「マジで回想する5秒前」第3話
※note創作大賞漫画原作部門の応募作となります
※脚本形式での応募となります
3話
○橋(トラックに突っ込まれる5秒前)
市川(39)、ファミチキを食べながら歩道を歩いている。
と前方からトラックのクラクションの音。
市川「…?」
別のトラックからもクラクションの音。
さらに若者の絶叫。
秋山の声「(絶叫)うあああわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!! …う、う、うわああああああああああああああああああああ!!!」
市川、思わず立ちどまる。
次の瞬間、急ハンドルを切ったトラックが市川のほうへ突っ込んでくる。
市川、棒立ちで動けない。
以下フラッシュバック
○ファミマ・店内
市川(30)、フードスペースでひとり黙々とファミチキを食べている。
市川「(味わって)うん」
フラッシュバックおわり
○(戻って)橋
呆然と突っ立つ市川。
トラックを運転する吉村(58)、市川に気づき、さらにハンドルを切る。
トラック、橋の欄干に直撃し、そのまま欄干を突き破っていく。
吉村、思わず目を閉じる。
以下フラッシュバックが続く
○吉村の家・居間
ブラウン管テレビからアンパンマンのアニメが流れている。
吉村(1)、テレビを指さし、
吉村「(舌足らずに)アンパンマン!」
○空き地
吉村(10)、仲間とサッカーをしている。
○披露宴会場
花婿姿の吉村(25)、花嫁の愛子(25)と並んで座っている。
友人の誠(25)、マイクの前に立っている。
誠「吉村くん、愛子さん、結婚おめでとう。こうして畏まったままだと話しにくいので、いつも通りヨッシーと呼ばせてもらいます」
吉村「(笑う)」
○居酒屋
吉村(30)、誠(30)、飲んでいる。
吉村「(重い口調で)…誠。今日直樹が青あざ作って俺んとこにきたよ」
誠、無表情のまま、
誠「イタズラしたんだ。しつけだよ」
吉村「殴ることがしつけか?」
誠「…」
吉村「おい。殴ることが子供のためかって聞いてんだ」
誠「(かっとなる)うるせえな! そんなこと俺だってわかってんだよ!」
吉村「…」
誠「(酒をあおる)」
○吉村の家・門
吉村、玄関から出てくる。
直樹(7)、青あざを作って立っている。
吉村「…また殴られたのか」
直樹「(寂しげに)お父さんは僕のことが嫌いなんだろうか」
吉村、直樹の体を抱きしめる。
○誠の家・和室
喪服姿の吉村(35)、棺桶の前に立っている。
棺桶の中の誠の死に顔を見つめて、
吉村「バカ野郎…」
○吉村の家・居間
吉村(50)、直樹(25)、向き合っている。
直樹、吉村に写真を手渡す。
写真には笑顔のあいのが写っている。
直樹「一緒になりたいと思う人ができました」
吉村「(写真を見て)そうか。おめでとう」
直樹「(微笑む)」
吉村、写真を返し、
吉村「直樹。俺には子供ができなかった。だからお前のことは息子同然と思ってる」
直樹「はい」
吉村「(笑う)孫の顔を見る楽しみが増えたよ」
フラッシュバックおわり
○(戻って)橋
運転席でぐっと目をつぶる吉村。
トラック、欄干を突き破って川へと落下する。
真下に一台のボートが停まっている。
ボートには総一郎(80)の姿。
総一郎、頭上に現れた巨大な影に気づき、呆けた顔で見上げる。
(つづく)
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