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昨夜見た夢の話 「雲の国」

雲の国 ー 昨夜見た夢

僕たちは逃げている。仲間は複数人いるけど誰かは判らない。女の子もいる。初恋の相手だったさっちゃんに似てた。

ここは雲の国らしい。何故なら周りは空で、雲の上を走っているのだから。

雲の国には小さな雲もあれば大陸のように大きな雲もある。僕たちは東で友達の夫婦に会った。

萌香ちゃんは柔らかそうなソファに座っていて、不敵に微笑みながら、右手の指を艶めかしく親指から小指へと順にフラメンコカスタネットの鳴らし方で手招いている。

逃げなきゃいけないのは「彼女に従うと兎に変えられてしまう」という声が何処かでしたからだ。

魚が人間の女の子になった映画があったし、村岡花子の童話[たんぽぽの目」にも白ウサギが人間の男の子になったお話があるけれど、その逆は聞いた事がなかった。でもその警告の声から察するに、呪いに近いのだとすぐに悟った。

それで僕らは、まず西に向かって逃げた。地続きになっているので、全速力で逃げられると思ったから。
僕は先頭に立って逃げ、二人が後ろで横並びになって付いて来る。

でもどんなに力いっぱい走っても、振り返れば、萌香ちゃんが不敵な笑顔のままで、左手に小さな何かを乗せるように手のひらを上にして迫って来る。多分手のひらにあるのは、いや居るのは旦那さんのたかひろ君だ。萌香ちゃんは後ろで、どんどん巨大化しながら近づいていて、今にも捕まりそうだった。

次に気づいた時には、飛び石になった雲の階段の所で、今なお慄きながら雲の国から逃げ降りているところだった。

もう一度振り返ると、萌香ちゃん夫婦はバーにいて、もう追いかけて来てはいない。萌香ちゃんは、穏やかに微笑みながらカップを両手に包み、目を下に向けてそのカップを見ていた。

たかひろ君は、その隣りで立ち飲みスタイルでバーのカウンターにもたれてながら、ちびちびと年代物のウィスキーを飲みながら、マスターに管を巻いている。そのマスターらしき人は上着なしのベスト姿で微笑んでいる。僕らは地上へ逃げおおせたのだろうか。

きっと地上へ帰れば本物の萌香ちゃん夫婦がいる。明るい性格の女の人だ。怖がる必要はない。たかひろ君はお酒が飲めないはずだ。愚痴をこぼす事自体考えられなかった。だからいま考えれば、あれは夢の中の事だとすぐに分かったはずだ。でもその時の恐怖は生々しいものだった。

何か悪い事をした覚えはないし、少し疲れているだけだ。

何かから逃げる夢はストレスや解放されたい気持ち、追い詰められている可能性があると言われる。思い当たる節はある。でも、頭の中の情報を整理していただけだ、と自分を労わった。


そういえば、雰囲気は25時のバカンスのようだったかもしれない。







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匤成深夜〈おみなり しんや〉note詩歌コレクター
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