AgentforceとAtlas Reasoning Engineについて解説
近年のDreamforceでの発表の中でも、AgentforceとAtlas Reasoning Engineの登場は特に注目されています。これらの技術は、SalesforceプラットフォームにおけるAIエージェントの活用を大きく進化させるものであり、業務効率や顧客体験を根本から変える可能性を秘めています。本記事では、AgentforceアーキテクチャーとAtlas Reasoning Engineの役割について掘り下げて解説します。
Agentforceの概要
Agentforceは、組織が自律的なエージェントを構築し、業務部門横断的に活用するためのフレームワークです。Sales、Service、Marketing、Commerceなど、各アプリケーション内でAgentforceを使用することで、特定のタスクに特化したエージェントをクリック操作だけで簡単に設定できます。
Agentforceの構成要素:
Agent Builder
Agentforce Studioの一部であるAgent Builderを使用して、エージェントを自然言語で構成できます。「夢を語るように」設定が可能というSalesforceの理念に基づき、直感的なUIが特徴です。エージェントの名前やアバター設定
テスト運用ができる右側パネル
チャンネル(Email、WhatsApp、音声など)の指定
Topics(トピック)
エージェントがアクセスできる情報範囲を決定する重要な要素です。例えば、注文管理トピックを追加すれば、注文履歴データへのアクセスや商品仕様変更のリクエストが可能になります。Actions(アクション)
トピックに紐づいた具体的な処理手順です。Flow、Apex、またはMuleSoft APIを活用してエージェントのアクションを設定可能です。
Atlas Reasoning Engineの役割
Atlas Reasoning Engineは、Agentforceの「頭脳」と呼ばれるAIエンジンであり、エージェントの意思決定と学習を支えています。以下のような重要な機能を担います。
計画生成と評価
エンジンは、与えられたタスクに基づいて計画を立案し、必要に応じてデータを追加参照しながら計画を洗練します。たとえば、顧客からの問い合わせに応じて適切なビジネスプロセス(例:Flow)を選択し、リアルタイムで対応を行います。データ取得と最適化(Advanced Retrieval Mechanics)
Data Cloudとの連携により、大量の構造化データ(例:Salesforceレコード)や非構造化データ(例:音声メモ)を活用可能です。この仕組みにより、適切な情報を迅速に検索・取得し、回答の精度を向上させます。ガードレール(Guardrails)
エージェントができること・できないことを定義するポリシーです。これにより、エージェントが担当外の業務を人間に引き継いだり、追加の質問を行ったりすることで、対応品質を維持します。
Data CloudとAgentforceの連携
Data Cloudは、Salesforceエコシステムの基盤として、Agentforceに不可欠なデータを提供します。特に、以下の3つの方法で外部データを取り込み、エージェントの対応力を強化します。
Data Cloud Ingestion
定期的にデータを取り込む設定。Zero-Copyアーキテクチャ
外部システムからデータを物理的に移動せずに仮想化して利用。MuleSoft API
外部APIを介してデータを取得。
Retrieval Augmented Generation (RAG):
AtlasはRAG技術を活用し、Data Cloud内のデータを参照してエージェントの回答を補強します。これにより、エージェントはより的確な対応が可能になり、業務効率が向上します。
まとめ: AIエージェントがもたらす未来
AgentforceとAtlas Reasoning Engineの登場により、Salesforceプラットフォームはさらなる進化を遂げようとしています。これらの技術は、人間のチームとAIエージェントが協働する新たな働き方を可能にし、企業の生産性や顧客満足度を飛躍的に向上させる可能性を秘めています。
Salesforceが掲げるAIエージェントの未来に、私たちは大いに期待を寄せるべきでしょう。次世代のビジネス環境でAgentforceがどのように役立つか、今後のアップデートにも注目していきたいと思います。