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2025年 立春
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ぼくだけの朝を探している。それは無味無臭で尖ったところがない。見つけにくいに違いない。時計をみつめても朝に気づくことがない。朝の正体は空間だから、待てばやってくるものでもない。ぼくは歩き続けるしかしかたない。いつか朝にたどり着いた時、ぼくはその軽さに耐えられないかもしれない。それでも、ぼくだけの朝を探している。雑踏へと運ぶ電車に乗って。
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冷え込んだ朝の電車。架線とパンタグラフの間に火花が飛ぶ。バチバチと激しい音を鳴らしながら。それが電車の怒りに思えてしまい、申し訳ない気持ちで電車に乗る。そういえばぼくだってこの電車に乗りたくて乗るんじゃないのになとか思いながら。それでもぼくは仕事に向かうし、電車は走る。どうすることもできないレールの上を走っている。
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マイナス十五度の空
音がどこかへ行ってしまった春
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立春を歩く
決められたとおりに歩く
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いつまでも待ち続ける決意さえ
青く白く凍えてゆくんだね
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すれ違うことも許されないのなら
昼間の月に気づくのは罪
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どれだけの影を見送って
歩き出す決意を待っている
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どこへでも行けると思っていた
どこかには行けないと空をみた
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見られたくない闇なんて誰にでもあるし
こうして朝もくるんだ
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もうきみは忘れてしまっただろうけど
ひまわりはまだひまわりのまま
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ぼくの冬を灯している
空を見失わないように
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ぼくがどんどん伸びてゆく
誰に見られることもなく
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ぼくたちは1秒ちょっと前の月を見ている。金星は8分前、木星は30〜40分前。惑星以外の星になると、ぼくの元に辿り着くまでとてつもない時間をかけている。そして、星はその光を受け取っている人のことを知らない。
ぼくのことばはどれだけの時間をかけてあなたに届くのだろう。受け止めてくれたあなたが、そのことばであなただけの星座を紡いでくれていたとしたら、こんなに嬉しいことはない。
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二十代なかば頃のはなし。ある日曜の夕方、ペットショップの水槽がとても眩しくみえた。暗くなりかけた世界のなかでその水槽が別世界のように思えた。また一週間がはじまるというときにそれは救いをもたらしてくれそうな存在だった。
ぼくはネオンテトラを十匹ほど買った。生き物の衝動買いは良いことではないけれど、水槽や必要な装置は家にあったからなんとかなるだろうと思った。そしてぼくと熱帯魚の生活がはじまった。
その生活は三年ほど後に突然終わりを迎えた。朝目覚めると、水槽はお風呂になっていた。。機器の故障かぼくの設定誤りか、いずれにしてもぼくの責任だった。彼らはぼくに癒やしを与えてくれる存在だったけれど、彼らからみるとぼくは神のごとき存在だった。ぼくにはその自覚がなかった。