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11年ぶりに、誕生日にコンサートに行ってきた話。

先週末から続いていた梅雨の休みは、終わったようですね。
先週のつゆ寒が遠い昔のような気がする、蒸し暑さ。大汗かきの私は、実は、6月生まれ。しかも湿度の高い香川の生まれです。ですので、例えば、
寒い地域の生まれの方よりは、蒸し暑さには耐性があるはずですが、ここ10年ほどの酷暑には音を上げています。
私が上京してきたころより、確実に関東の蒸し暑さはひどくなっていますし、私自身も、やはり若いころの不摂生もあって、体力も落ちているんでしょうね。

さて。そんな中、先日の日曜日、久しぶりにコンサートに出かけてきました。場所は、下北沢のアレイホール。私は、週末の午後の下北沢があんなに賑やかだとは、知りませんでした。ホールが、商店街の中にあるというちょっと異色の会場でしたが、音響もよかったですし、居心地もよかったです。

お天気も最近では珍しい、素晴らしい晴天。その分、気温も湿度も高くて、初めての場所恒例の迷い道でも、汗びっしょりでした。しかも、本当に、人が多かった! 道幅が狭かったこともあるのですが、その両側にお店がひしめき合っていて、しかも、それぞれが人気があるようで、お客さんがたまっとるんですね。それが、さらに渋滞を起こしとるのですが、なんだかその雰囲気が、良かったんですよね。今、思い返してみると。殺気立ってない、っていうか、みんなのんびり梅雨の晴れ間の外出を楽しんでいるんです。私は、コンサートの時間があるし、初めての場所だしで、ちょっと焦っていたりしましたが、それでも、あの明るいざわめきには、魅かれるものがありました。

閑話休題。

コンサートは、東日本大震災からの復興を応援する、という趣旨のものでした。これは、私が尊敬もしている仙台在住のピアニストで、音楽プロデューサーもされている相澤やよいさんという方が、11年前から継続してらっしゃるシリーズコンサートです。相澤さんご自身、11年前被災もされているのですが、甚大な被災をした故郷、そして、被災された方々に音楽で寄り添いたい、と、日本のあちこちで開催しておいでです。

本来は、今年3月に開催の予定でした。けれど、あの頃コロナ騒動で関東の世情が落ち着かなかったこともあって、延期になっていたのでした。その延期になった日時が、偶然、私の誕生日、6月19日だったんですよね。56歳になりました。

ご出演の音楽家に、仙台フィルや千葉響でコンサートマスターをお務めの神谷未穂さんがいらっしゃったことで、私には、いささか趣深いものがありました。11年前の誕生日も、私は午後、コンサートを聴いていたんです。しかも、大宮ソニックシティの大ホールで、仙台フィルハーモニー管弦楽団と山下一史のコンビのコンサートを、初めて聴いたんです。

11年前、仙台フィルのことも、山下さんのことも全然わからない私でしたが、人間性豊かな演奏は私を一発でKO。以来、両者を最愛の存在と公言して、現在に至っています。あの時、神谷さんが舞台にいらしたかどうかは、私は存じません。ご本人に確認したこともないんですけれど、仮にいらっしゃらなかったとしても、その後彼女の演奏自体に魅かれてファンになりましたから、問題はありません。今でも仙台フィルのコンサートマスターですしね。

プログラムは、エルガーの「愛の挨拶」から始まって、ベートーヴェンの「ピアノ三重奏曲」で終わる、という、なかなか骨太な内容でした。実は、この日は、神谷さんのパートナーでもあるエマニュエル・ジラールさんというチェリストも参加されていました。ご夫婦で演奏する「愛の挨拶」は、なかなか濃密な味わいでしたよ。仲が良いからできるんですけれどね。

相澤さんが終始伴奏を務めて、神谷さんとコンビ、ジラールさんとのコンビ、と、プログラムは分かれていました。トータル75分(というお話でした)、休憩なしですから、つくづくプロの音楽家ってタフだなぁ、って痛感したものです。ただ、今回は、福島の詩人・和合亮一さんの詩を、演奏の間に挟む、という形を取っていましたから、この朗読の時は、音楽家たちはしばしの休憩を取っていたんですけれど、ね。朗読はもちろん別の方で、茅根利安(ちのね としやす)さん。演劇をやっていらっしゃる方のようですが、とても深くて、聴く者の耳をとらえてしまう響きをお持ちでした。

コンサートの趣旨が趣旨ですし、和合さんは、11年前の福島の事故から現在まで、ずっと観察し、現状を詩にしてこられている方ですので、茅根さんの朗読される作品が(もちろん、彼の選択ではあるのですが)、聴く者に11年前の震災のことを、あるいは、今の東北被災地への世間の無情の怒りを想起させるのは自然なことです。本当に些細な断片ですが、かの地の実相を目の当たりにした経験を持つ私には、涙腺を、全身を揺さぶられずにはおかない迫力があり、いたたまれない気持ちにもなりました。

そうした私を、慰藉してくださったのが音楽家たちの演奏でした。朗読で打ちのめされた気分になっているところへ、あの地獄を生き延びた方たちの演奏が響いてきます。それは、「来てくださっていることで、あなたのお気持ちはわかっていますよ」とでも言わんばかりの優しさであり、大きな包容力を持った深い音色でした。モーツァルトがおり、マスネがおり、ドビュッシーもいました。大好きなシューマンもいましたし、ラフマニノフも呼ばれていました。ラストのベートーヴェンの力強さには、本当に勇気づけられたものです。この演奏家たちが望んでいる、活気にあふれ、優しさに満ちた街の情景が浮かんできましたから。

同じプログラムで、すでに40回目になるコンサートを仙台で開催されているとのことですが、かの地の聴き手の方々は、どう聞かれたかなぁ、と、ふと思ったことです。

誕生日に、大ファンの方々の、素晴らしい演奏が聴けて、最高のプレゼントを頂きました。良いスタートが切れた気がします。

この日、実は、11年前仙台フィルを指揮された山下さんは、なんと、千葉響と千葉県の富津市(ふっつし)で、振替コンサートなさっていたんですねぇ。本来はヴァレンタインデーコンサートだったのを、父の日に振り替えることになったようです。知った時は、「何故だぁーーーー!」だったんですが、まぁ、来週聴けますので、良しとしましょうか。

かなり、蒸し暑い日が続くようです。皆様、くれぐれもご自愛くださいね。今日は、夏至でしたねぇ。1年、早いわぁ。

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