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核融合ロケットの研究(27)/最終光学系、FALCON-D、スピン偏極

表紙:「長岡秀星の世界」、日本放送出版協会

 杉山大志氏(キャノングローバル戦略研究所)と核融合専門家の岡野邦彦先生の対談が大変面白い。最近では、「核融合ついに中国がトップ、日本も追撃」のタイトルでの議論であった。

中国は、もう7年前ぐらいから、崩壊すると言われ続けていて、本も沢山出ているが、未だ崩壊しない。それどころか、科学に関しては、米国を追い越して、ついに世界一に躍り出た。以下の記事も参照されたし。
遠藤誉、Natureの研究ランキング「トップ10」を中国がほぼ独占


 お二人が、レーザー核融合についても議論されている。「レーザー核融合は実現するのか」がそのタイトルである。
その中で、指摘されたのは、実現化のためには、最終光学系(ミラーなど)~一番最後にレーザーを集光してターゲットに照射するミラー~を核融合中性子などからいかに防護できるかである。これが、レーザー核融合炉の一番の課題である。

 後藤さん、岡野先生共著で書かれた、概念設計FACON-Dの論文にもそのことが書かれていて、中性子フルエンス10**21 n cm**(-2)に耐えうる材料でないと1年間のfull powerで運転できない、つまり途中で取り替えないとけない。
T. Goto, et al., Conceptual design of fast-ignition laser fusion reactor FALCON-D, Nucl. Fusion 49 (2009) 075006
(私の手元にある資料、「高速点火レーザー核融合実験炉概念設計委員会報告」、IFEフォーラム/レーザー核融合技術振興会、平成27年3月31日にも6.2.2最終光学系の保護の節があり、詳しく議論されている。)

 レーザー核融合ロケットに関して言えば、DT燃料でスピン偏極させれば、核融合中性子は、非等方(sinθ**2)に放出されるので、θ=0の方向に置けば、中性子は飛んでこないので、最終光学系の放射線ダメージは、抑えられる。ただし、図の様に配置すると今度は船体の遮蔽が大変である。工夫が必要。

最終ミラー配置

なお、FALCON-Dは、固体壁を採用しているが、レーザー核融合ロケットの磁気ノズルも同様であり、設計には、大いに参考になる。

  レーザー核融合は着実に進んでいます。米国NIFは、ゲイン1.5を達成し話題になりましたが、今ではゲイン(G)2を達成し、10年以内にレーザー(EL)を3MJに増強し、ゲイン10~15を達成の予定です。ただし、間接照射方式なので、効率が良くなく、その後どうするのでしょうか。阪大レーザー研で提案の高速点火方式ではコンパクト(EL=0.4MJ)で、G=70は、出るので、こちらが主流になるのではと思います。また、Blue Laser Fusion/BLF:スタートアップ企業では、EL=10MJ, G=100, aneutronic solid target(p11B?, 要するに中性子を発生しない・少ないターゲットか)など、意欲的に取り組んでいます。実用化は、2030年代か。
  この様な取り組みが順調に進むことを期待しています。

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