KOC2022
今大会も特にコントの可能性を無限に感じるくらいの大会でした。
純正なコントから曲に合わせたコントなど、種類も様々で順位をつけるのが難しいなぁと印象を受けました。
個人的には審査員の方の予想を裏切るというところが高得点につながったのかと思いました。
◆1st Round
○クロコップ
20代後半~30代前半にはぶっ刺さる、「遊戯王」をベースに感じるあっち向いてホイゲームのネタ。「ギャグマンガ日和」にも出てきそうな世界観満載のコントで、全世代がハマるネタでした。
「遊戯王」というベースを理解しているとヘリが出てくるのも「あるある」ですが、少し年齢層が上の審査員の方には「突拍子もない展開」で予想を裏切っていって結果として高得点につながったのかなと思います。
自分もこういう世界観を押し付けられる系のぶっ飛んだコントは大好きです。
他のコントとも毛色が違くて、番手を選ばないようなネタだったので1番手だったのが非常にもったいないですね。
○ネルソンズ
結婚式に新婦友人が乗り込んでくるという、コントとしてはベタな設定ですが、予想の逆を突く「友人には心惹かれず新郎のほうに戻ってくる」という軸で展開していくネタでした。
来賓が味方とか、ハイスペック男子とか、徒競走とか「友人にいってしまいそう」な展開が数々巻き起こるも結局戻ってくるという最後まで予想を裏切り続けた結果が高得点につながったのかなと思います。
3人ともの演技力も素晴らしく、特に「いきそう」な雰囲気を醸し出した岸さんが上手かったなと思います。
○かが屋
演技力のあるコントが続きます。女性上司と男性部下のバーの設定で、状況説明も短時間で終わらせます。
フリの短さもちょうどよく、そしてセットに不自然に置いてあるドアの説明とネタバラシもセットで実施されたような気がして綺麗にまとまっていました。1個目のネタバラシですべては語らずに、「女性上司⇒男性部下」という好意が2人の中にあることも示しているのが、不必要なコミュニケーションを削る引き算が見えた瞬間でした。もしかしたら最初から書いていなかったかもしれませんが。
あとは好意の矢印がもう一個増えることがわかる2個目のネタバラシでの加賀さんの演技が凄かったです。
「僕がドMだって知ってるんですか」の2回目、途中からの表情とトーンの変化だけで笑わせる。すごいコントだと思いました。
○いぬ
山内さんの名言よろしく「起キスキスキス」なパーソナルジムと言うネタ。
太田さんの肉体、有馬さんの背丈、この時点で設定にはマッチした体系のように見えました。
設定の説明も簡素的ですが、話はすぐにベタベタの夢シーンに切り替わり、そこから有馬さん扮する奥様の返答は「大丈夫です」一辺倒になります。
この「大丈夫です」一辺倒は、いかにも夢っぽい返しでかなり笑ってしまいました。その後は場面が展開していくたびにキスのオンパレード。コロナウイルスが騒がれなくなった今だからこそできるネタで、上島さんにも届いてほしいネタでした。
評価として伸びなかったのは、最初にも書いた予想の裏切りが少し少なかったのかもしれないなと、個人的には思いました。
「キスは禁じ手」という明確な評価基準を引き出した点では金字塔を打ち建てたのかもしれません。
○ロングコートダディ
爆笑しながら見ていたのですが、見終わった後に「帽子がセットに引っかかって落ちちゃう」という軽いボケから、ここまで面白いコントにまで話を展開できるなぁという尊敬の念が押し寄せてきました。
一本のコントにまで仕上げられたのは、どのように帽子を取ってもらうかという話の展開のさせ方が自然な中で、掛け合いのセリフ選びがいちいち面白い。
そしてなにより前回のKOCでのネタ同様に兎さんのキャラ設定が抜群。
兎さんの人柄に最初は戸惑いながらも「こいつ何しても怒らないな」って気づいて、そっぽを向かせて帽子を取ったり、強めに言い返したり、やりとりがグラデーションで変わっていく感じが非常に面白かったです。
なので点が伸びなかったのはびっくりしました。手練れの審査員からすると少し予想がつく展開だったのかなという印象を受けました。
○や団
キャンプというネタから一転、恐怖よりの展開になるネタで最初のドッキリの発表が遅いまでは想像しやすいボケではありましたがロングサイズ伊藤さんからの登場で状況が一変します。これは決勝ラウンドでのネタも同様でした。
ツッコミ、ネタバラシが遅い変な奴と、死体隠蔽経験者という3人それぞれの役割が立っていたネタで隠ぺいのリアルさで笑わせるというもので、よく言われる「恐怖と笑いは表裏一体」というのを体現しているようでした。
演技力も高く、特にそう感じた原因として、ロバート秋山さんが審査コメントで「パーカーのフードをかぶってきたときから雰囲気が変わった」というのがあり、私もかぶって出てきたと思い込んでいたのですが実際はかぶって出てきてなかったということが挙げられます。
そんな勘違いをしてしまうくらい視聴者をコントに引き込んでいるのはもちろん、死体隠蔽の経験がある顔になっていたんだろうなというのを2回目を見てから痛感することになりました。
○コットン
浮気がテーマでしたが、浮気後の設定と言う新しさがあり、あの手この手で浮気の証拠を消していく趣向を凝らした展開のネタ。
