マジカルミライ2019事前レポート
(※ネタバレなし)
(※筆者のホテルを出る時刻が来てしまったため,後半はセトリ予想のみとなっております_(:3」∠)_)
人は飽きっぽい生き物です。
でも,この時に感じる高揚感だけは,ずっと変わらないように思います。
灯りが消え,コールが叫びに変わり,ついでそれまでよりもひときわ大きくもっと熱を帯びてコールが再開されたときの,声と姿への渇望が身体中を駆け巡るあの高揚感です。
「ぶん殴られた」という表現がライブパフォーマンスを評して使われることがあります。
オーディエンスのテンションを急激に突き上げる楽曲が,特にライブの冒頭に,大方の不意を突いて演奏されたとき,感情の突発的な変化を語気に込めて,こう言われます。
同質だけれどもずっとデカい,半年ぶりの衝撃。
会場に残る破裂しそうなほどの音の質量が,無骨なエレキギターの音で切り裂かれていきます。
チェーンソーのようにパワフルで,しかも台風の大風のように抗えない,大きなグルーヴが会場を覆います。
VOCALOID楽曲の魅力は,なんでもありなこと,ジャンルの垣根がないこと,なのではないかと感じられます。
一方で不思議なことに,「いかにもVOCALOIDらしい」という,いわく言い難い風情を放つ楽曲群もあるように思います。
vocaloidivity? vocaloidness?
共感覚の体験とまではいかなくとも,音が色を持った,あるいは色が音を持ったような楽曲にたまに出会います。
その音にはその色しかない,その色を見たらその音が聞こえてくる。
互いを引き立て合う音と色のランデブーが,会場に染み渡ります。
-MC-
初音ミクという存在自体がそうであるように,どこか知らない世界に誘ってくれる楽曲が,Vocaloidシーンにはたくさんあります。
強引に手を引く曲もあれば,沼に足を取られたように気づくと離れがたくなっている曲もあります。
そして,そっと優しく手をとって,まるのまま抱擁しながら,まるでそんな気はないかのよう心を奪う曲も。
いつの間に私の心はこんなに魅了されてしまったのでしょうか。
これも遠大な計画のごく一部なのでしょうか。
柔らかな誘いの後は,弾けるような祝祭が幕を開けます。
https://www.youtube.com/watch?v=AufydOsiD6M
それこそ魔法のような。
ざらつきながらも清々しいシンセの音色が,甘い夢のような世界から私を今ここに引き戻します。
どんなめくるめく虚構の世界も,恋した女性の圧倒的な熱量の前では霧散してしまいそうです。
魔法のような願いを込めるという意味では,お互い似たり寄ったりなのかもしれませんけれど。
うたうということは,祈ることに似ているような気がします。
叶いがたい思いを歌に託す自らに照らして,そう思います。
何者でもないという無個性と鮮烈な声色が,彼女をどんなことも投影することのできる透明な存在に見せているような気がします。
そうでありながらこの力強い歌声は,単に依り代となる儚さではなく,歌の名のとおり,不滅を表しているように感じられます。
彼女に何かを託すというのは,自分のなかの何がしかを単に押し付けていくということでしょうか。
たぶん,それもあるでしょう。
しかし,彼女の記憶に残したいことのなかには,感謝や言祝ぎが多くあるはずです。
歌うことが彼女の喜びであり続けて欲しいから。
荘厳さすら醸し出す一連の楽曲群から一転,ポップでキュートという言葉がそのまま音になったようなメロディが聞こえてきます。
-バンドメンバー紹介-
待ってた。
予想を裏切る曲,という表現がよくされます。
次の曲もある意味そうで,ある意味そうではありません。
イントロのギザギザなギターリフが,驚くほど自然にそのあとのEDM的なサウンドに溶け込んでいきます。
唯一無二の音が初めてマジカルミライの会場を満たします。
リバースユニバース
https://www.nicovideo.jp/watch/sm31843582
-アンコール-
彼は,絶望なんかしていなかったのではないでしょうか。
https://note.mu/furukawan/n/n8a5ef47b9245
テーマ曲の熱狂を静かに鎮めるように,芯のある,しかしどこか物悲しい,ずっと遠くで鳴っている鐘の音のようなおずおずとしたピアノの音が,いくぶん控えめに聞こえてきます。
初音ミクの歌が,初音ミクの歌足りえたのは,無限にも見えるクリエイティビティと,彼女が彼女だったからです。
無であるがゆえに無二であり無限である,そんな初音ミクの歌があります。
やはりピアノの音です。
音は,電子音的な震えを伴っています。
まだ見ぬ未来を恐れるような,それでいて黎明を告げるような,いくぶん頼りないような,であるからこそ身軽なような,浮き足立っているような,同時に好奇心ではちきれそうな,そんな音が響きます。
彼女を前にした時感じる胸の高鳴りをそのまま表したような,はるか彼方へと続いていく歌です。