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#短編小説

【短編】ディッキンソニアの還った日-02

【短編】ディッキンソニアの還った日-02

 自室でベッドに寝転び、夕飯までの時間を潰す。

 上げ膳据え膳は、帰省した子どもの特権だ。何もしないのも申し訳ないので、簡単な家事手伝いくらいはするけれど、それでも全ての家事・炊事・洗濯をワンオペしないといけない一人暮らしに比べると、VIPにでもなった様な心地の良さがある。

 独り暮らしの自由、たまの帰省で満喫する特別待遇。この二つのコントラストが、私の大学生活を彩っているといっていい。

 

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【短編】ディッキンソニアの還った日-01

【短編】ディッキンソニアの還った日-01

「宗介とは別れたよ、三ヶ月前」

 気になってしょうがなかったなんてことはなく、半年ぶりに地元で会う友達との会話を途切れさせない様に努力する過程で、亜実が高校から付き合っていた彼氏の話題をふったにすぎない。……いや、今は元彼か。

 あっさりしたものだった。高校一年で付き合い、卒業までそのまま関係は続き、付き合った・別れたのアップダウンに翻弄される同級生の中にあって、二人は落ち着きを感じさせる存在

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自分のために背伸びをする

自分のために背伸びをする

誰にでも、
ここ一番で頑張りたい時ってありますよね。

今の実力では無理かもしれないけれど、
もう少し頑張ってみれば、
それが達成できるかもしれない。
あと少しで理想が叶うかもしれない。

そんな時には、
ちょっとだけ背伸びをしてみることも必要です。

そのために「自分への嘘」を
ついてもいい時もあるのだと思うんですね。

できるかどうかわからないけど、
できると言い切ってみる。

まだ成し遂げて

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「表現力」って何ですか?|王谷 晶

「表現力」って何ですか?|王谷 晶

はい、というわけで先月の宣告通り一年の半分が終わってしまったわけでございますが皆様いかがお過ごしでっか? 王谷晶である。

今年の上半期はとにかく全国、いやさ全世界的にいろいろなことが起こった。まだ収束していないウイルス問題、それに引っ張られるように各地で可視化された社会問題について、フィクション・ノンフィクション問わず大量のテキストが生み出されていくだろう。

こういう、大きなイシューについてい

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Hello Hello

Hello Hello

 夜空に煌めく、星の瞬く音に耳を傾けていた子供たちの幾人かは長じて天文学者になり、そのまた幾人かは特に他の惑星の生命体、それも知的な存在を探すため、大きなパラボラアンテナを空に向け、その声が訪れるのを期待と恐怖の混じりあった気持ちで待っていた。しかしながら、耳をそばだてていても聞こえるのはノイズばかりである。待てど暮らせどどのようなメッセージも送られては来ない。もちろん、その可能性の小ささを理解し

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