ここで生きたのはきょんさんの憑依力でした。
コント自体のファーストボケになる、西村さんが浮気相手との滞在時間を伝えた後の「結構長いこといらっしゃって」というセリフで「いらっしゃって」のところを敢えて言葉を発さないという憑依型のボケが特にすごくて、このボケで視聴者からのそのキャラへの愛着を抱かせることが出来ていて、心をつかんでいったような気がします。
西村さんの「ドモホルンリンクルスタイル」、「カマじい」と例えツッコミもアクセントとして活きていて、スプレーの小道具遣いも抜群。
股間にスプレーをかけるバカバカしさも含みながら、彼女が来てしまうというピンチにも途中から男装に代わる大胆な場面展開も有り、4分と言うネタ尺の使い方が完ぺきだったように思いました。
○ビスケットブラザーズ
コントの設定からじゃなくて、しゃべり方含むキャラクターとかアイデアから考えたかのような、いかにもビズブラらしいネタ。
出オチかなと最初は不安になりましたが、その後の掛け合いと滑稽なキャラクター設定で徐々に笑いを増幅させていきました。
「山で何もしてなかった」⇒「何かするところでしょ山って」とか
「大学も行ってる」⇒「大学そんなんじゃないですよ」とか
「キラキラリンの棒はさっき拾った」⇒「さっき拾ったんですか!?」
「スピードを追求した結果ブリーフなんですね!」「それどういう意味?」といった掛け合いも一個ずつハマっていた印象で、爆笑の渦に飲み込まれるというのはこういうことかなと思いました。
ビズブラの強さが見えるコントで、予想するのもバカバカしいような設定だったのが功を制したかなと思いました。
ネタ前の意気込みVのところで、「笑いをあきらめるな」という名言が飛び出しましたが、なんかこのVTRも前フリとして活きていて、大きい笑いに繋がっていたように思います。
○ニッポンの社長
本大会一番の話題作。
暗転を利用した場面展開と、SEと天丼をしながら笑いを誘うシステムのネタでした。
松本さんの審査評に自分も同感していて「暗転が多いとどうしても見る側としては先の展開を予想できる時間ができてしまう」というところで審査員の方々の予想を超えなかったのかなと思いました。
ただ暗転⇒明転という繰り返しの中でも、明転飛び出しではなく板付きになっていたり、なるべく視聴者に飽きさせないような工夫は見えました。
あと、同じ天丼だけではなく、「シンイチ君は日常パートでもアレが発動するのか」と突っ込ませるようなシーンも差し込まれていて、最後まで笑えるネタでした。
○最高の人間
いかにも岡野さんらしいサイコパスみ強めの設定に、吉住さんの演技力がかなり光っているネタで、予選一位という噂にも納得できるものでした。
巨匠の頃は"変な"岡野さんに振り回される"普通な"本田さんという役割でのネタが多かったですが、吉住さんをの演技力を活かすために岡野さんの世界観に乗っかっているキャラに落とし込んだネタになっていたのは最高の人間でしか見れないネタだと思いました。
"逃げて”のタイミング、トーン、表情が完ぺきで、大きな場面展開としてウケにもつながっていました。
ここでもっとウケるために必要だったのはフリの部分での完ぺきなキャラクターづくりでしたが、飯塚さんが言っていたように岡野さんに"緊張"が見えたからだと思いました。
「噛んではいけないネタ」とM-1での評価でよく耳にしますが、「緊張してはいけないネタ」だったのかもしれません。
"緊張"が見えると、頭がぶっ飛んだ支配人にも人としての心が見え隠れしてしまうのかなという印象があり、振り切った演技でフリを効かせることができれば得点は絶対に伸びていたと思いました。本当に素晴らしいネタでした。
◆決勝ラウンド
ここは単純にビスケットブラザーズの一本目の点差が高く、届かないだろうなという印象でした。
準決勝とかリハの舞台で2本目のネタも見ているのであればなおさら振り切ってやれたのか、や団、コットンの両組も緊張感無くネタを披露出来ていたように見えました。
や団は設定バラシをすぐせず、あとから本間さんが気象予報士の役とわかるのですが、その役が判ったところでもう面白い面白い。
あきらめた人の可動域という大きなアクションで大きなウケをかっさらっているのもかっこよく、いぶし銀としての役割を見せつけ、コントしての花が咲いた瞬間に映りました。
コットンのネタはABCグランプリでも見たことのあるネタでしたが、プロポーズのくだりを見るのは初めてでした。プロポーズに至るまでのきょんさん演じる女性には愛嬌があり、急なプロポーズにも「こんな子好きになっちゃうよな」という納得感があり結果として大きいウケに繋がっていたように思います。
ビスケットブラザーズの決勝ネタは女性から男性に代わるめちゃくちゃな発明をしているのですが、その風体とパワー系の芸風から見落とされているように見えました。ここの発明から考えたんじゃないかなと言うネタでしたが、その後も「友達はたった今1人減った」とか「今バイト先ではふみこがダントツトップを走ってます」、「この状況でウソって何?」という世界観を受け入れつつ、ちゃんと刺さるセリフもあり、ばちっとハマってて途中から優勝決まったなと思えるネタでした。
あらためて、ビスケットブラザーズ優勝おめでとうございます!