化学物質過敏症になりました その3

 今回は、「香害」岡田幹治著、「マイクロカプセル香害」古庄弘枝著という本と、更にネットで読んだ情報をまとめたものを紹介します。

香り付き柔軟剤と香害について 

参考文献 「香害」 そのニオイから身を守るには 岡田幹治著
「マイクロカプセル香害」 柔軟剤・消臭剤による痛みと悲しみ 古庄弘枝著

柔軟剤の市場と香害
1999年から2017年までで、柔軟剤の販売量が21万5347トンから39万8154トンに約2倍に増えている。
香りによる被害(香害)の相談件数も増えている。国民生活センターに寄せられた「柔軟仕上げ剤のにおい」に関する相談件数は、09年の9件に対し、14年は167件、15年は139件、16年 152件と高止まりしている。
また、2017年に日本消費者連盟が行った香害110番では2日で、213件もの相談が寄せられ、最も多かったのは、近隣の洗濯物のニオイによる被害で相談者の半数は化学物質過敏症だった。
香害被害者の中には、友人や同僚の服についた柔軟剤やシャンプー・制汗剤などの香りによって、学校や職場に行けなくなるという深刻な問題を訴える人もいる。また、隣家の洗濯物の匂いがきつく、頭痛や吐き気があり、窓をあけられず、換気扇も回せない。といった相談も寄せられている。
香りブームの結果、私たちはきれいな空気を吸うという当たり前のことがとても難しくなった。今や香り商品による環境汚染は、広い意味での公害の1つになったといえる。
なお、化粧品、家庭用洗剤、柔軟剤、芳香剤、浴剤などの人工香料全体の国内生産量、輸入量の合計も2009年の1万2トンから2017年で1万6928トンと1.69倍に増えている。

香りに関する意識調査
・シャボン玉せっけん「香りに関する意識調査」
2017年8月 20代から60代の男女598人を対象 
・人工的な香りによって頭痛、めまい、吐き気などの体調不良を経験した人が51%
・他人のニオイ(香水、柔軟剤、シャンプー)を不快に感じたことのある人 79%
・人工的な香りによる被害を香害と呼ばれることを知っている人は39%

2018年5月 20代から50代の女性305人を対象 
・人工的な香りによって頭痛、めまい、吐き気などの体調不良を経験した人が64%
・人工的な香りによる被害を香害と呼ばれることを知っている人は58%

国民生活支援センターが呼びかけ
香りによる被害者からの相談急増を受けて国民生活センターは2013年9月に「柔軟剤仕上げ剤のにおいに関する情報提供」を発表。発表では、利用者に「自分にとって快適なにおいでも他人は不快に感じることもあることを認識しよう」と呼びかけるとともにメーカーと輸入業者には「においが与える周囲への影響について配慮を促す取り組みをするよう」異例の要望を行う。これを受けて、大手メーカーも周囲への配慮を促す文言を入れるようになった(注意して見ないと気付かないほど小さな文字の場合が多い)。

化学物質過敏症 (CSまたはMCS Multiple chemical sensitivity)とは
・わずかな化学物質でも取り込むと、全身に様々な症状が出る病気で、日本では2009年に病名として登録された。一度に多量の化学物質を取り込んだり、少量でも長期にわたって取り込み続けると、身体の反応として発症する。一旦過敏症を獲得すると、その後は様々な物質に強い反応が出るようになり、合成化学物質だけでなく、自然の物質に反応する人もいる。その特徴はごく微量の汚染物質で反応がでること、症状は実に多様で様々な器官に出ること、個人差が極めて大きいこと。
目:かすむ・チカチカする・涙が出やすい・かゆいなど
鼻:嗅覚過敏・鼻水が出る・詰まる・かゆい・鼻血が出るなど
耳:耳鳴りがする・痛い・音に敏感・聞こえにくいなど
口やのど:渇く・よだれがでる・のどが痛い・声がかすれるなど
消化器:下痢や便秘を起こす・吐き気がする・おなかが張るなど
腎臓、泌尿器:トイレが近くなる・尿がうまくでない・性衝動の低下など
呼吸器、循環器:咳やくしゃみがでる・喘息を起こす・脈が速くなるなど
皮膚:湿疹・じんましん・かゆみ・汗の量が増えるなど
筋肉、関節:筋肉が痛む・肩や首が凝る・関節が痛むなど
産婦人科系:のぼせる、手足が冷える、生理不順になるなど
精神、神経:頭痛がする・うつ状態になる、記憶力や思考力が低下するなど

