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ショートショート「イパスは泣いた」
悲しいとハハハと泣き、楽しいとシクシクと笑う
「クーナ」という島があった。その島は自然豊かで島民全員で仲良く暮らしいている。
ある冬の寒い日、島民の一人が海岸で漁の作業をしていると、意識がない状態で倒れている青年を見つけた。急いで島の病院に連れて行き手当をしてもらった。
彼の意識が戻り話を聞いていると彼の名は「イパス」そしてクーナの敵対している島ラーフの住人であることがわかった。
残念なことに歴代クーナの島民はラーフの人間を捕らえると処刑していた。
役人はすぐに処刑台に連れて行こうとしたが
「ハハハ、彼の身体はまだボロボロだ。処刑するにしても完全に治ってから処刑してあげてくれ。」と涙を流しながら医者がお願いをするので役人はそれを認めイパスは手当を受けた。
3日後、元気になったイパスは腕を後ろに縛られ観衆が見守る中、処刑台に連れられた。
イパスに対し「何か最後に言い残したことはあるか?」と処刑人が聞くとイパスは
「シクシク、一度助けていただきありがとうございました。」と泣きながら感謝した。
「最後に何ヘラヘラしてるんだよ。言いたいことはもうないんだな?」と処刑人がいうと手に持った刀を大きく振り上げた。
「待ちなさい。」そこにクーナの女王がやってきた。「ハハハ。いつまでラーフとこういう関係を続けるの?ハハハ。彼はこの国に戦いに来たのではないのよ。人権はないの?」女王が泣いて訴える。
すると観衆がみな「ハッハッハー。ハッハッハー。」と大泣き。どうやら皆ラーフとの、この関係をどうにかしたいと心では思っていたようだ。
女王に助けてもらったイパスは、それからどこに行くにも女王と共に。
すると最初は受け入れられなかった島民も心開いていき、そこから楽しく暮らした。
5年経ち女王の誕生祭、島全体でお祭り騒ぎ。
酒を飲んで踊ってシクシクと盛り上がる。島がシクシクと笑ってるみたいだ。
みんなと仲良くなって、みんながシクシクと大笑いするなか、イパスはハハハと笑っている。感情は内から出るもので、みんなと同じようにシクシクと笑うことはまだできないようだ。「ハハハあー楽しい、僕クーナに来て良かったよ。」
次の日、女王が原因不明の急死をした。昨日まであんなに元気だったのに死んだ。
すぐに葬儀が行われ島中の島民が集まった。
島民全員が泣いた。ハハハと泣いた。ハッハッハーと大泣きした。島がハッハッハーと泣いているみたいだった。
イパスも同じように泣いた。
「はっはっは。はーっはっは。任務完了。」そう言ってイパスは笑顔でクーナを後にした。