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黒木一家のファストミステリ集_夜道のひったくり

夜道のひったくり

 夕方陽が沈み、辺りがすっかり暗くなったころ、黒木サトシと高田ケンジは二人で家路を急いでいた。
「ヤバい。もうこんな時間か。二十一時からのドラマに間に合わないぞ。こっちの道は真っ暗だからあんまり通りたくないんだけどな。今日は仕方ない。なぁ、サトシも一緒にこっちの近道で帰ろうぜ」高田ケンジは少し声を震わせ黒木サトシに言った。
「この近道なんだけど、幽霊が出るって噂があるよ。まぁ、二人だし大丈夫だとは思うけど」黒木サトシが言うと、高田ケンジは少しためらったが、最終的に二人は近道をすることにした。

 街灯は数百メートル置きに設置してあるため、数メートル先がかろうじて確認できる程度で、その先を目視することは出来なった。
「やっぱり、やめたほうが良かったかも。引き返そうかな」高田ケンジが言うと前方から悲鳴が聞こえた。
「誰か。助けて!」二人は急いで悲鳴が聞こえた方に向かった。
 悲鳴が聞こえた場所では二十代後半の女性が尻もちをついていた。
「ひったりくりよ。バッグを盗られたわ。ビックリして、腰を抜かしたみたい。捕まえてくれないかしら。顔は見えなかったけど、体格がしっかりとした男性だったわ」女性にそう言われると高田ケンジは答えた。「任せてください。足には自信があります。よし、サトシ追いかけるぞ」そう言って二人は道なりに走り始めた。

 カーブを少し曲がったところで、大きなエナメルバッグを左肩にかけ、耳にイヤホンを付けた二十代前半と思われる男性が、右肩を抑えながら歩いていた。高田ケンジは道が暗かったのでぶつかりそうになったが何とかかわした。
「すみません。体格がしっかりした不審な男性をみませんでしたか?」高田ケンジは男性に尋ねた。
「ついさっき不審というか、失礼なやつが走ってとおり過ぎていったよ。後ろから肩をぶつけてきたのに誤りもせずに走り去っていったんだ。不審と言えば女性ものの淡いピンクのバッグを持っていたな。全く変な奴だったよ」男性は不機嫌そうに、耳に付けていたイヤホンを外して答えた。
「暗くて全然前方に人がいるかわからないけど、まだ遠くまでは行ってないかもしれない。急いでそいつを追おう」高田ケンジがそう言って先を急ごうとすると黒木サトシが手で制止し、男性に尋ねた。
「すみません。あなたのエナメルバッグの中身を見せてもらえませんか?」



【問い】
黒木サトシはなぜ男性を疑っているのでしょうか。






【解答編】
 「この暗闇のなか、なぜ不審者が持っていたバッグを淡いピンクと断定できたんですか?」黒木サトシがそう言うと男性は逃げ出そうとしたが、高田ケンジに取り押さえられた。



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