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毎日新聞に取り上げて頂きました。

 これまでの新聞記事は、山形新聞、読売新聞、そして今回、毎日新聞に取り上げられました。

 毎日新聞の取材を受け、一連を記事にして頂き、この記事の中で、今回の計画は相当無理があった。という一文があります。JR東日本エネルギー開発はこの場所を事業場所として選んだわけですが、本当にこの地が事業地として適地であったのか、と言う出発点が間違っていたと思われます。配慮書の段階で、専門家から、
「大型の風力発電機は安定した地盤上に建設されることが不可欠であることから、 地盤調査を十分に実施して適切な施工計画を策定すること
と指摘されています。昭和38年から昭和40年が工事期間だった現国道13号線の西栗子トンネル工事の工事誌には、「国道周辺は風化してもろく、全体が地すべり地帯となっている。」と言った調査結果が残されています。

 今回の事業の工事場所はこのトンネル工事の部分から尾根にかけてとなっている為、風化してもろい地滑り地帯の標高1000mの豪雪地帯をわざわざ事業地として選んだわけです。そのため、工事も、完成後の維持も、相当に困難を極めることは明らかです。
 この地をなぜ選んだのかについて、昨年の9月9日の時点では「山形県は風力発電に力を入れており、我々が手を上げさせてもらいました。」というように、山形県にお勧めされて、我々がやってあげるんです、というニュアンスで説明されました。説明会に参加した者は、「山形県がココを勧めたのか!ぐぬぬ。」となる説明をされました。しかし、これは嘘で「山形県はこの場所をお勧めしていない、何故この場所を選んだのか分からない。」という回答でした。そして、市民向けの8月の説明会では、「風況が良い。東北電力の電線につなぐことが出来る。風力発電機を運ぶ道がある。」という自己都合の理由でした。

 もし、どうしてもこの地でやりたい、困難を極めても、それを克服してやるんだ、という意気込みがあったなら、徹底的に地質を調べ、どんな方法であれば事業が可能であるのか徹底的に調査することは可能だったはずです。しかし、調査をまったくやらなかった。最初の時点でしっかり地質調査したなら、事業地として巨大構造物を建てることは無理であると判断てできたはずである。しかし、どんな土で形成されているのか、現地調査はせず、公表から4年以上たって撤退を表明するまで、結局は調査されなかった。昨年9月9日の住民説明会の資料の地質のところは空白。今年の米沢市民全体への資料にも特に記載は無かった。そして、震度いくつまで耐えられるのか、と言う質問に回答できなかった。

 想像であるが、改変面積はかなり広く、その場所を徹底的に地質調査すれば経費が膨大で、それを節約するために調査を省略して事業を進めようとしたのではないか。専門家の意見に、圧倒的に調査が足りていない、中止するなら中止する、やるなら調査をちゃんとやる事、と強い言葉で指摘され、経済産業省方の勧告でも、やるならこれだけの事をやりなさい、という勧告であった訳ですが、それを時間もかかるし経費もかかり、事業として成り立たない、として撤退を決めました。という事は、経費をかけずに、調査をせずにやろうとしていた、という事でしょうか。自然をなめてはいけません。住民目線からは、その専門家の意見さえ聞く耳持たないという態度にしか見えなかった。

 もう一つの懸念は、この地の標高1000mを超える山の山岳道路は、初雪が降った時点で冬季通行止めになります。そして、4月になってから除雪を開始し、ゴールデンウィークの開通に間に合わせるというのがほとんどです。それを、除雪しながらひと月に一度風車のメンテナンスをする、という事でした。地元の人間ならわかる、狂気の沙汰であると。雪崩が起こる、埋まる、遭難の危険がある、という事を想定できない。作業道の凍結も想定されていない。命を懸けてメンテナンスせよ、というに等しい。犠牲者が出る前に撤退したことは賢明である、と思います。

10月4日

 山形県の奥羽山脈・栗子山で計画された風力発電事業について、事業者のJR東日本エネルギー開発(東京)の松本義弘社長らが9月27日、地元の米沢市役所を訪れて事業からの撤退を伝えた。「抜本的見直しを」「協力関係を構築する意欲に欠ける」。ここまで知事や市長に厳しく指摘された計画は、どんな紆余(うよ)曲折をたどったのか。  栗子山は標高1217メートルで山形、福島両県にまたがる。2019年に浮上した事業計画によると、米沢市の栗子山南部に大型風車10基程度を設置し、発電出力は最大3万4000キロワットを想定。29年3月の運転開始を予定していた。  しかし計画地の周辺には絶滅のおそれがある猛禽(もうきん)類、イヌワシやクマタカなどの生息地があり、風車への衝突事故(バードストライク)の懸念が拭えないと指摘されていた。  一方、事業者は23年に経済産業相へ提出した環境影響評価(アセスメント)準備書で、イヌワシの営巣地が計画地から10キロ離れた地点にあると記載。事業を進める意向を崩さなかった。  こうした姿勢に対し、米沢市の住民有志は23年11月、「米沢の子供の未来と豊かな自然を考える会」を結成。事業者が実施した猛禽類の生息状況調査結果に疑問があるとして、事業の撤回を求める署名活動や勉強会を行ってきた。  同会は事業者に説明会の開催を求めたが受け入れられず、8月4、5日にようやく開かれた説明会でも議論は平行線をたどった。高橋ひろみ共同代表は「対応が不誠実で不信感しか募らなかった」と反対姿勢を鮮明にした。  一方、山形県は事業者の環境アセスメントに加え、計画地付近でイヌワシが巣材や餌を運ぶ動きのデータを独自に集めるなどして妥当性を検討。事業者が主張する営巣地よりも計画地に近い場所でイヌワシが営巣している可能性が高いと断定した。  県はこのほか、造成地の崩壊や地滑りなどの懸念もあるとして、事業の中止を含めた抜本的な見直しを求める準備書への意見を8月26日付で経産相に提出した。  さらに米沢市の近藤洋介市長は同30日の記者会見で、住民とのコミュニケーション不足を念頭に「市や住民との協力関係を構築する意欲が欠けている」と批判。事業計画の全面白紙撤退を事業者に申し入れた。  こうした地元の意見も踏まえ、経産省は9月19日付で事業者に対する勧告を発表。イヌワシなど鳥類に関する複数の専門家から構成される協議会の設置、稼働後のバードストライク調査などを求めた。また土砂や濁流の流出による水環境への影響を避けるため、建設に関する厳しい基準を設けた。  JR東日本エネルギー開発は事業撤退の理由について「スケジュールの大幅な遅延とコストの増大が見込まれ、事業性が成り立たない」とコメントした。  一方、近藤市長は地域との信頼感作りに問題があったと改めて指摘し、「今回の計画は相当無理があった。市が求めてきた全面白紙撤回を受け入れたものであり、速やかで賢明な判断だった」と話した。  「自然を考える会」の高橋共同代表は「今、同じような問題に直面している地域もある。自分たちの体験を共有していきたい」と振り返った。【竹内幹】

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