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順接のがが|脚本

※順接の「が」と逆接の「が」の違いが学べるストーリー、をコンセプトに書きました
※縦書き版はこちらとなります


梗概

サブカル系男子の順(18)は小説家を志している。

順は小説仲間の学(18)にコンクールへ応募する小説を見せ、学からお墨付きをもらう。

順の小説はコンクール予選を突破し、受賞まであと一歩のところまでくる。

順が受賞への期待を膨らませる一方、学の抑えられていた感情が表出する。

学も密かに順と同じコンクールに挑戦していたが、一次落ちしていたのだった。

嫉妬心から学は順の小説の才能を否定し、二人の仲は険悪になる。

しかし事実を知った順は学の気持ちを理解し、二人は関係を取り戻す。

その後、順はコンクールで受賞する。そしてプロとなり、五臓六腑の活躍を遂げる。

登場人物

順(18) 高校生
学(18) 順の友達

のん(18) 順の恋人
ゆみ(18) 学の元カノ
友人  
審査員   

脚本

※本作のストーリーは静止画と音声のみで進行することとする

○テロップ画面
  以下のテロップ。
「この物語は順接の「が」をテーマにしているが、10分ほどで読めます」

○テロップ画面
  以下のテロップ。
「じゅん‐せつ【順接】
[名](スル)二つの文または句の接続のしかたで、前件が後件の順当な原因・理由などになっているもの。「だから」、「それで」などの接続助詞がつくもの」

○高校・教室(休み時間)
  席で文庫本を読む順(18)。
  本のタイトルは「ライ麦畑で捕まえて」。
  廊下から教室をのぞき込み、順に熱い視線を送る女たち。
  順の涼しげな顔のアップ。
ナレーション「彼が主人公だが、女子にモテる」

○同・校舎裏
  向かい合う順とのん(18)。
  のんの顔のアップ。
  緊張しているのん。
のんの声「君のことが好きなのだが、付き合ってほしい」
  ポーカーフェイスの順。
順の声「俺も君が好きだが、黒目がちな瞳が特に好きだ」

○同・教室(数日後・昼休み)
  順とのん、机をくっつけて弁当を食べている。
  弁当を食べる順。
  うっとりと順を見つめるのん。
のんの声「今度の彼氏はサブカル系男子だが、小説家を目指しているらしい」

○順の家・部屋(夜)
  パソコンの前に座っている順。

○パソコン画面
  原稿用紙の表紙に以下のタイトル。
  「我が輩は猫だが、名前はまだない」

○高校・教室(数日後)
  順と学(18)、座っている。
  紐で綴じられた原稿を読んでいる学。
  原稿を閉じる学。
  学、順に原稿を返す。
  順、原稿を受け取る。
順の声「コンクールに出す原稿を友人に読んでもらったが、絶賛された」
  物知り顔の学。
学の声「キャラクターは書けているが、ストーリーも書けている」

○のんの部屋(夕)
  向かい合う順とのん。
  原稿を読むのん。
順の声「彼女にも読んでもらったが、読んでいるときの顔が愛しかった」
  順を見るのん。
のんの声「読んだが、幸せな気持ち」

○道(数日後)
  順とのん、並んで歩いている。
  その背後に学。
  順の後ろ姿を冷たく見つめる学。
学の声「俺と奴は友達だが、奴と出会ったのは小一のときだった」

○小学校・教室(回想)
  黒板に「班長決め」の文字。
  威勢よく手を挙げる少年時代の順と学。
学の声「班長になりたかったが、先生がジャンケンで決めろといった」

