TRPGセッション向けガジェット使用のノウハウ
先日開催された、TRPG文華祭(2020/3/19~20)にて、テーブルトークRPGのセッションで、パソコンと液晶テレビを活用するノウハウを紹介してきました。
会場では、実機を動かして見てもらいながら、機材やソフト、利点などをお話しました。それをまとめておきます。
◆機材
(1)ノートPC(Let's Note XZ6)
使っている機体はスペックが高いですが、HDMI出力(映像・音声一括出力の端子)があれば、レッツノートである必要はありません。ただ、画像とフォトレタッチ・ソフトを扱うので、それは考慮した性能が必要です。
合わせて、HDMIケーブルが必要です。プレイヤーたちの座っている真ん中に液晶テレビは置きたいですから、1.5m~2m くらいあってもよいと思います。
Let's Note XZ6 https://panasonic.jp/cns/pc/products/xz6k/
(2)液晶テレビ(アイリスオーヤマ 32V型 液晶テレビ ハイビジョン ダブルチューナー内蔵 外付HDD対応(裏番組録画対応) 32WB10P)
肝心な点は画面サイズだと思います。32型なら、D&Dをはじめとする1インチ・スクウェア・マップ(25.4mm正方形を敷き詰めた図のマップ)の戦闘場面であれば、実寸のバトルマップとしてほとんどの場合は対応できます。
テレビである理由は安かったほかに、壁掛け用に背中が平らである点にあります。壁掛け用金具(別売りの共通規の金具がある)の取り付け位置はそのために丈夫で、その近くにホームセンターで買ったゴム足を貼って、テーブルに置いた時の衝撃緩和と滑り止めとします。
Amazon.co.jp でのレビューに「軽くて安っぽい」と書いたレビューがあり「運ぶのにいいぞ」、と思って正月セールで2,000円ほど安い時に買いました。
(3)ビニールのテーブルクロス
写真ではわかりずらいですが、画面に合うサイズにしてある透明ビニールのテーブルクロスを敷いています。これはミニチュアや、ミニチュアに添えるマーカー支柱を置いたり、セッション仲間にマス目を数える際にペンを突いて数える人がいるため、画面の保護します。
ホームセンターで計り売りで安く買えます。
(4) Photoshop CC
いわずと知れた、画像編集&デザインのソフトウェアです。PSDファイルを扱えて、「レイヤー」機能がある同種のソフトウェアでも構いません。
動作には多量のメモリーが使われるので、使用するパソコンはスペックを高くしておいたほうが良いです。Let's Note XZ6は、CPUはインテルi5、メモリーは8ギガです。
セッション中、アクティブにマップのサイズを変えたり、マスクの操作をするので、動作がもたつくようだと気持ちよく遊べません。
(5)マップの画像
私が主にプレイしているのは、ダンジョンズ&ドラゴンズ第5版です。このゲームでは、公式のアドベンチャーの地図は、描いたイラストレーターがデジタルのダウンロード販売をしていることがほとんどで、掲載されているマップを買って、そのまま使うことができます。
Mike Schley Prints & Downloads
「ファンデルヴァーの失われた鉱山」『大口亭奇譚』『魂を喰らう墓』をはじめとして、多数のD&D向けマップ画像(PSD、JPG)をダウンロード購入できます。PSD形式のものは、DM用、プレイヤー用とあり、隠し扉のマークなどが別レイヤーにしてあって消したりできます。戦闘用マップでもモンスターの初期配置や落とし穴や罠の効果範囲といった指示図を非表示にしたり消すなどの編集が可能です。
別の方法として、オンラインにできるのであれば、「ユドナリウム」や「Roll20」などのタクティカル・バトル対応のオンラインツールを使う手もあります。ただオンラインツールは、当然ながら画面の上にミニチュアを置くことは考慮されていません。
(6)行動順(イニシアチブ)管理のExcel ファイル
戦闘時の行動順を、自作のマクロ・プログラミングをしたExcelの表を使います。マップの上の邪魔にならないところに縮小表示しています。
図では一つの画面に表示していますが、大きく表示している窓がDMが操作する窓で、小さいほうはボタンが隠れるように表示した戦闘時にマップの上に表示する窓です。
Excelは一つの表を複数のウィンドウに表示することができ、一つのウィンドウの表を変更すると、別のウィンドウの同じ表も更新されます。これを利用して、VBAプログラミングで次の機能を備えています。
△:表を1行、上にまわす
▽:表を1行、下へまわす
イニシアチブで整列:イニシアチブの列に入っている数値で表を並べなおす
イニシアチブ初期化:イニシアチブの列を空欄にする
