湯船は人がつくるもの・紅梅温泉(大阪市北区)
今夜はふらっと、紅梅温泉さん。
大阪市北区。地下鉄南森町駅から徒歩5分。
大阪らしい銭湯はどこか……と聞かれると、なぜか紅梅温泉さんが真っ先に思い浮かぶ。
店前に掲げられた電光看板の文字、石造りの湯船、少し渋い色のタイル。そんな建築としての趣があることも関係しているのだろう。でも、それよりも紅梅温泉さんが「大阪らしい」と感じるのは、常連さんの粋な雰囲気を感じるからだと思う。
紅梅温泉さんのほど近くには、日本一長い商店街、天神橋筋商店街がある。以前、店主さんにお話を聞いたところによると、昔から常連さんは天神橋筋商店街の店主たち、すなわち大阪商人が多かったようだ。常連さんが身にまとう粋な感じには、そういった土地の背景もあるのだろうか。
つくづく、銭湯は人が作るものだと思う。
時として、銭湯には目を見張るような建築を見ることがある。こんなものが現代に残っていたのかと思うような、古い造形。あるいは、リニューアルした銭湯のニューレトロとでも言うべき味わいのある風景。
しかし、銭湯の本質にあるものは、いつも人だ。店主の人柄や仕事ぶりで、銭湯の入り心地は大きく変わってくる。しかし、それよりも銭湯の雰囲気を決定づけるのは、そこを利用する客そのものだ。
マナーを守らなかったり、周囲に睨みを効かせるような客が多ければ、その銭湯の雰囲気は暗く閉鎖的なものになる。逆に自然とマナー守り、朗らかで優しい客が多い銭湯は、自ずと開かれて明るいものになる。
だから僕は、銭湯が好きな客のひとりとして、できるだけ朗らかにしていたい。
こんな小さな想いの積み重ねが、きっと世界をより良くしていくはずだから。