しゃべるピアノ|#完成された物語
微力ながら参加させて頂きました。
まだ実験段階とのことですが、
楽しい企画をありがとうございます。
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その男は毎日のように路上でピアノ演奏のパフォーマンスをしていた。
彼の演奏はそれは素晴らしく、観客たちから毎回のように多くの投げ銭による収入を得ていた。
しかし、ある日のこと急に演奏が止まってしまった。
パンダが町にやってきたのだ。
ピアノのそばをよちよちと歩く、まんまるフォルムの愛らしい姿に観客は大興奮だ。
男は演奏を再開したが、圧倒的ビジュアルを前にしてはピアノの音色など無意味だった。
その日から観客の興味はピアノからパンダへと移り、男はすっかり落ちぶれた。
一年後。
路上では男とパンダによるパフォーマンス"しゃべるピアノ"が行われていた。
パンダの模様をピアノの鍵盤になぞらえて、男が弾くマネをするとパンダはかわいい鳴き声をあげた。
鳴き声があがる度、観客は拍手喝采し、多くの投げ銭を送った。
こうして男は復活を遂げ、かつて響き渡った素晴らしい演奏の代わりに今日もパンダの鳴き声が響いた。
(おわり)
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