ショートサドル試用記。(2)
前回↓
触れた3つのサドルを取り替えながら軽くではあるものの試してみた。
まずSelle Royal R.e.med 3。実際に使ってみると簡易な手法で確かめたよりも随分と坐骨を幅広くサポートしてくれる感覚があり、ここで既に心地よい。こういうのでいいんだよ感。先端部が大胆にカットされたデザインは、通常デザインのサドルに比べて随分と内転筋が自由に感じられ、最早、いつの日か実現することを夢見た座面だけが据えられたサドルのような感覚すらあり、効果覿面なようだ。ベース部がよく撓って坐骨の動きに追従する感覚や、ともすると地面からの衝撃すらも軽減するかのような柔らかい乗り心地は、もしかすると乗る人を選ぶかもしれないが、パッドを柔らかくして快適性を演出するサドルの多さに対して、このようなベース部のしなやかさで柔らかさを表現するサドルは限られてくるようにも思われるので、貴重な選択肢になるのではないか。
つぎにVelo 1966-6。肉厚ながらも硬い乗り心地。幅は更に広く感じられ、坐骨や臀部の安定感は更に高い。先端部の幅が僅かに広いことが前に座った時の坐骨の安定性を高めることに繋がっていて、もがきを含む強い踏み方を取り入れる時など本当にギリギリの先端まで使いたい場合はこちらを選びたい。3つの中では最も普通の使い心地に思えて凡庸なようだが、その普通が如何に尊いことかを使い込むうちに知っていくことになるかもしれない。
さいごにPrologo Dimension Tri。最も横方向にフラットに感じられる。実質的な横幅が内股の幅ギリギリまであるからか、サドルの両サイドが両方の内股にめり込んでくるような感覚があり、ともすると股擦れの心配があるかもしれないが、逆にこのような快適ラインをギリギリ出ずにぴったりと合わせたセッティングのほうが股擦れしないかもしれない。要検証。これを頼りにすると内転筋にサドルの先端部が終始擦るのとは違う位置感覚の知覚が可能で、もしかすると踏み込みの安定性に繋がる可能性がある。また、最先端部分までしっかりと横幅が感じられるたっぷりとした幅感覚があり、シッティングではあるもののケイデンスは最大クラスまで上げた時に見られるような尻は最早先端部に触れているだけの超絶前乗り状態でも坐骨をしっかり支えてくれる。勝負をするならこうでなければ話にならないとすら思える。
こんなにも違いが出るとなると、更にT GALE PASを試したくなるが、先端部に乗ってガンガン踏み込む場面はそう多くないようにも思えるので、一旦保留とする。それを考えると、全面フラット座面で前乗り推奨のT GALE PASよりも、緩やかなSカーブ座面でどの位置でもしっかりと座ることのできるDimensionシリーズのほうが汎用性が高いだろうか。
ともあれ、どれを取ったとしても脚が自由になって快適で軽快なペダリングができるこの感覚を得られたのは私にとっては画期的だった。軽快に感じられたのは十分に休んだことでエネルギーの回復ができて調子が良かっただけかもしれないが、もしかするとやはり、意外なことにと言うべきか、思っていた通りと言うべきか迷うのだが、サドルは出力にかなり直接的に影響を及ぼすのではないだろうか。
つづく?