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音楽のパワーに酔いしれながら、長年の疑問への答えを見つけた時間

先週の金曜日の夜。東京・上野の東京藝術大学の奏楽堂で、「JAZZ in 藝大 2024」を聴いて来ました。

東京藝大では、私の最愛のマエストロ・山下一史さんが、指揮科の教授として後進の指導に当たっておられます。その関係で、山下さん指揮のコンサートがあると、行くようになりました。

ただ、今回は山下さんはご出演ではなかった。私のお目当ては、サクソフォーン奏者の須川展也さんだったんですね。5月の11日に、文京区にある文京シビックホールで、須川さんのデビュー40周年をお祝いするリサイタルがありました。それがとても良くて、須川さんの演奏をもう少し聴きたくなったところへ、このコンサートの情報が入ってきたのです。

須川さんも東京藝大で、かなり長く後進の指導をしてらっしゃるんですね。
ただ、このコンサートは須川さんはゲスト扱いです。いわゆるリーダーは、やはりサクソフォーン奏者の本多俊之さんで、彼も芸大で客員教授をされているのだそうです。

この本多さんが、毎回ジャズ界の精鋭を集めて、東京藝大のコンサートホールを、さながらライヴハウスにしてしまうという、シリーズコンサートのようです。

はじめて参加しましたが、いつものクラシックのコンサートとは雰囲気が違いました。なんだか皆さん、ウキウキしてらして、とても明るいんですね。キッチンカーが出ていて、そこでお酒も飲めたようですが(私は、コンサート前には飲まないので、近寄りませんでした)、暑いこともあってか、皆さんよく利用されていました。私も持参のお茶は飲みましたけれどね。

今回私が聴きたいと思ったお目当てはもう一つありました。御年95歳のクラリネット奏者・北村英二さんのご出演がそれだったんです。偶然「ラジオ深夜便」でお声を聴いて、その若々しさに驚きもし、彼のクラリネットを聴いてみたいなぁ、と思ったのでした。

人にこだわる私が、お目当ての方が2人もいらっしゃる演奏会に参加するのは、珍しいことでもあり、ラッキーなことでもあったんですよね。

さて。開演は夜の7時。チケットは完売で、ホールには演奏を待ちかねての熱気があふれていました。オープニングで、リーダーでMCの本多さんが登場されて、ごあいさつ代わりにと「インディアナ」という曲をソロで演奏されました。
私は、クラシック以上にジャズの作品は知りません。けれど、本田さんのサックスの音色は、輝かしいけれど暖かくて、しかも何処か懐かしくて、すぐに惹き込まれてしまいました。この後、いうなればこの夜の”本多バンド”のメンバーが登場。ヴィブラフォンの藤本隆文さん・ベース(コントラバス)の村本和毅さん・ドラムスの川口千里さん。まったく存じ上げない方々でしたが、もう演奏は刺激的で、コンビネーションも抜群。本多さんのMCも、聴き手の笑いを誘うようなフランクさがあり、クラシック音楽のコンサートに慣れている私には、もう目からうろこが何枚も落ちてゆく闊達さでした。

その中でも、私の注意を引いたのが、ヴィブラフォンの藤本さんでした。私は以前、有名なヴィブラフォン奏者の引退公演を聴きに行ったのですが、その時の私の耳にはその人の演奏は、何を聴いても同じにしか聴こえない、実に退屈なものだったんです。その公演を聴いて、「私には、ジャズは合わないのかも」と思ったものでした。

ところが! 藤本さんの演奏のなんと表情豊かなことか!!! 良く歌い、良く叫び、優しく囁くかと思えば、喜びを爆発させもする。演奏中、通奏低音的な役割も果たしつつ、存在感が消えることはない。涼やかな音色が響くかと思えば、熱さ満載のエネルギーを聴き手にぶつけてくることもありました。聴いていて、ワクワクします。自然に藤本さんのほうに何度も視線が向いた私です。

ここに、須川さんや北村さんが加わり、後半では芸大の学生主体のオーケストラが参加して(このオーケストラの指揮は、須川さんが担当されました。須川さんは山下さんの”弟子”でもあるんですね)、本当に聴いていて自然に心身が浮き立つ演奏を披露してくださいました。

ここで演奏を心から楽しんでいる自分に気が付くと同時に、先の引退公演と何が違うのかの答えも見つかりました。

それは、「やはり、私は”音楽の雑木林”が好きなんだ」ということでした。

引退公演では、ヴィブラフォンとピアノだけだったんです。けれど今回、ピアノはなかったけれど、サックスもベースもあり、ドラムスもあり、クラリネットもある。加えて、弦楽器のヴァイオリン・ヴィオラ・チェロがない、吹奏楽タイプのオーケストラもいました。様々な楽器の音色が、自由に絡み合って、踊って、響き合って”会話”していました。クラシック音楽でも、オーケストラが好きな私は、やはりジャズであっても多様な存在がひしめき合っている状況が心地いいようです。まぁ、仮にライヴハウスで聴くとして、オーケストラは無理でしょうが、せめてバンドであってほしいなぁ、とは思います。

それから。北村英二さんの演奏の若々しさには、腰が抜けるほど驚きました。とても御年95歳には観えません。楽譜もなく、本多さんたちの演奏を聴きながら、臨機応変に応えていらっしゃるように私は聴きました(もちろん、ジャズにも楽譜はあるんですけれどね)。

その縦横無尽さであり、或る意味自由奔放な姿に、私は唖然としつつも、すっかり魅了されていました。戦中・戦後の厳しい中にあっても、音楽とともに生きてこられたその強靭さを垣間見た思いでした。クラリネットは管楽器ですから、呼吸する器官を鍛える意味も持っているでしょう。それも、北村さんの健康を担っているのかもしれませんね。

須川さんも、5月の時よりのびのび振舞っていらっしゃる印象もありました。指揮されてる姿に、山下さんが重なる部分もありましたが、でも、山下さんの指揮よりももっと自由でおおらかなスタイルのようにお見受けしました。ほかの方々がすごかったこともあって、須川さんの印象が少し弱い感じですが、須川さんについては、彼のリサイタルを改めて聴きに行こうと思っています。要するに、本多さんを聴いたことで、「やっぱり、私には須川さんが合う」とわかりましたしね(本多さんも素晴らしかったですが)。

コンサートは、休憩も含めてなんと2時間半超! 楽しかった分(自然発生的に手拍子も出ましたしね。ラデツキー行進曲思い出しちゃいました!(^^)!)、ばてちゃったようです。久しぶりにワクワクが爆発しましたから。

終演後、外に出たら、蒸し暑い夜で汗が一気に噴き出してきました。持参した手ぬぐいで汗を拭きつつ駅に向かう私の頭の中では、コンサートで聴いた「Sing  Sing Sing」が華やかに流れていたのでした。

ここまでお付き合いくださったあなたに、心から感謝いたしますm(__)m💕💛

ありがとうございますm(__)m💕💛

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