PowerslideかBONTか……?

試着ができないながらも購入自体はせねばなるまいという謎の使命感による賭けが確定している状況の中で製品選びをするならば、あまりにも小規模で自社で直販サイトを運営できないメーカーのものでは話にならないと言える。万が一不具合が起こった時にメーカーと直接のやりとりができないのはつらいからだ。選択肢の自由度はそもそも初めからないようなものだが、それでも最大限に確保したいと思えば個人輸入を主なやり方とせざるを得ない現段階では、この2社の並行体制で見守るしか、やりようはあるまい。


エンデュランス、クロストレーニング、レクリエーションといった分野ではPowerslideのほうが有利かと思われるが、スピード系ではBONTのほうが選択肢が広いだろうか。

Powerslideではマラソン用としてAriseというブーツがあり、BONTではSemi Raceというシリーズがかろうじてかすっているのだろうか。おそらく42.195kmよりも長い距離を想定して、あえて足首を固定することで疲労を抑えるという意図があるものと思われる。また、スラロームのように跳ぶことがあるとすれば足首まで固定できたほうが好ましいのだろうか?

スピード極振り系としてはPowerslideでは大人向けとしてはACCELシリーズ、Dragon、Core Performance、子ども向けとしてはFalcon、また、特徴的な3点支持フレームの3X仕様ブーツも展開される。2点支持ではどうも不足があるという見方? それとも新規制への訴求を喚起したいという……?? 今までの前後2点支持のフレームへの互換性に関しては……、アダプターが存在する可能性があるか。BONTでは自転車界でUCIからバンされたことで有名になった(?)CRONOをフラッグシップ(またはイコン?)として、Vayporシリーズ、BNT、Jetシリーズ、最下位のLunaでもローカットのブーツで通している。足首まで続いているブーツはBONTでは先に挙げたSemi Raceのみである。

PowerslideのACCEL無印は甲の締めがBOAで靴底がボックス形状になっていて剛性感を追求している、ACCEL Raceでは靴紐で結ぶタイプで靴底はフラットだ。Dragonがカーボンを使用しているけれどもフルカーボンではないようで、Core Performanceではカーボンは使用されていない。どれがいいかは人によるだろう。例えばトップオブトップで滑っているBart SwingsはBOA採用のACCELがベースとなっているであろうシグネチャーモデルを使っている? のか? もしかしたらラグジュアリー用途向け……? 同じくトップオブトップで滑っているFelix Rijhnenは靴紐タイプを使っているようだ。めちゃくちゃ踏めるなら靴底の剛性は高いほうがいいのかもしれないが、そこまで求めないならフラットかつフルカーボンでなくても問題は出にくいのかもしれない。パワーを重視しながらフォースを稼ぐか、スピードを重視しながらフォースを稼ぐかという考え方の違いが現れるところかもしれない。そもそも、靴底から踵、足の両サイド、爪先まで地続きで舟形に造形されているブーツでなんの不足を感じようかと思わないでもないし、別の分野でいくと弓道の弓でカーボンが使われた時期もあったようだが近頃では和弓にはグラスファイバーのほうが優れていると見なされているようなところがあるみたいだし……。Swingsはシグネチャーモデルのマグネシウムフレームで地面からの距離を短くしようと試みているのに、ブーツの靴底のボックス形状で僅かに高くなってしまっているかもしれないことの矛盾をどう説明するのだろう。ブーツで高くなってしまった分をフレームで吸収しようということ?? 実際のところはエリート集団は毎年仕様を細かく変えているかもしれない。だが、私は今のところそこまで見ている余裕がない。余談になるが、サイクリングシューズでも近年はシューレース締めも併せてラインナップされるのがトレンドのようで、常に温故知新の精神で新しくも古い、古くも新しいやりかたを再発見、吸収または淘汰しながら変遷し続け、流れていく時代の要請と言う他あるまい。言い換えて、身も蓋もない言い方をすると、これまでに触れてこなかったような新鮮に感じられるやり方を取り入れないと、どんなに良いものでも飽きるということだろう。日本において自動車を運転する人の殆どが最早ATに飽きているし、この時代にあってMTを好んでいる人だって、時には面倒だと思うのと本質的には同じであろう。私の自分自身の経験則として、過多になると丁度いい部分へ移りたくなるというよりは真逆を欲するようなところが強く出てくるというのは不思議なことだが、結構本質的なことなのではないだろうか。

閑話休題………

BONTではCRONO 2は最早Inze Bontの魂がこもった遺産というか、シューズカバーなしでもあれだけつるっとしたシューズを開発できたことに対して感嘆するしかなく、コスト度外視で注文が少なくとも靴型や型紙を維持し続けようという気合の入った不採算モデルと見てひとまずわきへ置いておくとして、実用的な競技仕様だとするとVaypor、ジッパー付きのレースカバーやバンパーを省いて軽量かつシンプルにいきたいとすればBNTということになろうか。自転車に例えると、Vayporが最新設計のエアロだが少し重いバイク、BNTが比較的単純なパイプでコンフォート寄りの撓って軽いバイクといったところだろう。CRONOを自転車に例えるとすると、さしづめグレアム・オブリーが駆った自作バイク、もしくはクリス・ボードマンが使っていたLotus Type 108といったところか。もはや永遠に、ああいった自由な発想で自転車を造形することはできなくなってしまったわけだが(いや、できるのだが、作る意味合いが非常に限定的になってしまったと言ったほうが正確か)、ただし、あの時期、明確に、厳密な規則の中で競うことのできる新しいフェーズに入ったとも言えるわけだ。UCIの裁定を疑問視する見方も根強いようだが、今になれば、オブリーやボードマンには気の毒だったが、しかし真っ当だったのかもしれないと思えなくもない。同じように、CRONOや、あらゆるエアロバー、エアロハンドルがバンされたことに対しても、時代を経ることによって見方が変わるかもしれない。

閑話休題……………

Super Jetがもっと軽くて足にぴったりくるもの? だが熱成形の回数は限られていると書いてある(もはや足の形が出来上がっていて動かないという確信が持てるし熱成形の失敗もないと確信できる玄人好みの仕様?)、Semi Raceはスラロームまでできる? Jet無印はSuper Jetよりも熱成形ができる回数が多くて僅かにライナーが厚い? Lunaは完全なエントリー向けといったところ? ここで注意したいのは大人だけがスケートをやるわけではないということで、成長途上の選手に与えることを考えると頻繁に買い替えねば足の健康に悪いという観点から、下位のように見えるモデルはメーカーの好意で性能の割に安価に設定されている可能性もあるかもしれない。

40km/h近辺で42.195kmを駆け抜けるスケートマラソンや、激しい加減速に耐えねばならないエリミネーションのようにスピード寄りのブーツとなるとBONTのほうが選択の幅が広いね……。

つづく?


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