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寝させてセレンディピティ

ちょっと昔の少女漫画にありそうなタイトル。


セレンディピティ(英語: serendipity)とは、素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること。(Wikipediaより)

この単語に出会ったのは、外山滋比古先生の『思考の整理学』という本を読んだ時でした。高校で読んだ本の中で最も読んでよかったと思う本の一冊です。

初めに知った時、語感のよさと、それが指し示す意味の多幸感に惹かれました。とっても素敵な言葉ですよね。英語では「思いがけず降りてくる幸運」に単語があてられるんだ、ものの捉え方がとっても豊かだなぁ、じゃあ日本語でserendipityに対応する言葉はあるんだろうか、とジーニアスの英和辞典で調べた時、たしか「掘り出し物を見つける才能」と訳があってなんじゃそりゃと思った記憶もセットで残っています。



この『思考の整理学』という本で語られるセレンディピティが面白いなと思うのは、起こるか否かが一見ただの運任せのように思えるセレンディピティを、意図して起こそうと試みている点です。そんなことできるのかと疑いたくなりますが、「起こると期待できる」レベルにはなるんだろうなと思います。そして、その過程は非常に楽しそう。




重要なのは「寝させる」こと。
今、答えを出すべきとある問題を抱えていたとして、寝させるという手法は、その問題から心理的にも時間的にも距離を置くやり方を言います。そればかりに目を向けるのではなく、むしろあえて目をそらす。そうして一晩、二晩、大きな問題なら1ヵ月、1年、10何年と待つ。それがいいのだと外山先生は書かれているのです。

これを最初に知った時、衝撃を受けました。
「後回しにする」が逃げの選択ではなく、答えに向かうための正当な選択として推奨されているのが驚きだったんです。

小中とも、読書感想文が苦手な子どもでした。本を読んでも感想なんて湧いてこない、いざ鉛筆を持って作文用紙に向かっても全く進まない。書けなくてイライラするので、とりあえず読んだはいいものの忘れたことにして遊びほうけて、休みの終盤になって焦ってよく分からない文章を提出するのが常でした。そして、もちろんこれがよいやり方だとも思っていませんでした。

それなのに、それと同じようなやり方が優れたやり方として紹介されている、どういうことだという感じです。




僕の取り組み方と、この本で書かれている取り組み方は、「寝させる」という一点においては同じだったかもしれません。しかし、本の内容に即して考えると、僕の取り組み方には決定的に不足していた点があります。

「寝かせる準備」「寝かせ方」です。

寝かせる準備とは、「考える素材」を用意しておくこと。
寝かせ方とは、「ちょっとしたアイディア」を拾ってくること。

本書では、こうした思考の仕方をビールづくりになぞらえ、考える素材を麦、アイディアを発酵素として例を挙げます。ビールをつくるには、麦を用意したうえで発酵素を加えてしばらく時間を置くことが必要です。思考の仕方もこれと同じで、考える素材を一通り集め終えたら後からアイディアを加えて変化を与えること。これによって、セレンディピティにも化ける発見や出会いが生まれるというのです。

僕の読書感想文の例に戻りましょう。僕の場合、まず、読んで思ったことや感じたこと、印象に残ったシーンなど、素材となるものを残さないままにしていました。これではどんなにいいアイディアを持ち寄って時間を置いても、考えるきっかけがないので書き出そうにも書き出せません。加えて、そのアイディアとなるものを取りに行く姿勢もありませんでした。毎日外で遊んでばかりいたので(それでも全くアイディアになりうるものがないとは言い切れませんが...)新しい切り口で本の内容を見返すこともできませんでした。




この2点がちゃんとできている場合に、「寝かせる」という思考の仕方は非常に有効だと言えます。これ、ほんとにできるようになったらめちゃくちゃ気持ち的に楽ですよね。時間が答えに自然と導いてくれるような感じがあって。

これが分かってから、いろんなことへの取り組み方と気の持ちようが変わりました。高校の時は、数学の問題で詰まったら思考の過程は残しておいて別の勉強に移るか寝るかすると、次に取り組んだとき難なく解けるということがたびたびありました。大学の期末レポートは、一個を最初から最後まで一気に完成させようとするんじゃなく、複数を同時並行で下調べして構成をざっくり考えたあと3~5日間くらい時間置いて一気に仕上げると、方向性がすっきり見えてきて片付ける負担がぐっと減りました。


あとは、これをnoteにも反映できたらいいんですが、いつもぎりぎりで書いてるので寝させる時間を持てません...これは近いうちに解決したい問題です。寝かせましょう。



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