「NHKスペシャル 混迷の世紀2023」が衝撃的だった話。
2023年の元旦に放送された「NHKスペシャル 混迷の世紀」が衝撃的だったので、自分の理解を深めるためにもまとめておこうと思う。
番組では、経済学者・政治学者・ジャーナリストなど、7人の有識者のインタビューから現在の世界の状況、今後予測される国際社会の動向が語られている。
実際の映像では、それぞれの有識者の方々の実際の言葉や話ぶりから感じ取れることも非常に多いため、ぜひ配信などでもご覧いただきたい。
また、以下は私のまとめとして、認識違いや実際の番組とは順が変わっている点もあることはご容赦いただけると幸いである。
【ウクライナ侵攻の現状と今後の国際社会の動向予測】
▼ウクライナのジャーナリスト アレクシェービッチ氏
ロシアでは情報統制がなされ、ロシア市民の意識としても戦争が肯定されつつある。(戦地にいる兵士よりロシア国内にいる市民の方がニュースなどの影響で戦争に肯定的)
ロシア国内から戦争反対の世論が起きにくいため、ウクライナ戦争は2023年中続くだろう。
▼アメリカの政治学者 イアン・ブレマー氏
今回の侵攻により、ロシアの国際的な評価は下がっている。
一方、アメリカと発展途上国の間にも溝ができている。これはコロナ禍において発展途上国の経済的な問題には支援しなかったアメリカが、ウクライナ侵攻には支援しているため、アメリカの姿勢に不信感が高まっている。
ロシアが弱体化し、アメリカが世界の警察ではなくなったことにより、今後地域紛争が増えるだろう。
【世界秩序を取り戻すために・・・】
ーーこのあたりは素晴らしい内容だったので、特に動画でご覧いただきたいーー
▼フランス元外相 ユベール・ヴェドリーヌ氏
1992年の旧ソビエト崩壊から、欧米はロシアに対して高慢な態度を取ってきた。
2008年のNATO首脳会議で、アメリカはウクライナのNATO加盟を画策。これはロシアに対する挑発で、ここからロシアの欧米に対する不信感が生まれた。
ロシアによる侵攻にストップをかけるために、冷戦期のアメリカとロシアの関係にヒントがある。
(今はタイミングではないが)ロシアと向き合うこと。冷戦時代でも価値観の違うロシアとも対話の窓口を開いておくことが重要だった。
また、日本を含めた諸外国は、アメリカと同盟国でありながらも発言権と自主性を持っておくことが重要。
2001年イラク戦争時、フランスでは同盟国だが同調はしないという立ち位置を取り、平和的に解決すべきとして戦争に反対し続けた。
▼アメリカ元駐ソ連大使 ジャック・マトロック氏
(1985年から核軍縮交渉を行ったレーガン大統領を補佐していた人物。
その後1987年にアメリカと旧ソ連にてINF中距離核戦力全廃条約が締結される。)
今後の国際情勢の解決に向けて、冷戦時のアメリカ レーガン大統領と旧ソ連 ゴルバチョフ書記長の対話に学ぶことがある。
当時、レーガン大統領とゴルバチョフ書記長が個人的・率直に対話が持てるように、機会を設定していた。そうした裏ルートが重要。
たとえ同意できなくても、相手の話に耳を傾け、何を伝えようとしているかを理解することが大切。
ゴルバチョフ氏の政治基盤はどこで、どんな圧力に晒されているかを伝えていた。
対話をなくせば、外交のチャンスがなくなってしまう。
他の国の指導者を公に悪者扱いしてはならない。
その行動にどんな意味があるかを理解する必要がある。
当時のレーガン大統領は、「勝者と敗者と言う話をしない」として交渉に臨んでいた。それは核兵器は全人類にとっての脅威なのだから、相手より多くの核兵器を諦める方が良いことであるという考えからである。冷戦の終結は、勝者と敗者ではなく、平等で両国の利益になるためのものだった。
▼国連事務次長 中満泉氏
「国際政治の状況や誤算によって、核兵器が使用される危険性がある」ということが、受け入れ難いレベルで高い状況になっている。
さらに「国を守るためには核が必要なのだ」という核拡散の新しい言説が出てきてしまうことは大きな懸念。
今だからこそ核軍縮をすべき。核軍縮は理想論ではなく、安全保障のツールの一つである。
【今後のエネルギーや食料問題】
▼経済アナリスト ダニエル・ヤーギン氏
短期的には原油高の影響でロシアは利益を得るが、1・2年経つとヨーロッパへのエネルギーの供給がなくなり、代わりに中国に依存しないといけなくなる。
脱炭素化には鉱物や銅が必要。銅の需要が2倍に増え(チリとペルーで採掘されるが、両国では新たな採掘に対して反対意見がある)、鉱物は中国がほとんど製品化している。
脱炭素化にはエネルギー転換と新たな地政学、中国との緊張関係といった課題がある。
▼経済学者 ジャック・アタリ氏
気候変動や水不足・戦争の影響で世界的に食料事情が厳しくなっていく。
2023年・2024年には問題が表出し始め、15億人以上に影響が及ぶ食糧危機が予測される。
日本でも農業人口が高齢化し、生産できなくなるだろう。食料自給率が低い日本では、農家の育成や農家を魅力的な職業にする(社会的・収益面といった農業政策の転換など)ことが重要。
食糧危機に対応するため、食生活の変化(昆虫や雑草などを取り入れ、牛肉の消費を減らす)も必要になってくる。食料は健康・文化の礎と捉えて、すぐにでも行動を起こすことが求められている。
【日本で暮らすわたしたちに何ができるのか】
▼国連事務次長 中満泉氏
ぜひ国際的な課題を身近なところで話し合ってほしい。
日本は島国なので、国際社会の問題を感じる機会が少ないかもしれないが、世界全体が危機的な状況に立たされている。自分ごとして捉え、解決するために何ができるのか、話し合っていく・行動に移していく。そういった行動が国際社会の課題解決につながる。