干支にふさわしく、脱皮する1年になるかもと予感したコンサート
先週の土曜日、2025年最初のコンサートに行ってきました。最愛のマエストロ・山下一史が音楽監督を務める、千葉交響楽団のニューイヤーコンサートです。
会場は、市川市文化会館。今年の秋には、千葉響のホームである千葉県文化会館がリニューアルオープンしますので、市川でのニューイヤーコンサートは今年が最後になりそうです(ただし、もう一つのホームホールの習志野文化ホールの再開は当分先ですので、市川市での定期演奏会は続くと思いますが)。駅からのアクセスも良いホールなんですけれどね。
今年で、山下&千葉響のニューイヤーコンサートも9回目。最愛のマエストロが指揮するコンサートで、1年を始められる幸せが9年続いているわけです。ほかのプロのオーケストラを観ると、その楽団のシェフがニューイヤーを指揮することは、案外少ないんですよね。いろいろお考えがあるでしょうが、私にとってはこの上ない幸せであります。
山下さんは、今年に入って早々、関西方面ですでに3つのコンサートの指揮をなさっているんですが、そのためかちょっとお疲れのようにも見えました。それでも、コンサートがすすむにつれて、持ち前のサービス精神と情熱でヴォルテージを上げてゆかれたのはさすがでした。
オープニングは、スッペの喜歌劇「軽騎兵」序曲。とても軽快で、聴いていて心が躍る曲です。私のようなお馬さん好きには、力強く行進する馬たちが目に見えるようで、たまらない作品であります(この作品、喜歌劇とあるんですが、現在では台本が亡くなっていて、この序曲のみ楽譜があるのだそうです)。
なのに。私はこの演奏が始まってしばらくして、胸が詰まって泣きそうになったんですね。いい演奏なんです。心が弾む演奏なんです。なのに、涙腺が緩んだんですよね。そんな自分を持て余してすらいました。
この日までほぼ2か月。私はコンサートを聴いていませんでした。なので、最愛のマエストロの指揮で始まった演奏がいいものなので、感極まったのか。昨年と違って、ともかくも大災害なく始まった年なので(宮崎方面に大きな揺れはありましたが)、無事コンサートが聴ける安堵からなのか。
今でもはっきりとした理由は、自分でもわかりません。年末いろいろ気のふさぐことも多かったですし、年明けには大きく体調も崩しましたので、コンサートの参加を危ぶんだこともあります。それらがともかく払拭されての安堵感からなのか。ともあれ、不思議な現象ではありました。
山下さんがプログラムを組むニューイヤーコンサートは、ウィーンフィルのそれの形に倣っています。つまりヨハン・シュトラウス2世の作品を中心にして、シュトラウスファミリーの作品が大部分を占めています。新年を寿ぐにふさわしいワルツが多いんですね。今年はマエストロおっしゃるに、「喜歌劇からの明るくて楽しい作品で(プログラムを)構成した」とのこと。あまりに暗い世相に、山下さんも心痛が深いのでしょう。せめてコンサートの間だけでも、聴く側も演奏する側も憂さを忘れるようにとの配慮のようです。これは、オーケストラへの信頼がなくてはできないことでもあります。千葉響の実力への自信の証でもあるんでしょうね。
そうして、山下さんの目論見は見事に当たりました。演奏の合間の山下さんのMCもさることながら、千葉響の演奏の熱量の高いこと! 楽団員の方々から楽しそうな笑顔がこぼれているのもなかなかいい感じでしたし、音色も華やかで明るくて、エネルギッシュ! この新年最初のコンサートでは、女性奏者の方々が鮮やかな装いでご出演なんですが、その様も特別な雰囲気を醸し出していたりします。
いろんな条件がうまくかみ合って、新年を寿ぐにふさわしい明るい演奏会になりました。
このニューイヤーでは、山下さんは必ず歌い手をソリストに招かれます。たいていはソプラノの方おひとりなんですが、今回はテノールの方も加わっていて、ちょっと豪華でした。もっとも私は声楽のことは全然わからないので、ソリストの方々もお名前を観たことがあるくらいだったんですが。
ソプラノが根本真澄さん。テノールが西村悟さんでした。お二人とも芸達者な方々で、楽しませてくださいましたよ。
根本さんは、オッフェンバックの「ホフマン物語」というオペラに出てくる”歌う自動人形”のオランピアのアリアを、コミカルに愛らしく聞かせてくださいました。オランピアは人形なので、ぜんまいがほどけてしまうと動かなくなるんですが、このぜんまいを巻く博士役を、千葉響のやはり芸達者な打楽器奏者の齋藤綾乃さんが、好演! 会場が暖かい拍手と笑いに包まれたことです。
西村さんは、テノールらしい甘くてのびやかな声で、聴き手を魅了。私の周囲では感嘆のため息続出! 私自身は今一つKOされなかったんですが、それでも、彼がソリストとしてうたったレハールの喜歌劇「微笑みの国」での「君こそ我が心のすべて」で、不思議な体験をしました。
彼の甘く切ない歌声を聴いているうちに、花の香りを感じたんです。甘くて優しい、生きた花の香なんです。この時会場には花はありませんでしたし、香水を使ってらっしゃる方も近くにはいなかったんです。なのに、西村さんが歌い上げるにつれて、花の香りが強くなるんですよね。このアリアは、主人公が最愛の女性に暴言を吐いたことを後悔する様だそうですが(パンフレットの解説より)、西村さんが役柄を掌握して、ご自分のお気持ちを乗せることに成功したからこそなんでしょうね。演奏から色とか情景をイメージすることはわりにあるんですが(名演の時だけですが)、香りを感じたのは初めてで驚きました。
気が付けば、私の気持ちもすっかり明るくなっていました。そうして、「美しき青きドナウ」で本プログラムが終わったあと、アンコールタイム。山下さんが千葉ロッテマリーンズのユニホームと帽子をかぶった”変なおじさん”に変身するのも、もはやお約束。初めて観たときは、私も含めて客席から「えええっ?!!」との叫び声が出たものですが(≧▽≦)マリーンズの応援歌に手拍子して盛り上がった気分のまま、「ラデツキー行進曲」で会場最高潮になって終演です。
今年千葉響は楽団創設40周年の節目の年。そして、山下一史音楽監督就任10年目。これはコンサートマスターの神谷未穂さんも同様です。本プログラムが終わった後、区切りの山下さんのご挨拶があったのですが、そこでの言葉を聴く限り、山下さんはご自身のキャリアの晩年を千葉で過ごす覚悟なのかな、とも受け取れました。何しろ創設50周年の話も出ましたからね。
40周年を記念するイヴェントもいろいろ企画されているようです。千葉響が今年、さらにワンランクアップできるのかどうか。今年の干支の蛇が成長する際脱皮するように、千葉響も成長するかどうか。2025年も、追いかけて確認しようと思いつつ、帰途に着きました。
少し寒さが和らいでいますね。寒暖差が大きい時期です。皆様、くれぐれもご自愛くださいませm(__)m❤💛
ここまでお付き合いくださったあなたに、心からの感謝をささげます。
ありがとうございますm(__)m❤💛