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まことおじちゃんの話

 まことと言えば私は芸能界の中で大竹まことが一番好きなタレントのひとりなのだけどその話は又いつかするとして、今回は私の父親のお兄さんの、つまりまことおじちゃんの話をしたいと思う。
  私の一家とまことおじちゃんの一家は同じ敷地内だった。 我が家は手前に建っているおんぼろの小さい家で、まことおじちゃんの家は奥にあり広々としていた。 そしてその間にガレージがあった。 
まことおじちゃんは七人きょうだいの長男で父は末っ子だったことも理由だと思うけれどおじちゃんの車は敷地内、父の車は家から少し歩いた所の駐車場を契約して停めていたのだと思う。
当時我が家にはお風呂がなく、まことおじちゃんの家に借りに行っていた。まことおじちゃん家はS子おばちゃん(妻)とその子供の三人ぐらし。子供と言っても私より一回り上で当時私は小学生だったので、いとこははたち前後だったのかと思う。 そのいとこは少し障害を持っていたようで言葉はうまく発することが出来なかった。 そのせいかわからないが私たちがおじちゃんの家にお風呂を借りに行った帰りは私を相手にオセロ対決をしたり、どうでもいい雑談などをしてしてくれる時もあった。 後から考えるとあまり母は居心地が良くなかったのかもしれない。
      ある時私は釘を道端で拾ってきた。これで何して遊ぼうかなと考えた時、そうだ、おじちゃんの車に名前を書いてあげようと思いついた。 今思えば何故そんなことをしたのだろうと思うのだけれど夕方家に入る前におじちゃんの車のボンネットに「まこと」と書いた。 “書いた”というより“書いてあげた”という気持ちの方が強かったと思う。 おじちゃんの車の色はこげ茶色で特注で塗り直したという話をS子おばちゃんから何度も聞いていたので余程その車を気に入っていたのだろうと思う。
 次の日S子おばちゃんは、誰かが車に「まこと」といたずら描きをした!と騒いでいた。 なんとなくその様子から私は悪い事をしてしまったんだとすぐに察した。 
 S子おばちゃんから誰がやったか知ってるの?などと問い詰められた気もするけれどそこはあまり覚えていない。兎に角私が覚えているのは「この車がまことおじちゃんの車だよってすぐにわかるように名前書いたんじゃない?」と嘘をついたことだった。 結局いつものお風呂を借りに行った時にその話になり私が薄情したのだと思う。 “思う”というのは詳細をあまり思い出せないのだ。 
 私は幼稚園のころから日記をずっと書いていたので当時の日記を読み返せば書いてあるかもしれないけれどその頁を開く勇気が無い。 母にあの時どうたったかというのも訊いてみたい気もするけれどそれ以来その話は一切封印して誰もその話をしていない。 
 あのころの私に訊いてみたい。 なぜ車に名前を彫ったの?と。 

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天知知美
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