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各務原市議会議員選挙における戦略的広報:「#小川あさみ・水野ひろゆき両候補」を「#小川あさみ・水野ひろゆき両議員」に
はじめに
2025年2月23日、各務原市議会議員選挙にて、小川あさみさん、水野ひろゆきさんの当選が決まりました。心よりお祝い申し上げます。PFASと新総合体育館建設に揺れる選挙が無事に終わった今、市民派チームみらい2陣営でボランティアとして選挙参謀を任せていただいていた立場として、まとめを残しておきたいと思います。
この記事が、今後の選挙で候補者を支える関係者の皆さまに、そして地方議会を目指す全ての方にとって、役に立つものとなることを心から願っています。
「選挙参謀」という役割の持つ底力、公選法を守って正しく活動し続けることの大変さや重要性について、少しでもご理解が深まるきっかけになれば幸いです。
スタート
今回の市議選では、新たな広報戦略の策定、中でも、SNSなどのデジタルツールの戦略的な活用が必須でした。
東京都知事選、衆議院議員選挙、兵庫県知事選、名古屋市長選と空前の「選挙ブーム」を迎え、選挙の戦い方が大きく変わった2024年後半を経て、2025年2月の各務原市議選、4月の各務原市長選を控え、各務原市民が政治に対し、どのように興味関心をもたらすかを考えなければならなかったからです。
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1.対談動画撮影
まず、小川あさみさん、水野ひろゆきさん、杉山元則各務原市議、井上慎也愛知県議、堀口達也彦根市議、そして私の六者対談からスタート。時期的なものも考慮して立候補予定者本人のSNSを劇的に飛躍させることは困難と判断し、他力本願にシフトしました。
堀口達也彦根市議のYouTube「ほりぐっちTV」はチャンネル登録者数7,250人(2/26現在)。六者対談の模様を選挙初日の夜、そのままYouTubeにアップロードしていただきました。
対談の模様はこちらから観ることができます。
2.コピー・ショート動画戦術の一新
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次に、coefont、grokなどのAIを活用した動画作成に移りました。
「小川」姓の候補は1名ですが、「水野」姓の候補が4名いるため、「ひろゆき」を定着させることが必要不可欠でした。
コピーは、政策の中身を変えずに、昨年後半に聴き馴染みのあるフレーズへ。
「手取りを増やす」「一極集中から多極分散」「減税」といったワードを散りばめ、おしゃべりひろゆきメーカーの声を用いることでひろゆきの定着を狙いました。
文字のカラーは、各ワードで見慣れた政党や政治家の色を使用しました。政策本意で判断される多方向の方の投票本能を刺激することができるよう演出しています。
grokでは、主に人物シルエットの作成をし、実在人物によく似たシルエットを採用しました。人物が実在しないので肖像権は存在しない一方で、政策が既に影響力のある方々と同じ方向性を持っていることを潜在的に伝えられるよう表しています。また、無所属候補が多く出る地方議会選挙特有の事情の受け皿になりうる存在であることも表しています。
最終日のスパートを徹底するため「合同演説会」の設定も合わせて行いました。残念ながら場所の兼ね合いで当日実現しませんでしたが、小川あさみ候補と水野ひろゆき候補、応援弁士の合同演説会の企画と最終日の現地入りを打診させていただきました(当日に急遽水野ひろゆき候補+応援弁士の演説会に変更)。
3.選挙事務所立ち上げ
当時、応援したい気持ちはあるが選挙の手伝いをしたことがない方が大多数。
一方、水野ひろゆき選挙事務所は50年以上続く老舗の実家喫茶店であったため、行くから何かさせてほしいという声がチラホラ出始めておりました。
選挙初日のタイミングで、自身が選挙参謀であることを候補者の家族や親戚に周知徹底し、そこから常連のお客様に伝えていただくことで、腕章や街頭演説標旗をどんな時に身に付けなければならないかといった、ボランティア支援者の皆様が公選法違反をしないための対策から、選挙事務所前での車への手の振り方や選挙カーのスピードといったテクニカルな部分の実演に至るまでのミニ講座の開催を開始しました。
簡単なところでいえば、家族や親戚といった近しい人だからこその馴れ合いや妥協を徹底的に遮断し、甘えを生み出さず全身全霊で勝利を手にするため、選挙期間中徹底して「候補」と呼び続ける、なども空気づくりとして行っています。
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小川あさみ候補陣営について
小川候補は選挙慣れしたプロのウグイス嬢の方を雇われていたので(車上運動員)、現場監督のような形で安心してお任せでき、二重指示での混乱と公選法違反防止への対策として、水野ひろゆき候補陣営に費やす時間比率を当初計画より3割程度増やしました。1人で2陣営フルであればもっと厳しい消耗戦となっていたと思います。
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選挙参謀としての体調管理の担保
