TEDxKobe2019 全トーク紹介
※ これは2019年にブログに書いたものをnoteに移動させてきたものです
僕はTEDxKobeというボランティア組織で働いているのですが、今年のイベント「TEDxKobe2019」では、スピーカーさんを決定して一緒にトークを作り込んでいくという役割を持つチーム「スピーカーチーム」のリーダーをさせてもらいました。
そしてつい先日、2019/9/23に行われた「TEDxKobe2019」で登壇された6組のスピーカーさんの全トークがYoutubeにアップされました!というわけで、思い入れを込めつつ、長くなりすぎないように(笑)全トークを紹介していきたいと思います。少しでも魅力が伝わればと思います。
1.兼松佳宏 : "自分らしさ"という土台を作る「beの肩書き」
タイトルに「beの肩書き」という聞き慣れない言葉が出てきました。これは「何かをする」という「Do」の対比として作られた兼松さんの造語なのですが、いったいどういう意味なのでしょうか。
この発想はとても面白く、ユーモアさとキャッチーさがあるのですぐに伝わると思います。かつ、単に面白いというだけでなく、「何をしているか、よりも、どうありたいか」という、自分の本質を考えるきっかけになるアイデアになっている、というところが特に素晴らしいと思っています。
この考え方を知り、これは面白い、自分もbeの肩書きが欲しいとなって、さっそく自分たちで本に書いてある通りにワークショップをやってみました。そうするとそのワークショップを通じて、自分の過去や未来、他人から見た自分、自分が思う自分らしさ、など、様々な角度で自分を見直すことになり、非常に貴重な経験になりました。動画を見た方もぜひ体験してもらえると嬉しいです。
2.砂川玄志郎:冬眠で人類を救う
TEDxKobeでは「人ではなく、アイデアに着目してトークを選定するべき」という考え方があります。「凄いことを成し遂げた人だから」「有名だから」ではなく、アイデアがどうか、というところをちゃんと見よう、という方針です。今年ももちろん、その方針に従ってトークを選定させて頂きました。(選定ってえらそうですが…すみません…)
しかし逆説的ですが、アイデアに着目して選定したとしても、結果として「素晴らしい人」を選定することになるのだな、と砂川さんとお話をしていると感じました。だって普通、小児科医で働いていて、可能性を感じたとしてもそこからいきなり研究者になる、という選択はなかなかできることではないと思います。本当に子供のこと、医療のことをピュアに考えているからこそできる選択であり、きっとこういう人が世界を変えるんだと思わされました。本当に、心から応援したいと思います。
砂川さんは第一言語は日本語でありながら、英語でプレゼンするという選択をされたのですが、これも「英語の方が世界にこのアイデアが広がる。少しでも多くの人に知ってもらって、研究が進みやすい環境になって欲しい」という想いが込められています。
3.岡﨑伸彦:手話エンターテイメントでバリアを壊す
「聞こえる人と聞こえない人のバリアを壊したい」という想いと、そのために「手話をエンターテイメントとしてもっと身近にする」というアイデアは、僕たちのまわりで様々なところに存在する「バリア」をどうやって乗り越えていくか、という考えを深めるきっかけになります。
「ある人と人の間に横たわるバリアをどうやって越えるか」という命題について、色々なアプローチがあると思います。この後に紹介する高橋さんのトークにも一部あるのですが、そのバリアを「苦労して乗り越える」ではなく「楽しみながら、軽やかに超える」というアイデアが、僕はとても好きです。たぶんこれは僕の好みや思想が出てしまったところだと思うのですが…
それは障害というバリアもあれば、もっと身近にも沢山あります。スポーツが得意な人とそうでない人、お酒が飲める人と飲めない人、子供がいる人といない人、国籍の違いからくる文化の違いなど。様々なところに「違い」がありますが、その違いを「バリア(隔り)」としてしまうのではなく、「違いを楽しむ」というマインドがもっと根付けば、世界はもっといい方向に行くんじゃないかと思っています。そして、それをまさに体現しようとしている岡﨑さんのパフォーマンスを、ぜひ体感してほしいと思います。
4.北野唯我:才能と死と愛の関係
人間の才能に着目する、というところは変わらないのですが、自分と他人の才能を「どう捉えて、どう扱うか」という本の内容とは方向性を変え「自分自身がその才能をどう、何のために活かすべきか」という点に着目して、それをとても短いトークに仕上げるというアップデートをされました。著書と比較してもらっても楽しめる内容になっていると思います。
北野さんのトークの素晴らしいなと思うところは、アイデアもさることながら、「明日、僕たちにできることがあるとすれば」というように、具体的なアクションに結びつくように提案をしてくれている点です。つまり、非常に解像度が高いということです。