   ×    ×    × 
  
  ジャンケンをする順と学。
  順はパーで、学がグー。
学の声「こうして班長は決まったが、この時から俺は常に奴の二番手だった」
  勝って喜ぶ順。

○道(戻って)
  順を睨みつける学の顔のアップ。

○高校・校門(二ヶ月後・放課後)
  帰宅する生徒ら。
順の声「二ヶ月後のことだが、コンクールの一次結果が発表された」

○本屋・店内
  順とのん、本を立ち読みしている。
順の声「本屋で立ち読みしたが、通過者に自分の名前が載っていた」
  のん、喜ぶ。
  順、満更でもない。

     ×    ×    ×

  学、本を立ち読みしている。
学の声「奴には内緒で俺も応募したのだが…」
  唇を噛みしめる学。

○高校・校門(二ヶ月後・放課後)
  帰宅する生徒ら。
順の声「二ヶ月後のことだが、コンクールの二次結果が発表された」

○本屋・店内
  順とのん、立ち読みしている。
順の声「本屋で立ち読みしたが、通過者に自分の名前が載っていた」
  のん、喜ぶ。
  順、満更でもない。

○高校・校門(二ヶ月後・放課後)
  帰宅する生徒ら。
順の声「二ヶ月後のことだが、コンクールの三次結果が発表された」

○本屋・店内
  順とのん、立ち読みしている。
順の声「本屋で立ち読みしたが、通過者に自分の名前が載っていた」
  のん、喜ぶ。
  順、満更でもない。

     ×    ×    ×

  学、本を立ち読みしている。
学の声「奴の落選をひたすら願ったのだが…」
  唇を噛みしめる順。

○高校・教室(翌日)
  向かい合っている順とのん。
  順の顔のアップ。
順の声「自信はあったのだが、案の定最終選考まで残った」
  のんの顔のアップ。
のんの声「絶対受賞できると思うのだが、受賞式には一緒にいっていい?」
笑いあう二人。
  二人を遠くから見ている学。
  体を震わす学。
学の声「(憎悪に満ちている)友達として付き合ってやってきたが、しかし! しかしだ! お前とは絶交だッ!」

○テロップ画面
  以下のテロップ。
「この物語は逆接の「が」をテーマにしているが、テーマ性は皆無だ」

○テロップ画面
  以下のテロップ。
「ぎゃく‐せつ【逆接】
二つの文または句の接続で、上に述べたことから予想される以外の結果が示される関係を、あえて結びつける場合をいう。「しかし」、「なのに」などの接続助詞がつくもの」

○高校・教室
  席で文庫本を読む学。
  本のタイトルは「現代の英雄」。
  隣の席でスマホをいじる女子たち。
  学の暑苦しい顔のアップ。
ナレーション「彼が主人公だが、主人公タイプではない」

○同・校舎裏
  学とゆみ(18)の姿。
  ゆみの顔のアップ。
ゆみの声「君のことが好きなのだが、これ以上一緒にいると嫌いになりそうだ」
  学の顔のアップ。
学の声「俺も君が好きだが、君のそういうハッキリとモノをいうところが嫌いだ」

○同・教室(数日後)
  席で本を読む学。
  学を冷めた目で見るゆみ。
ゆみの声「元彼はサブカル系男子だが、アートの才能は皆無だ」

○学の家・部屋
  パソコンの前に座っている学。

○パソコン画面
  原稿用紙の表紙に以下のタイトル。
「我が輩は猫だが、しゃべれる」

○マクドナルド・店内(数日後)
  席に座っている学と友人。
  紐で綴じられた原稿を読んでいる友人。
  原稿を閉じる友人。
  友人、学に原稿を返す。
  学、原稿を受け取る。
男の声「コンクールに出す原稿を友人に読んでもらったが、評価はさっぱりだった」
  物知り顔の友人。
友人の声「キャラクターは書けているが、ストーリーが書けていない」

○ゆみの部屋(夕)
  原稿を読むゆみ。
男の声「元カノにも読んでもらったが、頼んだことを後悔した」
  原稿を放り投げるゆみ。
  スマホで文字を打つゆみ。
  LINE画面に小説の感想が打たれている。
ゆみの声「読んだが、理解できなかった」

○道(数日後・放課後)
  歩いている学。
  正面に順とゆみの後ろ姿。
  順を睨みつける学。
  振り返る順。
  慌てて顔を逸らす学。
  学を見る順。
順の声「俺と奴は友達だが、別に記憶に残るような思い出はない」