CSの原因
以前は新築やリフォームがきっかけでCSを発症する人が多かったが、近年は香料(柔軟剤、香水)で発症する人が圧倒的に多い。

CSになりやすい人
CSは体がもつ防御反応の一種なので、だれでも発症する可能性がある。許容量は、化学物質に対する感受性の強さや、解毒能力によって決まるので、発症しやすい人としにくい人がいる。性別でいうと日本、アメリカ共に、女性が7割以上を占める。

CS有病率
医学者による疫学調査により、成人の人口の7.5%、上越市で行った小中学生の調査から12.4%という報告がなされており、合計1000万人の患者がいると推定される(一般社団法人化学物質過敏症・対策センター 2020)。ただ、化学物質過敏症を診断できる病院は国内に数院しかない。
アメリカでは、2016年の調査でアメリカ人口の12.8%がCSの診断があり、25.9%が何かしらの化学物質に敏感であると自覚があるというレポートがある(JOEM 2018年3月誌)。

CS予備軍
・最近においに敏感になった、
・新しい住宅に引っ越した、家をリフォームしたら、匂いに敏感になった、体調がすぐれない
・性格が変わり、怒りっぽくなった
・着ていた洋服の匂いに耐えられない
 このような人は、急いで生活環境と生活用品を見直す必要がある。

CSの治療法
今のところ、即効性のある治療法はない。体内の化学物質の総量を減らすために地道な努力を続けること。

柔軟剤に含まれる危険な成分
柔軟剤は成分表示義務がないので、メーカーが自主的に一部表示している。
花王のフレアフレグランスの成分を以下に示す。
<成分名称>                    <機能名称>
水                         工程剤
エステル型ジアルキルアンモニウム塩(EJA塩)    界面活性剤・柔軟性分・抗菌成分
ポリエキシエチレンアルキルエーテル(AE)      界面活性剤
香料                         香料
エチレングリコール                  安定化剤
塩化カルシウム                    粘土調整剤
シリコーン                      泡調整剤
防腐剤                        防腐剤
アミノ酸系金属封鎖剤                 金属封鎖剤

EJA塩については日本洗剤石鹸洗剤工業会が安全性報告書を公開している。しかし、生殖毒性や、発がん性の試験はせずに、類似の成分のテスト結果を基に安全と推定しているだけ。
AEは吸水性を保つために加えられているようである。この合成界面活性剤は、環境省が、人の健康を損ない、動植物の生育に支障を及ぼす物質に指定し監視している物質(PRTR法の第一種指定化合物)。アレルギーを起こす可能性が指摘されている。
香料とは様々な香り商品に含まれている香りのもと。現在使われているのは殆どが合成香料。香り成分には十から数百種類もの香料がブレンドして使われており、個々の物質名は企業秘密で発表されない。
香料の安全性に対する規制は世界的に甘く、実効性のある法的な規制はなく、香料業界の自主規制に委ねられている。しかし、米国の消費団体「地球の為の女性の声(WVE)」によれば、国際香粧品香料学会(日本も加盟)が要請に応じて公開した約3000種の香料の約半数1506種に危険や有害性があることが判明している(2015年報告書)。それらは、「化学品の分類および表示に関する世界調和システム」で、「急性毒性」44種、「危険」190種、「警告」1175種、人体に有害「97種」に分類されている。つまり、香料に使われる化学物質で、公表されたものの約半数は有害で危険だと指摘されたことになる。
 
香料の毒性とは
・アレルギーの原因物質として働く アレルギーは合成香料だけでなく、ラベンダーオイルなど天然香料でも起きる。 例えば、ベンガモットオイルはひどい接触性皮膚炎やじんましんを起こす
・喘息を誘発したり、悪化させたりすることがあり、喘息患者は香料を避けるように勧められている。
・合成ムスク類(ムスクとはジャコウネコの分泌物を乾燥させて作った高級香料:合成ムスクは香水から石鹸まで広く使われている)の一部が女性ホルモンを撹乱するなど、ホルモン撹乱作用を持つものがある。
・合成ムスク類には変異原性を持つもの、他の物質の変異原性を高めるものがある。変異原性とは、DNAに傷をつけ、遺伝的性質を変化させる毒性で、これがあると、発がん性もある可能性が高い。天然香料でも、月桂樹やローズマリーなどの香気成分の一つである「テルぺネオール」は変異原性を示したとの報告がある。
・一部の香料には発がん性があり、他の化学物質の発がん性を高める香料もある。柑橘系香料のd-リモネンはラットの実験で腎臓がんを起こすことが明らかになっている。
・最近の香りが長続きする香料では、香料がマイクロカプセルという超極小カプセルに入っている。マイクロカプセルによる、健康への害も近年明らかになった。

