするのか?
損得勘定で判断すると、金持ちになると出ても
それが当たるかどうかは保証がないから
ブレるわけです。
損得勘定を超えて判断する人は
結婚した結果金持ちになろうがなるまいが
それは関係がないので、変わらず幸せなわけで
分占は別の意味を持つツールに変わります。
SF小説に話を戻すと、
この人間の弱みにつけこんで、
この特殊な機械を持っている人が
色々な金儲けをします。
まるで一部の占い師や一部の宗教のようです。
将来が不確定でどうなるか不安という
ぼんやりとしたものに、どう向き合うのか?
占いではあくまで予測に過ぎない
この機械も後追いの確認に過ぎない
ではどうするか?
について、自分が確信的な答えを持ってから
占うことが大切だと思うわけです。
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