行追加:一番したに、1行追加する(内容は手動入力)
選択行削除:一番右の列「選択」は、カーソルが入ると「*」が入力される。「*」があるセルにカーソルが入ると「*」を消す。このボタンは、「*」が入っている行を削除する
モンスターの識別文字や与えたダメージ数、クリーチャーの状態なども、この表に入力して管理します。
◆ノウハウ
マップの画像は、画像編集ソフトのを使って、1マス=25.4mm となるようサイズを調整します。こうしておくと、Windows版PhotoShopの場合「Ctrlキー+1」のショートカット・キーで、画面表示がミニチュアを置くのに合う実寸で表示されます。探索時は「Ctrlキー+-(マイナス)」ショートカット・キーで縮小して、見える範囲を広くとって、戦闘時はミニチュアの実寸にしてタクティカル・バトルをやるのです。
Photoshop で、部屋ごとにレイヤーを設けて単色のカバーをかけます。
部屋が多いダンジョンは手間がかかりますが、プレイの際の臨場感は大幅にアップします。たとえば、
先ほどの船のマップで、中央左の階段をPCが下りるとします(左図)。そうしたらそのレイヤー(上図では「第二甲板_中央」のレイヤー)を選択し、見えると考えられる部分だけを消しゴムツールで消します(右図)。
船首寄りの部屋は、隠しているレイヤーが別の「第二甲板_船首側大部屋」なので、「第二甲板_中央」レイヤーを消しゴムツールで消す際にはみ出したり行きすぎたりしても消えません。入っていない部屋の秘密は保持されます。ダンジョンの通路などでも、射線が通っていると思われる部分を消しゴムツールや、範囲が広ければ範囲選択と削除でオープンにしていくと、探索感満載に遊べます(もちろんDMは、アドベンチャーの本か、別にダンジョンの情報がわかるマップなりを並列してみながらマスタリングします)。
さらにこの手法でプレイヤーを驚かせることのできる点は、テレポートの罠や、ダンジョンの構造をメタ読みされないことです。
D&Dのテレポートは、出現場所が移動するクリーチャーが占めることができる空いている空間なので、『ウィザードリィ』のように「石の中にいる!」はありません。
それでも、テレポート先を別のファイル、別の画像として切り出せば、マップのどの位置にあたる部屋に飛ばされたか読み取れず(飛ばされた先のとなり/近くに、未探索の部屋/通路/なにかしらがある、などを妨げることができる)、テレポートの罠の効果はマシマシです。
また、別方向から探索してわかっている場所が、探索先としてマップで見えると、ダンジョンの構造を推測できたりします。これを、PCが見えないところを再度マスクすれば妨げることができます。
また「アーケイン・アイ」(不可視の目玉を飛ばして術者が遠隔で見ることができる)の呪文で、通路などを偵察するとなったとき、かなりDMの手間は軽減されます。縮小したマップで、目玉の行った先のマスクだけを消していけばよく、目玉から見える様子の描写で伝えたり、紙のマップを折ったり切ったりして見えてしまう範囲だけをプレイヤーに見せる、という難儀はなくなります。
ダンジョン以外でも、威力を発揮します。『魂を喰らう墓』の地上マップの探索では、DM用マップの上に、プレイヤー用マップをレイヤーで重ねて、探索したヘックスだけプレイヤー用マップのレイヤーでヘックスを消して行くのです(迷ったら、DMがパーティーのいるヘックスを記録するだけで消さない)。
このデジタル・マップ・コントロールのノウハウは、よりPC目線で探索が行えるという面で、セッションを楽しくしてくれます。あわせて、DMが巨大な紙のマップを作ったり、セッション中に取り廻す必要をなくし、セッションの準備を軽減できます。ミニチュアを使わなくても、部屋ごとを隠しておくことが、探索の面白さにつながるタイトルであれば有効です。
唯一の課題はテレビの持ち運びと、遊ぶ場所に電源があるかどうかです。テレビの持ち主のうちに集まってセッションを遊ぶのが理想です。自宅のゲームルームやガレージに広げっぱなしで、毎週遊ぶという本場がうらやましいです。
このテレビを使う方法の以前は、5cm立方のサイズのプロジェクターを、マイクのブームでテーブルの真上に配置し、Windows とはミラキャストという無線接続方法でマップを映していました。
さらに前は、A3 コピー用紙に分割プリントアウトしたマップを切り貼りして一つにし、黒色の B4 厚紙を4枚使ってマップを隠していました。
便利さで、このテレビを使うノウハウが一つの到達点です。4Kテレビかモニターがこの値段で買えるようになったら、また手法の更新をしようと思います。
それでは楽しいTRPGセッションを。
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