私は彼が嫌いだ。
ある時、モンスターに街が襲われた
この世のものとは思えないほどの
憎悪を具現化したかのような
どんな言葉で表すべきか
いや、現存する言葉で表せないから
モンスターと呼ばれるのだろうか
数々の街を壊し、暴れ回った
モンスターはこんな要求をしてきた
誰か1人、勇者を求む
私を倒してみろ、、、と。
もう100人は挑戦しただろう
もう無理だ、全員がそう感じた
そんな時、その男が動き出した
彼はずっと近くの野次馬の集団にいた
こんなモンスターを目の前にして
スタバのフラペチーノを飲んでいた
「仕方ねぇなぁ」
そう呟いた。
彼は持っていたものを放り投げ
モンスターのところへ走り出した
勝負は一瞬だった
この男、こんなにも強いとは
彼はみんなのヒーローとなった
誰もが祝福し、彼は人気者となった
世界中が拍手した
彼は謙遜するばかり
そこも好かれる理由だろうか
彼は警察に保護され、
モンスターも研究対象として政府が持ち帰った
これにて平和が戻った
生まれてきてから、
こんな事件が起こるとは思ってもみなかった
私の働いているお店はガラス張りになっている
お店の前に群がる野次馬の隙間から
一部始終見てきた
私は彼が嫌いだ
誰がどう考えたってヒーロー
誰もが彼に惚れた
素晴らしい人だ
この街はこの事件で有名になった
私はそんな街でコーヒーを作っている
私はスタバの店員
私は彼が嫌いだ
飲みかけのフラペチーノを放り投げる
そんな彼が嫌いだ
-end-