Vol.21 早起きした朝は定点カメラになる
早い時間に目が覚めた朝、僕は決まってある公園に行きます。
その公園は家から歩いて5分ほどの距離。30段くらいある寝起きの体には少しこたえる階段を上った先の、見晴らしのよい丘の上にあります。
東京といえど、西の方に住んでいれば自然はそう縁遠いものではありません。こちらの公園も裏手には林が広がっており、朝は小鳥が鳴いています。この雰囲気が好きで、朝の気持ちの良い時間はここで少し過ごしています。
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この公園に来てすることはいろいろありますが、そのうちの好きなことの一つに「定点カメラごっこ」(私の命名)があります。ベンチに座って、文字通り自分がその公園に設置されている定点カメラになったつもりで、目に入る景色を受け取りそれについて思いを馳せる遊びです。なんじゃそりゃ。
公園に来た時、たまにそんなことをやっていると、この場所で流れる時間の動きがなんとなくつかめてきました。
僕がこの公園に行くのはだいたい7時頃。冬であれば空が明るくなり始めたばかりの時間です。公園の端ではハトがガサガサと音を立てながら何かをつついています。公園は住宅街にも面しているため、公園内を通って通勤・通学するのであろう人が何人か通り過ぎていきます。朝早くからいつもお疲れ様です。そういえば自分も高校時代はこの時間には朝練で学校にいたなと思い返し、朝早く起きられることを喜んでいる今の自分に対して変化を感じます...
7時半前くらいに、大きな黒い犬を連れたおじいさんが散歩に来ます。この公園に来る人で僕が唯一存在を覚えることができた常連さんです。僕が来た時はいつもこの時間帯に来るので日々の日課に組み込まれているんでしょうか。公園に来て特に何をするわけでもなくただ通り過ぎていくだけなんですが、悠々と歩いていく犬の姿と飼い主のおじいさんとの間の信頼関係、とってもいいなあといつも見ながら思います。犬飼いたくなる。
この定点カメラは音もちゃんと拾います。8時前後には、住宅街を回るゴミ収集車の音がかすかに聞こえてきます。しばらくすると音の発生源が家の陰から現れ、公園の手前のお家のゴミを回収してまた次の場所へと向かっていきます。収集員の方は2人ペアでやってるみたいで、手際よくゴミ袋をつかみ車の台に載せまた車を発進させる作業の流れに、やっぱどの世界にもプロはいるんだよなーとふと考えます。僕は間違いなくあんなに手早くこなせない。
そんなこんなで過ごしていると、ぼーっとタイムからふっと我に返る時が来て、そこで家へと帰ることにします。
別に僕はその公園で見た人の何を知っているわけでもありません。声を知っているわけでも、普段の過ごし方を知っているわけでもありません。ただ、その時間に公園という場所にいる、そこに一瞬でもその人の生活があると思うと、なんだか楽しいんですね。
僕は4月から引っ越すので、引っ越した後はここにはもう来なくなってしまうと思いますが、引っ越し先でも定点カメラになれる場所を探さなくてはなりません。いろいろ歩き回ろう。
読んでいただきありがとうございました!