焼石岳
焼石岳。時々、足の踏み場に悩むような湿地帯や、体にビシビシぶつかる竹藪のトンネルがあった。人間用に手を加えて整備されている山より、自然の中に人間がお邪魔させてもらっている感のある山の方が好きだ。
頂上からは水墨画みたいな雲や山が広がっていた。なかでも鳥海山は一際存在感があった。
50代くらいの男性が下山を始めそうな場所で立ち止まっていて、私もしかして邪魔かなと思い「どうぞ」と道を譲ろうとしたら、その方は遠くの景色に目を向けたまま首を振り、「名残惜しくて」とこぼした。
その素敵なおじさんの件を報告したら、「名残惜しいという言葉、我々には出てこないですよ。絶対その人国立大出てますよ」と不思議な持論を展開してきて笑った。