選挙戦7日間は寒波が襲い、氷点下の朝を迎えることもしばしばだったことで、水野ひろゆき陣営では朝の駅立ち日程を見直し、二重軍手の間にカイロを入れる、湯たんぽを活用するなど体力温存に繋がるような対策を施しました。
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期日前投票について
小川あさみさん、水野ひろゆきさんへの投票行動を起こしていく上で重要だったのが、投票率と期日前投票率です。
当時、各務原市では雪が散らつく、選挙戦最終日に至ってはしっかり降るという気象条件であり、候補者として期日前投票を呼び掛けることで、投票行動の流れに先導性を提供する必要があると考えました。また、全国的に見た時に投票率がおよそ4割、期日前投票率がその4割と、有権者全体の15%程度が期日前投票を活用するため、支援の輪の広がりも期待できます。
「投票をお願いします」ではなく、あえて「期日前投票」を入れることで、「投票=今日」という聴覚的な動機づけを狙いました。さらに、期日前投票所の場所を意識しない街頭演説や選挙カー走行を行ったことで、不自然な選挙運動にならないようにしたのもこだわったポイントです。
選挙という約12時間×7日間のPRステージでも、どのように候補者の体力を続かせるか、選挙カー=迷惑と思う方を最小限にできるか、政治不信と繋がらないかなど様々な視点を考慮して設計することが大切です。
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4.ポスター・チラシ・選挙公報・看板類・個人演説会
今回、両候補とも落下傘候補ではなかったため、各務原市内での政治活動は選挙前の常日頃より行い、理想を日夜追求していました。このことから選挙参謀の役割よりポスター・チラシ・選挙公報・看板類・応援演説を除くスケジュール設定を除外し、候補者が自由に悔いのない7日間を過ごせるようにしています(応援演説は相手があるため急な変更は迷惑となるので、選挙参謀側にて日程確保)。
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中でも最もエネルギーを要したのが、ゴールまでの道筋を維持させ続けることです。選挙戦はマラソンのように、同じペースで常に走ろうとすると段々しんどくなってきます。裏を返せば、同じペースで走り抜くためには日に日にエネルギーが必要となります。最終日、合同演説会を経て自分の足で地元を回ると事前に決め、選挙初日に告知していても、この方法のほうがより良い結果を生み出せるんじゃないか?と戦略を変えたくなります。
それは実は、もっと良い結果ではなくもっと楽な結果を求めているに過ぎないということに、当事者である候補者や慣れない周りの支援者は気付くことができません。自己中心的になったり周りに冷たく当たったり、人の本性が現れます。
落ち着いて考えていた時に決めた「自分のペース」を守らせるよう誘導すること、応援演説をはじめ相手や場所のスケジュールがあるものについては、候補者が不義理を働かないよう断固としてスケジュールを死守することが、好結果とその後の良い人間関係をもたらします。
・先に決まっているスケジュールを優先させる
・相手があることを自己都合でキャンセルしない
この2点を難しいと思う方は少ないと思いますが、「こんなこと」すら難しくなってしまうほど追い込まれるのが新人候補者であるので、選挙参謀(選対本部長、事務長などの呼称が用いられる場合も)が必要と自負しております。
私自身の選挙戦においても選対本部長がおり、今回も水野ひろゆき候補陣営に1日入っていただきました。
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5.SNS運用
兵庫県知事選や東京都知事選で問題視されているように、選挙戦においてSNS運用を有償委託することは現行の公選法に違反します。
しかし、発信者が無償で、勝手に流す分には何ら違反行為にはなりません。選挙系ユーチューバーは候補者から収益を得ていないので合法です。
選挙参謀としてできることは「各務原市議選を配信価値のあるものにする」ことです。リソースが潤沢に準備できる陣営であれば、全方位的な運営ができたのかもしれません。ただ、今回は私1人で2陣営の選挙参謀を掛け持っているくらい限られたリソースでの運営でしたので、周りの皆様の応援をフル活用できる下地を作りました。
幸運なことに井上慎也愛知県議が来援前夜、チャンネル登録者数136万人を誇る「リハック」に、石丸伸二さんの隣という特等席で出演。結果、同時接続者数2.2万人超え、総再生回数40万回超えと井上県議に注目が集まり、そのまま各務原市に来ることを発信していただいたことで水野ひろゆき候補の名が全国に広がりました。
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そして最終日、ついに花開き、応援の輪が二重三重にも広がっていきました。
2/16(日)・22(土)動画公開/22(土)現地応援
堀口達也彦根市議
Xフォロワー1,846人・YouTube登録者数7,250人
2/16(日)動画出演/2/22(土)現地応援
井上慎也愛知県議
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Xフォロワー1,448人
2/22(土)現地応援・動画配信
高橋良さん
Xフォロワー805人・YouTube登録者数5,010人
