娘が初めて笑ったとき
我が家には、もうすぐ生後満4ヶ月になる娘がいる。
生まれてからもう4ヶ月にもなると思うと感慨深い。生まれたばかりの我が子は人間というよりは新種の生き物のようだった。さながら幼虫のようにもぞもぞと動き、小動物のような甲高い声をあげて泣き、毎日寝るか泣くか飲むかしていて過ごしていた。
しかし娘の成長スピードには驚くべきものがあった。生まれたばかりの娘の体重は、私が筋トレで片手で軽々あげられるダンベル分くらいだったのに、今の娘の重さでは片手じゃあ厳しい気がする。
そんな娘を日夜見守っていると、ある日奇妙な瞬間を見てしまった。
夜、ようやく眠りについた娘が急に笑ったのである。目は閉じられたまま、声をあげて笑い声をあげた。短い時間ではあったけれど、確かに笑った。今まで、起きている時も確かに微笑むことはあった。私や夫が近づくと、嬉しそうな顔を見せることもあった。でも、声を出して笑ったことはない。
それから何度も、彼女は眠っている時に限って何度か笑い声をあげていた。
その光景を見る度に私は、よほど面白い夢でも見ているのだろうか、そして寝覚めている時には笑うほど面白いことがないのだろうかと複雑な思いになっていた。
しかし、ある日待っていた瞬間がやってきた。
今日こそ娘を笑わせてやろうと思って、お腹をくすぐったり「あばばばば」と適当な掛け声をあげてあやしていると、急に娘が笑い始めたのである。
まるで発作が起こったかのように勢いよく笑い、続けてあやすとさらに大きな声で笑った。近所迷惑になるかと心配するほどの大声だった。
あまにも笑いすぎて、しまいには涙さえ浮かべている娘を見ながら、私も不思議に涙が浮かんできた。
何も知らずに生まれてきて、ただ泣いて訴えるしかできなくて、毎日必死に生きている我が子。
何をしてやればいいのかもよくわからなくて、親としての自覚なんてものもまだわからなくて、でも必死で我が子を世話し、我が子との新しい生活に向き合っている私。
娘のためにやりたいことや学びたいことは沢山ある。でもその全てができているわけではない。心の中で「ごめんね」と思いながら、泣いている娘を横目に自分のことをしていることもある。
生まれたての我が子と、親になったばかりの人間の共同生活。
それでも確かに、我が子は力強く生きて、成長している。
生まれてきてくれてありがとう。
そして、沢山の喜びを与えてくれてありがとう。
娘の笑顔が、なんだかとても尊いものに思えて、いつまでもいつまでも眺めていた。