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「小松菜の人」ーーーインコとの生活あれこれ その8

少し前、大ファンであるMiekaruさんが、「ブツ、あるよ」という楽しい投稿をしてらっしゃいました。

魚屋さんとのやり取りのお話で、Miekaruさんが、そのお店に物があるときには、多めに購入なさるものがあるのだそうな。なじみのお魚屋さんのご主人が、或る時、買い物に出た彼女に、「奥さん、ブツ、あるよ!!」と、大声で呼びかけたのだとか。その日の夕食には、お肉料理を、と、考えていたMiekaruさんは、見つからないように静かに通り過ぎようとしていたのだけれど、ご主人の呼びかけに負けちゃって、メニューも変更することに・・・・。

私がこんな風にまとめてしまうと、面白さが伝わらないのですが、彼女のユーモラスな文体と口調に、朗らかな笑いを誘われます。情景描写も生き生きしたものですから、目の前に場面が浮かんできて、いっそう親しみもわきます。

また、Miekaruさんのお人柄もあるのでしょうが、住んでらっしゃる街も、人と人とのつながりが適度に豊かなんでしょうね。

さて。彼女の投稿を楽しく拝見しながら、「ふむ。私の”小松菜”みたいなもんかなぁ?」などと考えていました。

少し前に「君たち、何故、小松菜だけは飽きないの?」という投稿をしましたが、我が家のインコたちには、ビタミンAが豊富な野菜が欠かせません。いろいろ試したのですが、結果、小松菜だけは、どの子も必ず食べてくれると判明したのです。また、この野菜だけは、毎日あげても文句を言いません。ほかのもの、例えばブロッコリーだったり、豆苗だったり、チンゲン菜だったり、ニンジンやカボチャやスナップエンドウなどをあげても、初めの1日は喜んでも、3日以上だと苦情が来ます。小松菜以外の野菜を組み合わせてみたこともあるんですが、3日小松菜がないと、泣きが入るんです。

それで、私と相方には、35羽の愛鳥のために、小松菜をかなり大量に購入するミッションがあるのです。一度、自分たちで、小松菜を育ててみようとしたこともありますが、所詮は素人の気ままなお遊び事でした。少し育ってきたところで、虫と野鳥に先にいただかれてしまうだけ。インコの数が数羽ならそれでも何とかなったのでしょうが、毎日必要な量の野菜を確保するには、本格的に家庭菜園をする必要もあり、そういう時間や労力は、私たちには作れませんでした。

当時、私たちが暮らしていた街は、駅前に八百屋さんがいくつもあって、競合状態でしたので、比較的手ごろな値段で、質のいい小松菜が買えました。二人で、いろいろお店を回って、「やっぱり、M屋さんだよね」ということで、話がまとまりました。リサーチには、数か月かけたのですが、その八百屋さんは、安定して大束の小松菜があって、しかも顔なじみになると、おまけしてくれることもありました。事前に必要な量をお願いしておくと、取り置きしてくれることすらありました。

感じのいいご夫婦がお店を切り盛りされていて、そのうち、私がお店に行くと、「あ、お姉さん、小松菜ね!」と、笑って応対してくれたものです。市場の状況なども教えてもらえることもあって、その情報をもとに、対策を立てるなどしていました。こちらが、安定して小松菜を購入する客だとわかってからは、いろいろ優遇してくれることも少なくありませんでした。

私は、スーパーで働くことが多かったのですが、そうなると仕事が終わってから、買い物をすることになります。もちろん、小松菜を買うこともあったのですが、その街の場合、八百屋さんが元気だったからか、スーパーの小松菜は割高なことが多かった。しかも、質もよくなかったのですね。それで、わざわざ、小松菜のために駅前まで行ったものです。まぁ、そのころは、自転車に乗ってましたから、今ほど大変じゃなかったですが。

11年前に今住んでいる街に引越ししました。緑の多い、気持ちの良い街ですが、困ったことに、八百屋さんがありません。以前の街より規模が小さいこともあったのでしょうが、家庭菜園が盛んな土地柄のようで、八百屋さんが商売として成り立ちにくいようです。