マイクロカプセルとは
香料をカプセルで包んだ構造になっている。カプセルはポリマーが多く使われ、高分子の有機化合物である。マイクロカプセルの形は球形が多いが、非球形もある。カプセルがこすれたり、押されたりすると、カプセルが破れて、中の香り成分が、出てくる。
マイクロカプセルの直径は数μmから数千μm。中にはマイクロカプセルを2重構造にして10μmのカプセルの中に0.1μmや0.2μmのマイクロカプセルを封じ込めている製品もある。小さいものは大気汚染物質として有名なPM2.5としての挙動を示す。(PM2.5:直径が2.5μm以下の超微粒子のこと。成分は様々。微小粒子のため、肺の奥深くまで入り、喘息や気管支炎などの呼吸器系疾患に影響を及ぼしたり、肺がんのリスクを高めたり、不整脈など循環器系への影響も懸念されている)。
カプセルの材料はポリマーが多く使われるという事だが、ポリマーを製造する日本カプセルプロダクツという会社のHPによると、「ゼラチン」「尿素樹脂」「メラミン樹脂」「ウレタン樹脂」「ポリウレア樹脂」などを製品化するものに応じて使っているとのこと。また、花王の香り持続性マイクロカプセルの特許でも、「ポリアミド」「メラミン樹脂」「ポリウレタン」「ポリウレア」等の各種高分子化合物があげられている。
 尿素樹脂は、尿素とホルムアルデヒド、メラミン樹脂はメラミンとホルムアルデヒドが重合したもの。ホルムアルデヒドはシックハウス症候群の代表的な化合物である。
 ウレタン樹脂はポリオールとイソシアネート、ポリウレア樹脂はアミノ基とイソシアネートが結合したもの。これらに使われているイソシアネートは極希薄な吸入でもアレルギー喘息や、中枢神経系、心臓血管系の症状を引き起こす毒性化合物。過敏性を生じやすく、慢性の肺線維症、間質性肺炎の原因にもなり、製造現場などでは法律により、規制値が定められている。生殖毒性や、奇形などを発生させるトルエンより約一万倍毒性が強いといわれている。
イソシアネートは反応性に富み、比較的安価と言われ、香料のマイクロカプセル壁の材料にポリウレタン樹脂を使用した企業がたくさんある。ポリウレタンを製造する際、結合し損ねたイソシアネートの放散も問題になっている。また、マイクロカプセルが割れた後、壁材にメラミン樹脂や、尿素樹脂が使われていれば、ホルムアルデヒドが、ウレタン、ポリウレア樹脂では、イソシアネートが空気中に放散される危険性もある。NPO化学物質による大気汚染から健康を守る会(VOC研究会)HPによれば、イソシアネート基を含むあらゆる種類、あらゆる形態の化合物は同種、同強度の毒性を持つとのこと。
VOC研究会が、柔軟剤の香りのする戸外でイソシアネートの濃度を測定したところ、住宅環境指針値の27倍、アメリカ職業安全衛生協会の作業環境許容濃度の約2倍のイソシアネートを検出した。また、針が振り切れて測定できないこともあったという。
 ここ数年イソシアネートを使ったマイクロカプセルの危険性が多く叫ばれているため、現在はもしかするとイソシアネートは使われていない可能性もある。ただし、カプセルが壊れると、まさに空中に漂うPM2.5(より大きいこともあるが)になるので、非常に問題である。柔軟剤を使う人が多ければ多いほど、その空間にはマイクロカプセルの残滓が飛び交うことになる。
鼻や、口で吸った空気は肺の中の肺胞で、ガス交換が行われる。肺胞には肺胞マクロファージという免疫細胞が存在し、肺胞上皮に沈着した粒子状物質、体に入ってきた悪い異物を貪食してくれる。肺胞マクロファージが最も過敏に反応し、貪食するサイズが1μmであるが、0.5μm以下の物質には反応しない。このため、0.5μm以下の物質は肺胞に分布している毛細血管から血液中に入り全身の臓器に運ばれる。肺胞マクロファージが危険性を感じることのできないサイズの粒子はたとえそれがどんな物質で作られているとしても、「サイズ自体が問題」という事を私たちはきちんと認識する必要がある。

空気は大切
 口から入ったものは異物であれば吐き出せるし、更に、肝臓である程度解毒されるが、鼻から入ったものは直接血液に入って全身に回るので毒性が強くなる。大人が一日に摂取するものは食物約1kg、水は2kg、空気は20kgといわれている。体内に入れる空気は食べ物の安全性と同じか、それ以上に慎重にとらえるべき。

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