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さいきんのこと

 初めて夜が朝になる瞬間をみた日、夜と朝は連続的に繋がっていると知った日、私の中の何かが変わった。

 この話をするのはもう何回目だろうか、私は旅先のホテルから観る見知らぬ早朝の景色が大好きだ。 
 その朝の空気とよく似たものが、自室の窓から飛び込んできたわけである。
 冷たい風が、群青の空が、烏の鳴き声が、始発が駆け抜ける音が、遮光カーテンを開けばすぐそこに。
 今この瞬間私の瞳に映る世界の全てを、小さなガラスドームに閉じ込めておきたい。あるいはそんなことしなくても、時を止めていつまでもこの空気に包まれていたいと思った。


 遠出する目処が立ちそうでとてもワクワクしている。ようやく彼に逢いに行ける。
 1月末から今までうっかり一瞬のように感じてしまうけど、本当は一日一日を踏みしめて生きていたはずだ。
 親の説得とか飛行機の予約とか色々面倒なことがありそうだけどそれも立派な社会経験だし、何より「彼に逢える」という事実が、まるで触媒のように私を助けてくれる。
 嬉しくて嬉しくて仕方がない。実はまだ何にも手をつけていないけど。

 この街で生きている都合上、飛行機を使う機会が著しく少ない。何故かというと、東京まで新幹線ですぐだから。大半の物事は東京で完結してしまうため、そこより向こうに行く必要があまりないからだ。
 しかし今の私には東京より向こうへ行く必要がある。行かねば。


 上の事柄と関係があるのかはわからないが、さっき空港の近くまで行ってきた、バイクで。
 1ヶ月半ぶりに乗ったのだが、まずカバーが汚すぎる、蜘蛛の巣と羽虫とホコリ。そしてカバーの中にまで蜘蛛の巣が張っていて絶望した。愛車への愛が足りていないのだと思わざるを得なかった。
 空港までは電車だとすぐなのに、バイクでは信号と交通制限で雁字搦めのため結構時間がかかった。しかも迷子になったし。
 バイク仲間がよく集まっている公園が空港の近くにあると聞いていたのでそこを目指す。見つからない。どこだ。
 なんとか見つけ駐車場にバイクを停め、展望台へ向かう。おそらく津波からの避難にも使えるのであろう丘の上の、東屋にあるベンチに腰掛けた。
 どこに向かうのかわからない飛行機が立て続けに2本旅立って行った。フライトレーダーとかで調べればよかったかもね。
 天気はこの上ない見事な曇り、ムラのない安定したグレーに囲まれている。
 写真を撮った、下手くそすぎる。まず画質が悪い。友人が撮る迫力満点の写真には程遠い。
 公園から出発した直後、ほんの少し上空を着陸寸前の飛行機が通り過ぎて行った。GoProを着けていれば……と小さな後悔。


 パスタが食べたい。毎晩毎晩そう思っている。夕飯を20時頃に食べて、そこから3時とかまで起きているのだから当たり前にお腹が空く。そんなとき決まって食べたくなるのは、おにぎりでもクッキーでもなくパスタだ。何味かは関係ない、強いて言えばトマト系だろうか。
 翌日、食欲はあまり無いがパスタ食べたい欲は健在のため、冷凍パスタを食べる。おいしい。
 夏バテのせいか、ここ最近全くと言っていいほど食欲がない。並んだ菓子パンにも祖父母があんた好きでしょってお土産にくれたお菓子も全く手を付けていない。
 数日前に貫徹した朝だけは菓子パンを食べた。ミニスナックゴールドとインスタントの味噌汁。
 お腹が空いているわけではないが何かを食べたいとき、インスタント味噌汁を飲みがちだ。おそらく旨味を求めているのだろう。

 バーミヤンのよだれ鶏冷やし麺も食べたい。
 先日、髪を切ったあと、そこまでお腹は空いていないにも関わらずバーミヤンに吸い込まれた。
 とりあえずお一人様席に座ったが、15時の広い店内には数名程度の客しか居らずボックス席に広々と座れば良かったなと思った。
 さっさと注文を決めてスマートフォンを弄る。
 注文用タブレットにまもなく商品が到着しますと通知があったのであたりを見回す。私がいる席から最も遠くに位置する厨房からベラボットが出発するのが見えた。広い広い店内の一番向こうから、猫型のロボットがゆっくりゆっくり近づいて来る。
 なんてもどかしいんだ、私のよだれ鶏冷やし麺が見えているのに、まだ手に取ることを許されない。
 店員さんがベラボットを追い越し、別のテーブルの片付けを始める。
 ようやく愉快な音楽が近づいてきて、私は商品を手に取った。卵自分で割るスタイルなんだ。
 彩りのためにと調子に乗って、パクチー抜きの選択肢を拒んでいた。その結果、めちゃくちゃ旨い麺になんか苦い野菜が混ざってしまった。食べられるには食べられるのだが、絶対に無い方が美味い。
 氷みたいに、パクチー少なめとかできないんですかね。少しだったら美味しく食べられるから……。


 短期アルバルトの面接を無事通過し、来月働きます。4ヶ月ぶりの労働です。不安。働きたくない。
 高校生は採っていないとのことだったが、私が頑なに「高専生」だと主張していたため、そして前のバイトの経験を話したら優秀だと思って頂けたため採用して貰えた。
 短期だからと調子に乗り、週5でシフトを入れた。盛り上がって参りました。
 外での仕事なので、ほどよく涼しい日が続いてくれると嬉しい。


 おわり。

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