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お笑いと性欲の桶狭間③

ホテルはキャラクターものの可愛いデザインの部屋だった。

室内にはわたしのテンションとは真逆の騒々しいテレビ番組の音声が響き渡っていて、オープニングのやたらとアップテンポな曲が脳に突き刺さる。 

クラクラすると同時に、若干苛立ちも感じていた。


彼の真意が分からないままここに来てしまった。

押し切られてしまったけど、何を考えているの。

今までのプラトニックな関係から想像すれば、何事もなくここを出るような気もしてくるし、でも、万が一という事もある。

わたしの事はどう思ってるんだろう……、恋愛感情はあるんだろうか。

男の人は感情など関係なく、煩悩の赴くままに行為に及ぶこともザラだろう。 

きっと彼も例外ではない。健康な20代成人男性なのだから。

そうなった時にわたしは傷つかない自信がない。

とりとめもない不安とむき出しの感情がずっとグルグルしていた。


わたしは自然と彼から距離をとりながら、ソファーに深く腰掛けて身体を沈めた。

いつものセブンスターに火をつける。

ゆっくりと吐いた煙の向こう側に彼がいる。

彼はと言うと、わたしの目の前にあるベッドの真ん中で、お釈迦様の涅槃像よろしく頭を片肘で支えながらこちらに背を向ける形で横になり、リラックスした様子でテレビを観ながら笑っている。

目的のお笑い番組にはどうやら間に合ったようだ。

「あ〜良かった、間にあって。絶対家に着いてからじゃ初めから観れなかった。」


つづく。


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