へバーデン結節ミューカスシスト(粘液嚢腫)手術記録
手術当日―手術が終わる―
「終わりましたよ。」
手術室のデジタル時計を見ると、19:XX:XX で止まっていた。20分かからなかったらしい。
オペ看さんが、私の右腕を胸の前に持ってきてくれてギョッとした。
(何これ!!)
他人の生首を見せられた気分だった。大きさ的には大根を載せられた感じ。左手で右腕を触ってみても、まったく何も感じない。ただ左手で温かい物を握ったという、そんな感じ。
その後、手術台から起き上がり、オペ看さんが三角巾をつけてくれるときに、右腕を左手で持っているように言われたのだが、持っていないと本当にぼこっと落っことしそうだった。
A医師にお礼を言って、更衣室に戻り、手術着を脱ぐ。はじめは一人でやろうとしたが無理だった。三角巾があろうがなかろうが、右腕を左手で支えていないと落っこちそうで、そうすると両手が使えないからだ。それに一旦三角巾を外さなければ袖に腕が通らない。結局オペ看さんと、迎えに来た外来看護師さんの二人に手伝ってもらって、やっと着てきた服に着替えた。
そしてここからは一人で会計へ移動。
渡された書類や持ってきた荷物全部を、首からかけたり、左手で持たなくてはならない。そこで初めて右腕を三角巾に預けて手を離さざるをえなくなった。首からかけた三角巾がまだうまく馴染んていないのだが。
物体と化した右腕が、歩くとブランブランと揺れる。怖いなーと思いながらそろそろと1階まで行って、会計窓口に書類を出した。
既に夕方4時過ぎなので、会計の待合はすいていた。ややあって会計窓口に呼ばれ、お金を払う。(思っていた金額の半分だった。)
鞄から財布を取り出す、財布をあける、お札と小銭を取り出す、すべて片手。片手の不便さをここで実感した。時間がかかったが、会計の人もこちらが手術直後とわかっているようで、辛抱強く待ってくれていた。
さて、会計も済ませたし一刻も早く帰らなくては。抗生剤の院外処方箋が出されているので、家の近くの薬局に寄って薬も買わなくては。
家族に「手術が終わったよ。これから帰るよ。」と連絡しようとしてスマホを取り出したところが、ここで大問題に気づいた!!
「指紋認証ができない!!」
想像してみてほしい。スマホの指認証の部分に、気絶している他人の親指を当てなくてはならない! 両手が使えれば、他人の手を開いて親指をスマホのその部分にあてることはできるだろうが、片手では無理だ!
ガーーン!
手術後の対策を色々と考えてきた私だが、これは考えてなかったよ! スマホが使えなければ電話がかけられない。テレホンカードなんて持ってないよ~。
一瞬とても焦ったけれど、幸い、暗証番号でスマホを解除することができたので、家族に連絡をとることができました。ほっ。
そして病院から駅まで歩き、電車に乗った。幸い始発駅なので座ることができた。座れて本当に助かった。鞄には水筒とか入っていて結構重いのだ。財布とスマホが入っているポシェットは肩にかけているが、こちらも重い。三角巾も首にかかっている。これで立っていろと言われたら、つり革も持てないし、無理だったと思う。