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1日も早い回復を ヨガ友さんへ

「東山さん(仮名)って最近合わないんだけど」


「東山さん。。。実は。。。」

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私がヨガスタジオに通い始めたのが6年半ほど前。
同じ時期に東山さんも入会された。

年齢を聞いたことはないのだけどコロナ禍でのワクチン接種を優先枠で
受けていたので60代だと思う。

誰でもそうだけど入会した当初はレッスンについていくのがやっと。
身体に負荷の少ないリラックス系のクラスでもちょっと大変そうな感じ
だった。



いつもスタジオの窓側にマットを敷き身体をほぐしながらレッスンを待
つ東山さん。

入会した時期が近く、またよく隣にマットを敷くことがあったのでお話
しをする機会も多々あった。


仕事は趣味程度に週2日。
デパートにテナント出店している衣料品店でパートとして働いていた。

スタジオには週に5日足を運んで練習に励み楽しんでいた。

「最初は難しく感じてたんだけどヨガって無理なく練習できるしだんだん
身体が変わっていくでしょう? 柔軟性を取り返しているなとか深く呼吸
ができるようになったなとか。小さな変化の積み重ねが楽しいのよね」と
東山さん。
同感だ。

「ポーズがどんどん綺麗になってますよ」と私が伝えると
「本当?そう言ってもらえると嬉しい。でもね、私、年齢が年齢だから耳
 が遠くなってきちゃってね。耳鼻科の先生からはバランス感覚が少し落
 ちていくかも、、、なんて言われてしまいまして。その影響でバランス
 系のポーズが苦手なの。耳が遠くなっているのもわかってて先生の声が
 ちょっと聞き取りにくいの」と笑顔で話す東山さん。

そういえば東山さん、先生が「右手を上げて~」と指導しているのに左手
を上げていたり指導とは全然違うポーズをとっていることあるなぁ~。
それは耳が原因だったのか。

でも片足で立つバランス系のポーズなどは以前はグラグラして危なっかし
かったけど揺れが少なくなり「足を下して~」と言われるまでポーズを維
持できるようになっていた。

「努力。。。というかヨガって楽しいのよ。気が付くとスタジオに来てる
 し練習が楽しい。だから努力とはちょっと違うかも」
「そうですよね。楽しんでいる間にできなかったことができてきたり、身
 体が柔らかくなっていたり」
多少の差こそあれヨーガをしているもの同士。
同じ過程を経験しているので話が弾む。


「いつも話しかけてくれてありがとうね。私、耳が遠いでしょ?だから時
 々あなたの声に反応してないことがあるかも知れないなって」と心配そ
うに話す東山さん。
続けて
「先生に近い1番前の列に座っているのも先生の声がこれ以上聞こえなく
 なってしまうとね。本当、いやになっちゃうわよ」と苦笑していた。
「それでいつもこの場所にマットを敷いているのですね。もっと聞き取り
 やすくするために真ん中に来ちゃえば?」と私がからかうと
「それは~。恥ずかしいわよ~」と笑う東山さんだった。

それからはやや大きな声で話しかけるようにした。

そんな東山さんをスタジオで見かけなくなって数か月。
気になったので店長に東山さんのことを聞いてみたのだ。

「先日東山さんから電話があって職場で転んで足を骨折してしまったそ
 うなんです。回復までにかなり時間がかかるらしくスタジオから一旦
 退会しますって。ほぼ毎日いらしてたのに残念なのですけどね」と店
長。
「そうだったんだね。残念だけどまずはケガをしっかり治して欲しいよ
 ね」

年齢を重ねてからヨーガと出会いスタジオでもオンラインでもコツコツ
淡々と練習を重ね、楽しみながら学び身体の柔軟性を取り戻し、難しい
ポーズにもトライしていた東山さん。

彼女にとってヨーガは生活の中心だったはず。
そんな彼女がヨーガの練習を続けることができなくなってしまうなんて。
やはり世の中はままならないものだ。
ときどき神様っていじわるをするな。

まだ彼女はスタジオに戻ってきてはいない。

年齢と体調を気にしながらもコツコツ淡々と練習を積み重ねていた東山
さんからは学ぶことや感じることがたくさんあった。

スタジオで約6年ヨーガの練習を続けてきた日々は自信になり今の彼女
を支えてくれていると思う。

ある日ひょっこりとスタジオの窓側で目立たずひっそりとマットに座る
彼女と会える日が来るといいな。

東山さん、また一緒に練習しましょうね。
待ってます!

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