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JOKER(ネタばれ有り)

観終わった後に、呆然と動けなくなるそんな映画だった。
劇中、主人公JOKERはずっと笑っている。
それもそのはず、
JOKERはコメディアンなのだから。

「主人公がずっと笑っている?」
「それはさぞかしハッピーな映画なのね。」
そう考えた方は、恐らく幸せなんだと思う。(自分も含め)
私は、劇中JOKERは悲しい時ほど笑っていると思った。
JOKERは精神疾患を患っていて、急に笑い出して止まらなくなってしまう。
決して、心の底から面白いから笑っているわけではない。
大ネタバレになるのだが、
JOKERは地下鉄で富裕層の商社マン3人を拳銃で殺してしまう。
元から精神的に不安定だったが、そこから更に拍車がかかり、どんどん罪を犯してしまう...

そこのシーンは、けっこうバイオレンスな感じで、私にとって衝撃が大きかった。バイオレンスが苦手な方は、あまり鑑賞しない方が良い気がします。

全体的には、富裕層と貧困層の格差が垣間見える映画で、JOKERが罪を犯しているうちにも富裕層に対する貧困層の不満が爆発し、多々暴動が起こっていた。(ピエロの付けてね。)

そして、最後はJOKERがずっと憧れていたコメディアンと共演し、そのコメディアンを生放送中に撃ち、捕まる。
だが、JOKERのその行動は貧困層に大きく影響を与えた。貧困層は街ゆく富裕層に攻撃し、車を燃やしたり...とにかく街はしっちゃかめっちゃか。

JOKERは殺人を犯しただけでなく、暴動も加速させた極悪人である。
しかし、JOKERがそうなってしまった背景はというと、私は明らかに彼の環境にあると思う。
彼の両親が、ネグレクトであったり....をしていたのだ。
その環境下で、JOKERが身に付けた技が笑うことだった。それをみた母親は幼い息子に「将来はコメディアンになるのね!」と。

JOKERがこうなってしまわないために、何が出来たのだろうか?
心に傷を負いつつ過ごした子供が、将来人に危害を与えずまっすぐに育つなんて到底不可能ではないか。
そういったことを鑑みて、私はとてもJOKERを責められないのである。
そして、殺人等も法律で禁止されていたり、教育されたりで「絶対してはいけないもの。」と思っているわけで、ある意味刷り込みではあるんですよね。ただ、彼の過ごしてきた環境では、ネグレクトや暴力が横行して、日常がそれではなかった。
そして、最後のシーンでは、彼がピエロ集団の教祖のような、慕われる存在となっていた。ピエロ集団では彼の行動が、最もらしい支持できる行動なのだ。

私は、いかに当たり前が不確定なものなのかを思い知らされた。
今の日本では、たまたま殺人や犯罪がそこらじゅうに横行していないだけで、諸外国ではそうでない国も沢山ある。
とはいえ、現在の日本でもネグレクト等、家庭の問題は局在している訳で、何も他人事でない。私も、空気の悪い家庭の中で、場をなごませようとかそういった気持ちでピエロのようにふるまっていたこともあった。心では泣いてましたが。
案外、世界は嘘笑いで成り立っているのかもしれない。
あなたの、その笑顔は本当ですか?

貧困層と富裕層の考えなんて、交わることはないのである。
その前提の上で、解決策などあるのだろうか。
正直、不可能なのでないかと八方塞がりに感じてしまった。

そして、JOKERの踊りは最後まで、しなやかで美しかった。



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