返すべきものを返す為

 この一年以上の間の自分に就いての、ほんの一部分を、此処に示す。

 ウェブに繋ぐ事の出来るコンピュータで、何の支障も無く日本語を書く。たったこれだけの事に就いて、前述の期間の間、私は、強い制限を受けていた。
 その状態から復帰する為に、私は、ネット上に公開されている叡智の部品のかけらを寄せ集め、それらを組み立てる事をした。
 恐らくは、それら叡智は、私以外の或る種の人達に取っても、有用である。私を助けてくれた叡智が他の人にも届く様に、そして、それらを基にして私の手に因り成ったものが、たった一人でも誰かの助けとなる様に、それらを以下に書き記す。

 かくあらん事を。


※月配列「樫」、概要

 月配列「樫」は、……

(1) 私が作成した仮名系の新配列です。

(2) それは、 emacs + DDSKK への実装と、小説の執筆への使用とを目的としています。

(3) その作成には、ぶな配列v2.0 (20180325-04版)のレイアウトと、薙刀式の思想とが参考にされました。

(4) この新配列は、1年以上の試用と調整の結果、少なくとも私に取っては、充分に実用的なものとなっています。


※月配列「樫」、詳細

(1)
 現在、コンピュータで日本語入力を行う際には、メーカーより提供されたキーボードに印字された文字に基いて仮名入力、若しくはローマ字入力を用いるのが一般的です。
 新配列とは、日本語入力の際に用いられる、しかし、「メーカーより提供されたキーボードに印字された文字」では無い、キーへの文字の割り当てルールの事です。
 それが創られる動機は様々でしょうが、私の場合、 JIS 規格の仮名配列での日本語入力が出来無い状況を余儀無くされた事、そして、ローマ字入力の余りの非効率さに耐えられなかった事から、自分の為の新配列を創る事となりました。

(2)
 私は、 emacs + DDSKK の組み合わせで月配列「樫」を使用していますが、この組み合わせで無くても、月配列が実装可能なタイプの SKKなら、これを使える筈です。例えば、 CorvusSKK には、これを実装出来ると思います。
 又、配列のみが実装出来ればいい、 SKK 独自の機能は使わなくてもいい、と言うのであれば、他の IM でも、ローマ字の変換ルールのカスタマイズを施す事で、月配列「樫」を使う事が出来ます。事実、私は mozc にローマ字変換ルールのカスタマイズを施したものも使っています。

(3)
 ぶな配列v2.0 とは、月配列の亜種の一つです。

cf.
ぶな配列v2.0 (20180325-04版)
http://keybor.blog96.fc2.com/blog-entry-107.html

 当初、月配列「樫」の制作は、 ぶな配列v2.0 をカスタマイズする事で行っていました。配列名に「樫」の名が付けられているのは、ぶな配列に対するリスペクトからです。
 しかし、月配列「樫」は、そのぶな配列のレイアウト以上に、薙刀式のアイディアと、その製作者である大岡氏のブログの情報の影響を、強く受けています。

cf.
大岡俊彦の作品置き場
http://oookaworks.seesaa.net/

(4)
 理論上の効率と実際の使い勝手とは異なるので、或る配列を真に効率のいいものにする為には、実践からのフィードバックに因る調整の積み重ねが不可欠です。
 しかし、その様にして調整された私の月配列「樫」は、調整を行った私の文体に依存した配列となっています。その為、私とは異なる文体の人がこれを使った場合、私程には効率の良さを感じられない可能性もあります。


月配列「樫」、配列図

※Lは左中指前置シフト
※Rは右中指前置シフト
※Sは Sticky shift

※シフト無し
めでてはお ろとこそれ
もにLいあ かうRょS
がだたしへ ほん、。

※Lシフト
べさぢきね ぐどひふび
まけLくば ぼりのゅS
「わぴみざ ぞをーゃ!
※ “「” は、実際には “「」” を入力

※Rシフト
ぽづじやむ げらぷよぬ
ぱせるつぶ ごっRえS
『ずちすぎ ぜなぺゆ?
※ “『” は、実際には “『』” を入力

※Lシフト+Lシフト
直接英数入力モードに移行

※Rシフト+Rシフト
ぉぇぅぃぁ ゎゐヴゑ
_|《(【 …・―※
×▼△●〇 ←↓↑→
※ “…” は、実際には “……” を入力
※ “―” は、実際には “――” を入力
※括弧類は、実際には括弧のペアを入力

※その他
Rシフト+スペース or Lシフト+スペースで全角スペース入力
Rシフト+ 1 で直接英数入力
Rシフト+ 2 で全角英数入力
Rシフト+ 3 で変換マーカー設置
Rシフト+ 4 で片仮名入力切り替え or 片仮名変換
変換中に “/” で辞書より登録語の削除


月配列「樫」の、 emacs + DDSKK への実装

 以下のファイルの内容を、 DDSKK の設定ファイルである init ( emacs 自体の設定ファイルである init.el では無い事に注意)の最後の方に追記した後に保存。その後、 emacs を再起動して下さい。

my-skk-kashi-v2.el

 尚、変数 skk-auto-insert-paren が nil である場合には、それを non-nil に設定し直して下さい。


月配列「樫」の、 mozc への実装

 まず、以下のファイルを適当な所に保存して下さい。

ibus-mozc-kashi-2024-11-13-1051.txt

 次に、 mozc の設定より設定ツールを起動し、キー設定 - ローマ字テーブルの [ 編集 ... ] ボタンをクリックして下さい。 Mozc ローマ字設定ウィンドウが開きます。
 その後、 Mozc ローマ字設定ウィンドウの [ 編集 ] をクリックして、 [ インポート ] を選択後、 [ OK ] をクリック。
 保存した上記ファイルを選択後、 [ OK ] をクリックして Mozc ローマ字設定ウィンドウを閉じて下さい。
 [ 適用 ] をクリック後に [ OK ] をクリックすれば、実装完了です。
 尚、 上記の作業で mozc に実装されるのは、文字の配列だけです。 Sticky Shift や直接入力への切り替え等、配列以外の部分に就いては実装されません。

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