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蚊遣り豚の歴史

夏になると蚊に悩まされることが多くなり大変ですね。
現在は蚊取り線香を始め、様々な虫除けの手段がありますが、昔はそうではありませんでした。

蚊取り線香には除虫菊の成分が含まれていますが、除虫菊が海外から輸入され始めたのは明治時代以降のことです。ですので蚊取り線香は比較的新しい虫除けの道具だと言えます。

蚊取り線香が登場する以前は蓬や松の木、枯れ葉を燃やしたり燻したり蚊を追い払っていました。

その際に活用されたのが蚊遣り(かやり)という置物です。
蚊遣りの中で起こした煙を使って虫除けをしていました。

今ではこのような虫除けの手段を取ることは少ないと思いますが、蚊遣りは現在でも見かけることがあります。

よく知られているのが豚の形をしたものです。

これは蚊遣り豚と呼ばれ、時折蚊取り線香を入れるのにも使われているものを見かけることがありますが、日本の夏の風物詩の一つとも言えます。

なぜ豚の形をしているのかは諸説あるようですが、江戸時代には既にこの形が使われていたようで、幅のある徳利のようなものを横にして、それを豚のように飾り付けした蚊遣りが残っています。
このようなものを見ると、徳利を横向きにしただけでは味気ないからという単純な遊び心から生まれたものなのかな、とも思います。

また日本六古窯の一つでもある、常滑焼の産地である愛知県が豚の蚊遣りのルーツであるという説もあります。

この地域の養豚場で豚につく蚊に悩まされていたところ、常滑焼の土管の中で蚊取り線香を焚いて追い払うようになりました。

この時、土管だと煙を出すのに口が広すぎるので、それを窄めて豚の形にして使うようになりました。これが常滑焼のお土産として人気が出て全国的に広まったのが豚の蚊遣りが普及したきっかけだというものです。

現在では同じく東海地方の三重県四日市の萬古焼の蚊遣りが有名で国内産の蚊遣りはほとんどが萬古焼だそうです。

萬古焼は四日市を中心として江戸時代に登場した焼き物で、途中100年ほど中断しますが復活し、現在では三重県の有名な特産物の一つとして知られています。

萬古焼は半磁器と呼ばれ、磁器と陶磁器の両方の性質を備えているのが特徴です。ちなみに萬古焼は蚊遣りのみでなく、土鍋も国内のシェアの80%をしめているそうです。
耐熱性が高く壊れにくい半磁器の特性が蚊遣りや土鍋といった用途に適している訳ですね。

土地の特徴を活かしてそれに適したものを作り上げるのは日本の伝統技術の強みです。

そうした各地の特徴ある名産品を訪ね歩く旅も楽しいのではないでしょうか。

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