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デザインって良くも悪くもなるよねという話

この記事は、てなブログに2018年に書いた記事をnoteに再録したものです。

最近、STS科学技術社会論)やバイオテクノロジーのELSI(倫理的・法的・社会的問題)と呼ばれる分野の研究をしている方々とお仕事で関わることが多い。


ゆらぐ はなす つなぐ Gene Drives Elastic Future | ふしぎデザイン


分野の名前が難しいので想像しづらいかもしれないが、要するに「科学技術を社会になじむようにする方法を考える」分野だ。(僕の理解です。実際は違うかも)

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バイオテクノロジーはあらゆる科学技術の中でも特に影響力が大きい分野で、もたらされる恩恵が大きい反面色々と問題を抱えている。

わかりやすい例を挙げると、人間の受精卵を操作して子どもを好きなように作ってよいのか?あるいは、ある病気を媒介する動物を、病気の撲滅を目的として絶滅させてよいのか?といった具合だ。

これらの問いは決してSFの世界の話ではなく、既に生み出された技術によって実行可能なものだ。ただ、それには「本当に実行してよいのか」「実行するとして、誰がどのように社会実装するのか」という議論が必要不可欠になってくる。

この議論が十分になされないうちに実行されてしまったり、あるいは本当は禁止すべきような危険な技術が実用化されてしまったりすると、バイオテクノロジーから本来得られるメリットよりも大きいデメリットを受けることになる。研究者は知的好奇心のままに技術開発をするし(デザイナーと一緒ですね)、企業は営利追求のためなら手段を選ばないこともある。さらには国や自治体が常に正しい判断を下せるとも限らない。

そこで、技術開発をどのように舵取りし、いかに実社会に実装するかを考え、いろいろなポジションの人々と一緒になって議論する役割が必要になってくるというわけだ。

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ちょっと話は変わるが、上のような分野にかかわる仕事をしているため、最近はデザイナーにも倫理的な観点が必要だと思うようになった。

プロダクトデザインは、ある製品の外観を決めることで、その企業の顔を魅力的に演出することができる。グラフィックデザインは様々な手法を用いて、ある情報を魅力的に伝達することができる。UI、UXの分野も言わずもがなだ。


例えば、チームの一員としてデザイナーの能力をうまく活かすことができれば、こんな良いことができるだろう。

・アピールしたいものをよく見せ、魅力を引き出すこと

・伝えたい情報を正確に伝え、誤解のないように工夫すること

・人の生活を豊かにする、役に立つものを生み出すこと


ただし、その力を活かす方向はきちんと考える必要がある。

デザインの力を活かすことによって、こんなこともできてしまうからだ。

・本来は良くないものをごまかし、よく見せること

・伝えたくない情報を隠し、ミスリードを誘うこと

・人の生活に害を与えてしまう、攻撃的なものを生み出すこと


で、多分、悪意あるコンセプトのもとにデザインの知恵を使っちゃったら、「とても健康的で美味しそうに見える毒」みたいなものなんて、朝飯前に作れてしまうだろう。それも、それが毒であるということは誰にも気づけないようなものを。


ここで言いたいのは「デザイナーは悪の手先だ」とかではなく、「自分は毒を作れることを知っている」ことはとても大事ということだ。

デザインは、楽しい夢を描き、実現することのできるすばらしい職業だと思うし、できるなら自分もそうありたいと思う。ただ、他のすべての職能と同じで、デザインの技術は良くも悪くも使える可能性がある、ということは忘れたくない。

(誰かにとっての良い夢は、ほかの誰かにとっての悪夢かもしれない)


僕らはどんどん新しい夢を描いてゆきたいし、それが良い夢であるようにがんばる。

いまいちまとまりのない文章になってしまったけれど、本当にそう思っています。

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