○高校・校門(二ヶ月後・放課後)
  帰宅する生徒ら。
学の声「二ヶ月後のことだが、その二ヶ月が俺には一年に感じた」

○本屋・店内
  立ち読みする学。
学の声「本屋で立ち読みしたが、本当は家でじっくり見たかった」
  食い入るように本を見る学。
学の声「奴には内緒で俺も応募したのだが、俺の名前はなかった」
  唇を噛みしめる順。

○高校・校門(四ヶ月後・放課後)
  帰宅する生徒ら。
学の声「四ヶ月後のことだが、その四ヶ月が俺には二年に感じた」

○本屋・店内
  立ち読みする学。
学の声「本屋で立ち読みしたが、本当は家でじっくり見たかった」
  食い入るように本を見る学。
学の声「奴の落選をひたすら願ったのだが、奴は最終審査に残っていた」
  唇を噛みしめる順。

○高校・教室(翌日)
  向かい合う順とのん。
順の声「自信はあったのだが、ここまでくるとは思わなかった」
のんの声「絶対受賞できると思うのだが、喜ぶのは受賞してからにしよう」
  遠くから二人を見つめる学。
  学、憎しみに満ちた目。
  学、二人に近づく。
  ふてぶてしい学の顔。
学の声「よく健闘したが、君は受賞できない」
  順、学を見る。
  驚いた順の顔。
順の声「急にそんなことをいわれて驚いたが、意外に冷静な自分がいる」
  学のふてぶてしい顔。
学の声「この前はお世辞で褒めたが、君の書いた本はつまらない」
  順のポーカーフェイス。
順の声「君の意見は尊重するが、賛同はできない」
  学のふてぶてしい顔。
学の声「賛同するかどうかは自由だが、私はつまらないといっている」
  順のポーカーフェイス。
順の声「売られた喧嘩は買う主義だが、君と喧嘩をする気にはなれない」
  学のふてぶてしい顔。
学の声「私は喧嘩を希望するが、君が逃げるのならしかたない」
  微かに苛立ちを浮かべる順。
声「部外者だが、この場を調停したい」
  二人、振り向く。
  ゆみ、現れる。
ゆみ「元彼もコンクールに応募していたが、あっけなく一次で落ちた」
  ゆみを睨みつける学。
学の声「調停は結構だが、部外者は黙ってくれ」
  構わず話を続けるゆみ。
ゆみの声「元彼は平静を装ってあなたと接していたが、内心ではどす黒い嫉妬が渦巻いていた」
  かっとなる学。
学の声「やめろ! と叫びたいが、堪えてやる」
  学を見つめる順。
順の声「信じたくない話だが、信憑性はある」
  突然、笑い出す学。
  困惑する一同。

  以下、フラッシュバック。
  学、遠くから順とのんを見ている。
学の声「(憎悪に満ちている)友達として付き合ってやってきたが、しかしだ! しかし! お前とは絶交だッ!」
 フラッシュバック、おわり。

  笑い続ける学。  
  学に近づく順。
  学を殴る順。
  殴られる学の顔のアップ。
  床にうずくまる学。
  ポーカーフェイスの順。
  うずくまって体を震わす学。
  学を見下ろす順。
  号泣している学。
  学の様子に気づいた一同。
  そっと学に近寄る順。
  学に手を差しのべる順。
順の声「友達として付き合ってやってきたが、それゆえ、これからも君との関係を続けたい」
  微かに微笑む順。
  涙に濡れた顔で順を見上げる学。 

○同・校門(二カ月後・放課後)
  帰宅する生徒らの姿。
順の声「二ヶ月後のことだが、最終選考の結果が発表された」

○本屋・店内
  立ち読みをする順とのん。
順の声「立ち読みしたが、受賞していた」
  二人が見ているページに以下の審査評。
審査員の声「満場一致だったが、私も彼に入れた」

○出版社・外観(1週間後)
順の声「1週間後のことだが、授賞式が開かれた」

○同・授賞式会場
  たくさんの報道陣。
  カメラの前に立っているスーツ姿の順。
  遠くで順を見つめている学とのん。
  誇らしげに賞状を手にしている順。
ナレーション「その後彼はプロになるが、その活躍といったら凄まじいものがあった」

○テロップ
ナレーション「この物語には意味もオチもないが、いかがだったろうか」

(おわり)

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