そもそも駅前にもお店が少ないので、買い物にも困りました。基本が車社会らしく、多くの住人は、車で少し遠い街のスーパーに買い物に行くようです。それができない私たちは、途方に暮れたものです。幸い、相方の勤務地が、引っ越す前の街だったので、お世話になっていた八百屋さんで、帰りがけに買ってきてくれました。電車で通勤ですから、大量の小松菜の袋を抱えての帰宅は、相当な負担だったでしょう。

ところが! 相方の勤務地が、変わることになりました。お世話になっていた八百屋さんに通うこともいささか難しい通勤経路になりました。仕事帰りにその八百屋さんによると、遠回りになって、帰宅が遅くなるのですね。電車通勤なのですが、わざわざ乗り換えなくてはならなくなるのです。

幸い、新しい勤務地は、今住んでいる街よりもにぎやかで、お店もいろいろあるとのこと。それで、リサーチ好きの彼女は、仕事帰りにあれこれ探して、よさそうなお店をいくつか、見つけてきました。

また、私も、新しいスーパーに勤めることになりました。そのお店の野菜はよくなかったのですが、通勤途上にあるスーパーに地場野菜のコーナーがあります。そこの野菜は、いささか割高な気もしましたが、品質は抜群です。それで、仕事帰りに、コーナーの小松菜をまとめ買いするようになりました。

どのくらい買うのかって? う~んとですね。地域やお店によって、規格が違うかもしれませんが、スーパーのレジ袋の一番大きいサイズの袋にいっぱい、と、説明したら、想像がつくでしょうか? まぁ、たいてい、買い物かごの中身の大半は、小松菜が占めていますわね。あの頃は、レジ袋サービスでしたから、大助かりだったなぁ。

今は、仕事が違うので、そのスーパーに行くことも激減しましたが、当時は、週に4回、多い時は5~6回行ってました。そうなると、目立つらしいのですね。地場野菜のしかも小松菜ばかり、大量に買う客って。だからでしょうね。聴かれましたよ、いろんな人から。

「あの、こんなにたくさんの小松菜、どうするんですか?」

昔の私なら、「いやぁ、うちにたくさん鳥がいましてね。その子たちにあげるんですよ」と、素直に答えたでしょう。けれど、世の中には、いろんな人がいて、”たかが鳥のために、そんなにたくさん買うなんて!”なぁんてこと、言ってくる人がいる。そうした言葉に、少なからず傷ついてきているので、私としても、以前のようなオープンな答えはできないのですね。

それで、私は「あのですね、これを、生でしか食べられないのが、うちにたくさんいるんですよ」と、応えるようにしています。もちろん、本当の意味での答えになっていないことは、私にもわかっています。けれど、相手が鳥を好きかどうかもわからないし、見知らぬ人から、買い物についてあれこれ尋ねられることが好きではない私は、どうしても警戒してしまうのですね。

通りすがりの他愛ないコミュニケーションの一つだ、と、気軽に考えることができれば、何でもないことなのでしょう。けれど、何故か、通りすがりの人から心無い言葉を投げつけられる経験が少なくないので、やはり、身構えてしまう癖がついているようです。

最近では、コロナ騒動で、マスクもしているし、いわゆる”ソーシャルディスタンス”もあるので、人との接触自体が激減しています。ほっとする半面、なんだか、寂しい気もしますね。

たぶん、地場野菜のコーナーがあるスーパーでは、「あ、今日、”小松菜のお客さん”来たよ」なぁんていう会話が、以前は頻繁にされていたのでしょう。今は、めったにいけないのですけれど、まだ、”小松菜のお客さん”かなぁ? 最近では、地場野菜のコーナーに、小松菜がないことも少なくないので、あまり目立たないかも(本当に、影も形もない日があります。いろんな事情があるんでしょうが)。それでも、袋に入った小松菜を、7~8袋も買う客は、目立つかなぁ??? 

相方も、仕事帰りに、小松菜を仕入れてきてくれます。二人して、当分の間は、「小松菜の人」ですね。


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