見出し画像

読書計画 ギリシャ編 その1

ホメロスのイーリアスの翻訳を読み終わりました。なんども途中まで読んで放置していました。終わりまで読んだのは初めてなので読み返したというわけではありませんが、始めの部分は何度も読み直しになっています。原書は古代ギリシャ語のイオニア方言ということなのですがインターネットで原文を手に入れてはみたものの結局中身は見ていません。叙事詩なのですが読んだ翻訳は散文になっている気軽に読めるものでした。昔は叙事詩の形式を踏襲した翻訳しかなくて読みにくかったのですが、今回読んだものは小説のようになっていました。英語の翻訳も二種類買ってみたのですが、一方は叙事詩の形式でもう一方は散文の形式でした。内容はトロイヤ戦争の中で大将アガメムノンとアキレウスが仲違いしてアキレウスが戦闘から身を引いたためにトロイヤに反撃されて船を焼かれる瀬戸際までいったところアキレウスの親友のパトロクロスがアキレウスの甲冑を借りてトロイヤに反撃しうっかり深みにはまってトロイヤの大将ヘクトールに殺されてしまったためにアキレウスは嘆き苦しむのですがそれでもアガメムノンは許せないので戦闘には復帰せず再びトロイヤの反撃によって大勢の死傷者が出てしまいアキレウスはなんども戦闘復帰を求められるのですがアガメムノンがいよいよ本気でアキレウスに譲歩して許しを求めてようやっとアキレウスは新しい甲冑をあつらえて戦闘に復帰しあっという間にトロイヤ軍に反撃しヘクトールを追い詰めていきアポローンに守られていたヘクトールも最終的にアキレウスとの一騎打ちで打ち果たされてアキレウスは親友のパトロクロスを殺された恨みからヘクトールの死体を引きずり回しヘクトールはアポローンのおかげで命は救われなかったが死体の損壊は免れたアキレウスはそれでも飽き足らずに死体を陣営に持ち帰ってさらに復讐を続けようとしたため大切な跡取りを殺されて嘆くヘクトールの父親は何もかもが投げ捨ててアキレウスの元へ死体の返却を求めに行き親子の情愛を訴えるうちにアキレウスはその頼みを聞き入れトロイヤの城内でヘクトールは手厚く葬られる。というところまでがイーリアスの話です。戦争に至る経緯や戦争の初期の様子や戦争のその後の経緯はイーリアスではいっさい触れられていません。全体としても分量の多い戦闘場面では兵士が次々に殺されていく様子が凄惨に書かれていてしばしばげんなりします。決してあっさりとしたものではありません。そのつど親兄弟や家族の話が個別に語られて二度と戻れない死が具体的に書かれています。そのためたいへん残酷なものになっています。神々が人間の殺し合いを牛耳っているように書かれていますが人間の方も神々とは縁続きだったり神が戦闘で怪我したりなどという事態も起こります。全体としてはトロイヤの敵側のアカイヤの側をひいきに書かれているので判官びいきの読者はトロイヤ側を応援したくなります。戦争のその後はアキレウスが死んだり巨大な木馬の作戦でトロイヤが壊滅したりといった話が有名ですがホメロスの作品ではそのような話は出てきません。全部終わってからアカイヤの将軍たちが帰還する中でオデュッセイアがあちこち放浪してしまいようやっと帰還して留守中に起こった事件を片付けるというのがもう一つの作品であるオデュッセウスです。イーリアスの後の話を読みたい場合はホメロスの千二百年も後の西暦三世紀に書かれたクイントゥスによる続編があります。戦争の原因となったヘレネー誘拐事件に関しては西暦六世紀に書かれたコルートスの短いものがありますので読んでみました。神話風景画の主題としてよく出てくるパリスの審判などが簡単に書かれています。イーリアスは全体としては背景に神話があるのでそれも了解しておくためには古いものではアポロドーロスがあります。これはあまりにも簡潔に書かれていて素っ気ないのですが一番古いものです。少し脚色されているものではローマ時代にラテン語で書かれたヒュギーヌスやオウィディウスのものがあります。この辺りはまだ読んでいません。とりあえず手っ取り早く把握するためにトマス・ブルフィンチのギリシャ・ローマ神話を読みました。これは子供の頃にも読んでいたのですが完訳版を改めて読んでみたらイギリス文学に出てくる神話に関する部分を理解するためというはっきりと限定した目的のためのもので単なる通俗本ではありませんでした。ちなみにこの本は神話の時代というのが原題でギリシャとローマに続きペルシャやインドや北欧神話について書かれていて特に北欧神話が面白くてついついそちらの方へ脱線したくなりました。計画ではホメロスのオデュッセイアを読むのが当面の目標です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?