こういうイベントではえてして「いやーいい話を聞いた」と満足して終わってしまいがちです。相当に意識が高くなければ、実際に行動を変化させるところまでいくのは難しいと感じています。
なので、日々のアクションに結び付くように、具体的な事例を持って話すということは、北野さんが観念だけではなく、人の行動まで変えていこうという気持ちの表れなんじゃないかと思います。
5.高橋鴻介:小さい発見から世界をアップデートしよう
岡﨑さんのご紹介のところで書いた「バリアを壊す」という考え方は素晴らしいと思いますし、このブレイルノイエにもその力があると思っています。しかしその「壊す」前に、その壊すべき「壁」が見えているのか。そもそもその壁に気付いていないことって結構あるんじゃないか。本当の壁とは、そもそも壁自体が見えていない、「壁とすら認識していない」ことなんだ、という現実を体感しました。
「発明家」を名乗る高橋さんは、いかにしてその当たり前の壁を発見し、そして乗り越えているのか。そのヒントを知り、視野を広げることができるトークであると思います。
6.大西亮平:私たちはみな、通訳者である
大西さんご本人もトークの中で言われていますが、このアイデアそのものは実は新しい話ではなく、昔から言われていることです。私たちはよく知っているはずだが、しかしすぐに忘れてしまう。そして、機械翻訳の登場やオンラインでのやりとりが中心になってきている今だからこそ、私たちはその大事さを思い出し、再認識しなくてはならないのだと思います。
トークの内容そのものももちろん素晴らしいのですが、大西さんの場合はその「話し方」についても注目して欲しいと思います。声のトーン、目の配り、足の運び、手の動き、それら全てが「どうすれば伝わるか」を考え抜いた素晴らしいプレゼンテーションになっていますので、それも合わせて楽しんでもらえたらと思います。
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以上6組が今年のラインナップになります。トークそのものはどの順番に見てもらっても全然OKですので、気になったものから見てもらえるととても嬉しいです。1度には見れないと思うので、このnoteをブラウザで開きっぱなしにしておいて、電車の移動ごとに1つずつ見る、とか、そういう楽しみ方をしてもらえたらなと思います。
よく「オススメは?」と聞かれるのですが、正直本当に全部オススメで、「刺さるもの」はきっと皆さんの状況によって違うかと思います。なのでTEDxKobeとしてのオススメ、というのはありません。
個人的に今年「刺さった」トーク
が、それでは淡白なので(笑)僕個人が今の自分の状況で特に「刺さった」と感じたのは…兼松さんと高橋さんのトークです。
兼松さんのトークをきっかけに、改めて自分ってどんな奴だっけな、と捉え直すことができましたし、さらにそこから「じゃあ今の行動はその自分が喜ぶものになってるかな」と見直すことにつながりました。喜んでいる部分もあれば、「そういうものだ」と割り切ってなんとなくやり過ごしている自分もいて、それを少しずつでも変えていこうと思えるようになりました。見た目には分かりませんが、これって結構大きな「内なる変化」なんです。
また、高橋さんのトークについては特に刺さった部分があって。こんなことを言ってくれている一節があります。
「なにか社会を良い方向に変えたいと思った時に、はじめから『社会』というものを相手どる必要は全くなくって。社会の1番小さな構成員は『自分』だから、自分の個人的な発見、体験を大切にすれば、きっとその先に社会が繋がっている。そう思えば、軽やかな一歩が踏み出せるんじゃないかなって思うんです。」
企画して実行するとか、何かをやろうと思って声をあげたりすることって、すごく勇気がいることです。僕も「やろう!」って声をあげることは多いんですが、やっぱり勇気がいるし、周りの目ってどうしても気になります。
そして声をあげてみると、好意的に捉えて応援してくれる人もたくさんいてくれるんですけど、やっぱり否定的だったり、そこまでいかなくとも「冷ややかな目」で見られる、ということは多々あります。
この「冷ややかな目」というのを感じると、「あれ、これってダメなのかな」と自信をなくし、心がすぐに萎れてしまう。やっぱりやめようかな、という気持ちになってしまう。これって動き出したことがある人はみんな感じたことがある経験だと思うんです。
だけどそんな時に高橋さんの言葉を思い出すと、すごく勇気付けられます。少なくとも自分と、自分の周りの少しの人は面白いと思ってくれている。そうであれば、きっとどこかで「社会」に繋がっていく可能性がある。だからまずは自分の個人的な想いややりたいことを大事にすればいいのかな、そんな風に思えるようになりました。
TEDxKobe2019のトークを聞いて、皆さんにも今の状況に合った「心に刺さる」言葉が見つかってくれたら嬉しいな、と思います。