2/22(土)ライブ配信
HEさん(チーム石丸と経済で日本を動かしましょうチャンネル運営者)
2/22(土)現地アシスタント
のっぺらぼうさん
この他に、私自身が現場にて撮影やライブ配信、またSNSでの発信を行うこともありました。
応援演説として、井上愛知県議→堀口彦根市議→杉山各務原市議→山田扶桑町議(私)→水野ひろゆき候補の街頭応援演説リレーも実現しました。
井上しんや愛知県議【@inoueGENshinya 】
— 山田あつき@扶桑町議会議員 (@917ervqs) February 22, 2025
↓
堀口たつや彦根市議【@tatsubou123 】
↓
杉山もとのり各務原市議【@sugiyama_moto 】
↓
山田あつき扶桑町議【@917ervqs 】
↓
水野ひろゆき候補【@hiroyuki_mizuno 】
応援演説会! pic.twitter.com/quYpVt8aBH
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選挙戦を終えた2月26日現在、上記5名の選挙戦最終日+最終日前日の関連ポストのインプレッション・関連動画の再生回数を合計すると13万回を超えており、候補者単独の発信力を大きく上回っています。またこの5名以外の応援団発信や私、候補者の発信も相当数インプレッションがありますので、人口約14.5万人の各務原市民以上への広がりを約2日で達成したことがわかります。
2025年2月24日0時30分、開票結果が確定し、3月4日の任期開始より「小川あさみ・水野ひろゆき両候補」から「小川あさみ・水野ひろゆき両議員」へとなることで、私の選挙参謀としての役目は無事に幕を下ろしました。
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選挙は異種格闘技!?
実際各務原市議選を終えてみての私の率直な感想は、「選挙は異種格闘技」であるということです。現職には実績が求められ、新人には現職ができない・できなかったことをしてくれという期待を求められます。4年前の選挙では現職が全員当選し、新人8人中7人が落選するという当地の環境が、最もハードでした。ただ、やはり私自身が隣町の現職議員であること、応援弁士をはじめとする多くの人とのご縁とによって、無所属の新人への支援が集まり、8年ぶりの現職落選、そして両候補を市政へと送り出すことができたのかなと思います。
両候補とも、私がみるに普通の人です。普通の人だからこそ、普通の声を届けるために市政に必要です。小川候補に投票してくださった1,673名の皆様、水野ひろゆき候補に投票してくださった1,520名の皆様、そして多大なるご支援を賜りました皆様の存在によって、私も含めチームで一緒に闘うことができました。ありがとうございました。
最後に
今回、このnoteの記事構成は斎藤元彦兵庫県知事から選挙広報戦略を請け負った疑惑がかけられている株式会社merchu代表取締役の折田楓さんのnoteとあえて全く同じにしてみました。
兵庫県知事選を715,000円で請け負ったのではと疑惑が報じられていますが、あくまでも現段階では疑惑なので、断定表現は用いません。
私から言えるのは、ここまで読んでいただいておわかりかと思いますが、選挙参謀は見返りがないのであればいささかハードすぎる立場です。しかし私は選挙参謀として、当然1円も受け取っていません。公選法に則ってやっています。では私にとっての見返りとは何か、といえば、自分自身の選挙に活かせる経験が2陣営分増えたことです。自身の選挙が4年に1回ですから、この経験はお金に代えられない「8年分」の価値があるものです。現職地方議員だからこそ価値があると感じられるものなのだと思います。
私は今、定数16の扶桑町議会でただ1人、どこの政党にも会派にも属しない無所属無会派議員です。もしかしたらまた、政党の支援を受けない地方議会の新人候補者から依頼を受けて、どこかで選挙参謀を務める日が来るかもしれません。議員としての自己研鑽の選択肢として、常にテーブルの上にあります。その時はまた皆様、一緒に戦いを楽しみましょう。
繰り返しになりますが、この記事が今後の選挙で候補者を支える関係者の皆さまに、そして地方議員を志す方にとって、役に立つものとなることを心から願っています。
また、「選挙参謀」という立場の持つ底力、候補者や善意の支援者を法的に正しく導き続けることの大変さや重要性について、少しでもご理解が深まるきっかけになれば幸いです。
最後に僭越ながら、選挙参謀としての私を参加者に評価していただいた動画を掲載します。
応援に来てくださった堀口達也彦根市議、高橋良さんがYouTube配信内で私のことを語ってくださいました(13:18〜)。現時点で再生回数3,380回となっております。
また、高橋良さんのYouTubeチャンネルにも井上慎也愛知県議とともに出演させていただきました。
こちらは再生回数2,546回となりました。
本職は扶桑町議会議員です。扶桑町ってどんなところ?と、目を向けてみてください。
選挙ってこんな風になっているんだ、と参考になったなあと思う方は、今回の選挙参謀はボランティアのため、数万円の赤字となっておりますので是非とも以下より投げ銭のご支援をお願いいたします。
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