
[映画レビュー]全米大ヒットの「CIVIL WAR」を見てきた
あなたが目撃するのはフィクションか
明日の、現実なのか?
初レビュー!
こんにちは、Funyuです。初の映画レビューとなります。今回は全米週末動員数1位の「civil war」をレビューします。
本作は「アメリカが分断され、内戦に陥ったら」というテーマのもとそれを撮影する戦場カメラマンの視点で描かれたロードムービー的な映画となります。
⚠️後半からネタバレが入ります⚠️
⚠️本作は12歳未満は視聴出来ません⚠️
大まかなあらすじ

舞台は現代のアメリカ。何らかの原因により19の州が政府から分離独立し、カリフォルニアとテキサスが同盟を組んで結成した"WF"こと「西武勢力」と政府軍との間で武力衝突が繰り返されていた。
そんな中で戦場カメラマンである"リー"は同僚達と、急遽参加してきた若手戦場カメラマンの"ジェシー"と共に14ヶ月インタビューを受けていない大統領の元へ取材に行く。
という内容です。
レビュー
評価基準 最低評価<低評価<普通<高評価<最高評価
ストーリー:[高評価] リアルな恐怖感で分かりやすく、 伏線や流れが理解しやすい。
本作のストーリーについては、全体を俯瞰してなぜ内戦がおこったか、というようなものではなくあくまで主人公達の視点の中で経験することがメインで描かれた映画です。
予告を見た感じではアクション映画のような印象を受けますがリー達記者と共に進んでいくロードムービの要素が強いです。それによってストーリーが複雑にならず直感的に頭に入るものに仕上がっており緊張感も感じやすいです。伏線もありますが、劇中で十分気づけるものとなっています。また、現代のアメリカが舞台という事で昨今の情勢と合わせて起こりうるかも知れないというリアルな恐怖感があります。
逆に、どのように内戦が起きるかのシナリオや何回も見返すような複雑なストーリーを求めていると肩を落とす事になるかも知れません。
演出:[最高評価] 緊張感、音響が素晴らしい。是非とも劇場で見るべき。
演出ですが、とにかく音響が凄まじいです。僕は普通の2D劇場でみましたが3Dなんかで見ると本当にエグいと思います(語彙力)。実際に劇場の外で銃を撃たれても分からないくらいの迫力で、プライベートライアンなんかを彷彿とさせる銃声でした。
また、劇中で赤サングラスの兵士(上の予告編でも出てる)が主人公達に発泡する場面があるのですが、静かなシーンで緊張させて「バンッ!」という恐怖の演出も良いです。(実際僕も周りの人も体がビクッとしてました)
また、この後も書きますが最後の方に大規模な戦闘シーンがあり、実際に元米軍の人も出演してるようで、そこの演出も非常に臨場感があります。劇場で見れないという人はヘッドホン等をして見るのをオススメします
※ここからネタバレありレビューです
リーとジェシーを通して戦場カメラマンのリアルを描いている

この映画は戦場カメラマンという職業に迫った作品でもあると思います。本作主人公であるリーは序盤でこれまでの人生でカメラマンとしての仕事に徹したため目の前で死にゆく人を助けなかったり、撮影したりしたことに苦悩を抱いている場面が描かれます。
本作の伏線として序盤にジェシーがリーに「私が死んだら写真を撮るの?」と皮肉って言うシーンがありますが、ラストでは逆にジェシーを庇い大統領の護衛に撃たれたリーをジェシーが撮るという展開に。
"真実を伝えるためなら目の前の死にゆく人間も撮る"。戦場カメラマンやジャーナリストは現実でも「人を助けずに何撮ってるんだ!」と写真を見て批判されることもありますよね。もちろん目の前の人を見捨てるのが善行なわけがありません。しかし、その業の深い行動により私達の元へ真実が届けられて来る。戦場カメラマンとは常に使命と自己の狭間でゆれ動く仕事なのかも知れません。リーが庇うシーンはそれぞれリーは自己を、ジェシーは使命を選んだ瞬間とも言えます。
戦争は「殺し合い」であるということ

本作は内戦を描いた作品ですが、節々に南北戦争を思わせるような描写もありさながら国家間戦争のような派手な映像です。しかし、ラストの戦闘シーンで興奮していた僕を最後の一枚の写真がはっとさせました。(上の白黒写真)
射殺された大統領の前で笑顔で集まる兵士達。死体の前で笑う写真は普通に考えたら狂気じみていますが、戦争ではこれが紛れもない目標達成であり、喜ばしいことになります。「戦争」という言葉に集約されたおぞましい現実を、よく表している一枚だと感じますね
What kind of American are you?

このシーンは割りと有名かも知れませんが、想像の3倍は怖かったですね。この場面はジェシー達がこの兵士に連れていかれて、放して貰うためにやりとりする所なんですが、この赤サングラスがとにかく怖い。この兵士は人を撃つか撃たないかの判断を「本当のアメリカ人かどうか」で判断するのです。
この言葉は元ネタである第一次世界大戦時にアメリカで作られた歌(下は当時のポスター)から来ているものだと思いますが、当時は外国と戦うため皆で立ち上がろうと言う意味なのに対して映画ではアメリカ人の選別、要は国を分断する目的で使われているのが皮肉だなと思います。

そしてこのシーンでは最近のSNSの発達で分断が加速している状況を思い起こさせます。SNSは非常に便利ですが1つの方向に傾倒してしまうとずっとその情報だけを摂取し続けられる媒体でもあります。(某Xでもそんな様な人を見かけますよね)
全員が自分の見たい情報だけを信じた先に待っているのは、こんな未来かも知れません。
分断から暴力へ転化しやすいアメリカ社会
この映画を見た後も「でも、ここまでなるか?」と思う日本人は多いでしょう。これは日本にはないアメリカ社会特有の問題も絡んでいると思います。それはアメリカが銃社会であり、強烈な資本主義国であること。
例として、2020年のアメリカの年間銃撃死亡者数は610人で21年は691人と過去最多でした。事件内容も学校等に入り無差別に銃撃する悲惨な事件が多い。そして、アメリカの貧富の格差は日本のそれとは深刻さが違います。まずアメリカには日本のような社会保証はありません。国民保険や生活保護制度も存在していません。ですが企業がやっている慈善活動家はあります。そこで問題なのが分断です。政府でなく民間での助けあい精神が強いアメリカですが、その中で分断が極まった時、本当の貧困層は頼る術が殆ど無くなってしまう。深刻な状況は鬱憤をたまらせる、そこに銃という武器があったら?あとは暴力の向くままです。だからこそアメリカ人は分断からの暴力、というシチュエーションをより身近に感じているのではないでしょうか。
まとめ
内戦を描いた「civil war」、銃撃戦のリアルさも去ることながら分断の果てについても考えさせられる映画でした。
そして今回は初の映画レビューで至らない箇所もあるかと思いますが、最後まで読んで頂いてありがとうございます。
では、次の記事でお会いしましょう!
