【BookReview】 『ほろよい読書 おかわり』
まえおき
この本を読むきっかけは、仕事で「シャブリ」について調べたことだった。シャブリ自体は昔から知っていたし、多分記憶がないレベルでパーティーで口にした。でも改めてシャブリを定義する必要があったことで、シャブリという言葉が使われている資料をあれこれ調べていた。
そこで出会ったのがこれだ↓
このレビューを読んで、自分の仕事とは関係なしに、一読書好き、酒好きとしてこの本を読みたいと思った。すぐに地元の図書館の資料リストを探してみると見つかった。驚いたことに、刊行されてすでに1年以上経つのに、多くの人が貸出を待っていた。
私はあまりの蔵書数の多さに、近頃特に小説は買い控えする傾向にある。というのも、実用書に比べると読み直す機会が少ないことと、エッセイに比べてこれまた心に響く言葉が書かれていることが少ないことが挙げられる。
あくまでもこれは私の主観で、私の読書傾向と本の購買傾向ではあるのだけれど、ストーリーが面白ければ面白いほど、頭の中に十分行き渡って、一度読んだ本をもう一度読み返す必要を感じないのが小説なのだ。
というわけで、シャブリリサーチのことは横に置いて、この本は回ってきた時にじっくり読もうと考えていた。2ヶ月ほどした時に、ようやく順番が回ってきて手にしたものの、当時は仕事用と自分用で積み上げた本が他にもあり、結局2週間の貸出期間に読み終えられず返却することになってしまった。
所詮そのくらいの気持ちで借りたわけだ
再度貸出を希望したが、これまたそれなりの本待ちの列に名を連ねることになり、さらに3ヶ月ほどした先週、ようやく2回目の貸出が回ってきた。
と長い前置きを書いたのだけれど、結論から言おう。せっかく「ほろよい」なんてタイトルがついているのだからと、久々に家飲みワインしながら読んだこの一冊の私の評価は、
ストーリー、全部頭に入っているのに、また一杯飲みながら、読みたいなぁと思うのだ。むしろ、酔った夜に寝床で火照って寝付けない時にこそ、この本をまた読みたいと絶対に思うと感じてしまったのだ。
本題
本のレビューを書くに当たり、どの作家さんのどのストーリーがどう好きか、と言われると正直選べないほど、ストーリーごとのカラーがとてもはっきりしていて、それでいて1冊にまとまった時のまとまり感がなんとも言えない良さを持つ。私はそれぞれの作品に、しっかりと自分を陶酔させて味わって読むことができた。
飲みながら読んだ青山美智子さんの「きのこルクテル」と朱野帰子さんの「オイスター・ウォーズ」の主人公たちのキャラは最高に良かったけれど、飲み終わった後に、ベットでゴロゴロしながら読んだ一穂ミチさんの「ホンサイホンベー」と奥田亜希子さんの「君はアガベ」を読んだ時間が、私はとにかくとても好きだ。
特に「君はアガベ」で描かれる、主人公と姪っ子の関係性やそれぞれの恋愛観、巧みに登場するメキシコ料理の数々は、ティーンのママな上、カリフォルニアですっかりメキシコ料理に魅了された私にとって、一番身近な感覚でグッと引き込まれた作品になった。
「ホンサイホンベー」のほんのりとサスペンスなひんやり感と、オブラートに包まれたエロティックさが、クラフトジンなんて飲んだことのない私に、いろいろな意味で新しい世界を教えてくれた気がする。
そして今晩は、評価の高い西條奈加さんの「タイムスリップ」をじっくり読みながら眠りにつこう。
ポチッた一冊は、きっと何度も読み直しつつ、将来息子たちがお酒が楽しめる年になったら、「読んでみたら」と勧めてみたいなぁ。私が探せたこの作品のレビューは、どれも女性たちの書いたものばかり。男性がこの本をどう捉えるのか、誰か聞かせてほしい。