
【なぜセールスフォースの承認プロセスは日本企業の業務に適しないのか?】~Spring '25のFlow Approval Processesはどこまで課題を解決できるか?~
はじめに
Salesforceは、世界中の企業で利用されているクラウドベースのCRMプラットフォームですが、日本企業の稟議(Ringi)や合議制といった独特の意思決定プロセスにはフィットしないと感じられるケースが多くあります。しかし、Spring '25から導入されたFlow Approval Processesが、この課題をどこまで解決できるのかを徹底検証します。
1. 日本企業の意思決定プロセスとの不一致
(1) 日本の「稟議(Ringi)」文化
日本企業では、稟議書を回覧して関係者全員の承認を得る「合議制」が根付いています。このプロセスでは、並列承認(Parallel Approval)や全員承認が求められることが多く、各承認者が合意して初めて決裁が下りるのが特徴です。
Salesforceの課題
Salesforceの標準承認プロセスは**Sequential Approval(逐次承認)**を前提としており、全員承認を実現するのが難しい。
各承認者が独立して承認または拒否を行うため、日本企業特有の合議制にはフィットしません。
Spring '25 Flow Approval Processes での解決策
✅ Parallel or Sequential Approvals
Spring '25 では、Parallel Approval(並列承認)が可能になり、全員承認や合議制を再現できます。
OrchestratorとBackground Stepsを活用することで、複数の承認者が同時に承認し、全員の承認が揃った場合にのみ次のステップへ進むというプロセスが構築可能です。
例: 日本の稟議フローの再現
Orchestrator を使用して、「合議」ステップを設定。
Background Steps で並列に承認を実行し、すべての承認が揃った場合にのみ次のステップへ。
承認の状況はメール通知で随時共有され、承認者間の透明性を確保。
(2) 「根回し」と「相談」の重要性
日本企業の意思決定には、正式な承認を取る前に**非公式な合意形成(根回し)**を行う文化があります。しかし、Salesforceの従来の承認プロセスでは、事前に相談や調整を行うステップを設けることが難しいです。
Spring '25 Flow Approval Processes での解決策
✅ Background StepsとOrchestratorの活用
承認前の事前相談フローをBackground Stepで設定可能。
Orchestrator を用いて、「相談」ステップを追加し、相談完了後に正式な承認フローへ進行。
SlackやChatter連携を用いた事前相談の実施も可能。
2. 柔軟な承認ルール設定が難しい
(1) 動的な承認者選定の難しさ
日本企業では、承認ルールが予算額や組織階層に応じて動的に変化することがよくあります。例えば、「予算が1,000万円以上なら部長、5,000万円以上なら取締役」というルールです。
Spring '25 Flow Approval Processes での解決策
✅ Dynamic Approver Assignment
Amount__cなどのフィールドに基づいて動的に承認者を選定可能。
OrchestratorとFlow Builderを連携させることで、条件分岐を用いて適切な承認者を自動で選定します。
例: 金額に応じて部長・取締役のどちらかを自動選定。
(2) 承認後の修正や追加承認の困難さ
日本企業では、途中で条件が変わった場合、追加の承認を求めることがあります。しかし、従来のSalesforceの承認プロセスでは、一度承認が完了した後に承認ルートを変更することができません。
Spring '25 Flow Approval Processes での解決策
✅ Spring '25 Approval Enhancements
承認プロセスの再開始や条件変更による動的な承認者再選定が可能。
Orchestratorを用いた条件変更の検知と承認ルートの動的再設定。
例: 予算が修正された場合、再度の承認要求を自動でトリガー。
3. UI/UXが業務に馴染みにくい
(1) 外部ユーザーを巻き込めない
日本企業では、取引先やグループ会社との承認フローが重要です。しかし、Salesforceの従来の承認プロセスは内部ユーザーのみが対象であり、外部ユーザーを巻き込むことができません。
Spring '25 Flow Approval Processes での解決策
Experience Cloudとのシームレスな連携が可能。
外部ユーザーも含めた承認フローを構築可能。
メールリンクを用いた承認依頼の外部送信と承認結果の収集が実現。
4. 日本特有の業務要件に対応しにくい
(1) ハンコ文化
日本では、**決裁には印鑑(電子印)**を押すプロセスが根付いています。
Spring '25 Flow Approval Processes での解決策
DocuSignやAdobe SignとのAPI連携による電子印鑑の実装。
Orchestratorと連携して、電子印鑑の承認ステップを追加。
まとめ:Spring '25 Flow Approval Processes の可能性
Spring '25のFlow Approval Processesは、従来のSalesforceの承認プロセスでは対応が難しかった日本企業特有の業務フローに対して、次のような点で大幅に改善されています。
✅ 解決できる課題
Dynamic Approver Assignment: 金額や条件に応じた動的な承認者選定が可能。
Parallel or Sequential Approvals: 日本の合議制を再現する並列承認が可能。
Spring '25 Approval Enhancements: 条件変更時の再承認や承認フローの再開始が可能。
Salesforce Flow Approval Processes (Spring '25) は、日本企業の承認フローに更なる可能性をもたらしています。🚀