”がん”への手紙

拝啓　乳がん様

早いものでもう手術してから6年たちました。
今あなたは何をしていますか？私の体にいますか？眠っていますか？
それとも動きたいのをがまんしてる？（やめろよ！）

6年前、私の右胸にしこりを見つけたときは心臓が止まりそうでした。
人間ドック受けてたのに！その前の年もマンモグラフィー異常なし。
”乳腺が濃いと映りずらい”と聞いたから、ちゃんと授乳中だということを確認して受けた。それなのに。。
実際に告知を受けたときは、生まれて初めて頭が真っ白になりました。
なぜ私？なぜ今？私はがん家系だから、なんとなく、いつかはなるかもとは思ってたけど、まだ娘が2歳の時になるなんて。
年取ってからならいいってもんじゃないけど、なぜ今？
そう思うと、怖かった。初めて死ぬんだと思った。私の何がいけなかったのか、何かの罰なのか、考えて責めて。
とにかく体の中から追い出したくて、セカンドオピニオンの時間すら惜しくて、すぐ治療に入ったよね、誰にも相談せずに。
抗がん剤は辛かった。髪は抜けるし、味覚障害になるし、風邪は引きやすいし、涙目になるし、あの時、人間にはムダ毛って無いんだな、と思ったわ、マジで。生えててありがとうだわ。
胸だって無くなったよね。肩凝るし、授乳の時は母乳が出なくて、”この役立たず！”と思ったよね。もしかしてそれで機嫌損ねた？今は、大きさとか、形とかどーでもいい。乳首無いと胸って変なのね。乳首の重要性を初めて知ったわ。放射線治療もきつかった。喉が痛くて、ツバも飲み込めないくらいだった。たった10か月くらいの治療期間だったけど、人生で一番辛かった。

あなたは、場違いなのか、コピーミスなのか、自己犠牲の賜物なのか、私にはわからない。なぜ、私の体の中で増えてしまったのか。私が死んだらあなたもおしまいなのに、そこまでしで何で来たの？
”キャンサーギフト”って言葉も聞く。確かに、人生を考えるきっかけにはなったよ。今までは、悪いことは親や、育ってきた環境のせいにしてた。フツーでいいんだって思うようにしてた。
でも、これからどう生きたいのか考えた。私は、何が好きで何がしたいのか考えた。初めて真剣に、考えたかもしれない。おかげで、助けてくれる家族がいること、治療できるお金があること、一緒に泣いてくれる友人がいること、それへの感謝、健康的な食生活、心の健康、自分を労わったり、大切にすること、いろんな大事なことが分かった。

でもはっきり言って、絶対ありがとうとは言いたくない。もし言うとしたら、80～90歳まで、好きなことやって、幸せに、悔いなく生きて、それでようやく言える言葉だと思ってる。
だから今の私にとって、あなたはただのメッセージだと思ってる。
それだけ。

でもさ、でもさ、

がんじゃなくてよくない？

がんじゃなくてもよくなーい？？

他に方法無いんかい！
がんにならないと気づけないくらいポンコツなのかい、私！
ちょっと！！聞いてる？他の方法が良かったんですけど！
死ぬかもしれないとか、子供に遺伝したらどうしようとか、
そんな恐怖を味合わないと、気づけないことだった？

おーーーーーーい！！

他の方法で　言　え　や　！！

もう出てくんな！！
（出てこないでね！マジで！もう大丈夫だから！私ちゃんと自分労わるから！ホント気を付けるから！ね！）