イースターの賛美歌 うるわしの白百合
音楽とアートコラボユニットRelaxuaでイースターの賛美のMVを制作しました。どの曲にするかをかなり迷いました。チーム3人の中で2名はこの曲を知らなかったのですが、昨年の朝ドラ「エール」の中で薬師丸ひろ子さんがこの曲を歌って話題になったこともあり、「うるわしの白百合」に決めました。
『うるわしの白百合』について
『讃美歌』(日本基督教団賛美歌委員会編、1954年) 496番。『讃美歌21』(日本基督教団賛美歌委員会編、日本基督教団出版局、1997年)には入っていません。『新聖歌』(日本福音連盟新聖歌編集委員会編、教文館、2003年)には異なる曲名と訳詞で収められています。新聖歌では128番、タイトルは『イースターの朝には』。
原曲タイトルは"Beautiful lilies, white as the snow"で、 作詞者はAlice Jean Cleator(1871-1926)、アメリカ人で日曜学校教師。彼女が作った別の賛美歌、『ちいさなかごに/Little Deeds』(讃美歌第二編26番)は、わたしの中学時代のコーラスメンバーで集まって賛美歌を歌う時の人気曲です。作曲者は、Joseph Lincoln Hall (1866-1930)のペンシルベニア、フィラデルフィア生まれの賛美歌作曲者、University of Pennsylvaniaを卒業後、Harriman Universityで音楽博士号を取得。聖歌隊の指導者の他、Irvin Mackと共に出版社(Hall-Mack Publishing Company、後にRodeheaverに吸収された)を設立。7th Street Methodist Episcopal Church in Philadelphiaのメンバー。
アメリカにおいては歌い継がれていないようす。日本においては愛唱している人は多いが、全クリスチャンが共有している愛唱賛美歌ではないようです。
白百合とキリスト教
Relaxuaは『うるわしの白百合』をYouTubeにアップする日を決めて、逆算して制作計画を立てました。4月4日の朝にはアップする。それはこの曲がイースター(復活祭)の賛美歌なので今年のイースターの日に合わせてアップすることに拘りました。イースターは3月下旬から4月の間で、毎年日にちが変わります。春分の日の後、最初の満月の次の日曜日です。正教会など東方教会では日にちは異なり、2021年は5月2日です。
最近は日本でもクリスマスと並んでイースターも知られるようになりましたが、ウサギの日と思っている方もいらっしゃるかもしれません。ウサギと並んで卵もイースターの象徴として用いられます。教会ではイースター礼拝の日はカラフルに色付けたゆで卵を用意しています。子供たちはエッグハントをして楽しみます。ウサギも卵は新しい生命を象徴しています。
イースターは、イエス・キリストが死から復活したことを祝う日なのですが、その46日前の灰の水曜日から始まるレント(四旬節/受難節)、そしてイースターの3日前の聖金曜日と呼ばれる受難の日、すなわち十字架で死なれた日を通ります。受難週には断食など節制するクリスチャンも多いです。
さて、イースター・リリーと言われることもあるユリとイースターとの関係ですが、聖書の中にユリが登場する箇所があります。新約聖書マタイによる福音書6章28節、「なぜ、衣服のことで思い悩むのか。野の花がどのように育つのか、注意して見なさい。働きもせず、紡ぎもしない。」「野の花」は英語訳聖書のほとんどが"lilies of the field"です。『NIV(New International Version)』、『NET Bible』は"flowers of the field"、他に "wild liles"(『Weymouth New Testamenta』)、"lilies and wildflowers of the field"(『Amplified Bible』)、"wildflowers"(『Holman Christian Standers Bible』、" wild flowers (『Contemporary English Version』、『Good News Translation』)、"flowers (『God's World®︎ Translation』)、ありました。英語訳は他にあります。ちなみにギリシャ語訳聖書のスタンダードはκρίναでliliesです。このマタイ福音書の箇所は共観福音書のルカによる福音書では12章27節です。キリスト教ではユリは聖母マリアの象徴とされ、白は純潔を表すことから、宗教絵画においても白ユリが描かれてきました。特に受胎告知の絵画にはよく描かれるそうです。17世紀にローマ教皇が聖母マリアを象徴する花として白ユリを描くように勅令を出したということです。
エールで話題になった薬師丸ひろ子さんの歌唱
昨年のNHKの朝ドラ(『連続テレビ小説』)『エール』の中で、主人公の奥さん、オトの母を演じる薬師丸ひろ子さんが『うるわしの白百合』を独唱し話題になりました。作曲家、古関裕而と妻・金子の生涯を描いたドラマでした。薬師丸ひろ子さんが『うるわしの白百合』を歌ったのは、2020年10月16日放映の第90話で、薬師丸さんが演じるオトの母光子が空襲で焼けた自宅跡でこの賛美歌1節と2節をアカペラで歌い、ノーカットで3分間放映されました。わたしもTVをリアルタイムで見ていましたが、そのパワーに引き込まれました。多くの視聴者がそのように感じられたようです。実はその後ネットでも話題になりましたが、賛美歌を歌唱するというのは台本には無かったそうで、薬師丸ひろ子さんの提案によるものだということです。本来は、光子が地面を叩きながら「戦争の、こんちくしょう!こんちくしょう!」と唸るシーンだったそうです。
ドラマでは光子の関内家は熱心な聖公会信徒の設定になっていますが、実際(金子の内山家)はそうではなかったということです。Kirishin2020年5月の記事→http://www.kirishin.com/2020/04/30/42687/
エールの薬師丸ひろ子さんの歌唱の凄さについてPRESIDENT Onlineで詳しく書いてありました。https://president.jp/articles/-/39732?page=1
Christian Pressでは『エール』でキリスト教考証を担当された立教大学教授で進学者の西原廉太氏が連載をしています。第1回を貼っておきます。https://www.christianpress.jp/yell-nishihara-renta/